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飛行艇を愛でていたら、砂漠の踊り子さんに愛でられることになったのです。熱砂の潜砂艦物語  作者: トウフキヌゴシ
アマテラス

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第二十五話、スナアラシ

ローズヒップは、シルン領に姉がいる。

 遠くの空の一部が、霞がかったようになっている。

 砂嵐が起っているようだ。


「浮遊率、70パーセント」

 アジトである”アマノイワド“の中で、潜砂艦”アマテラス“は空中に浮かんでいる。

 飛行船を元にしているので、気嚢(風船部分)全てにヘリウムガスを充てんすると浮かぶことが出来た。  

 浮遊率70パーセントとは、艦底が30パーセント砂地についているということだ。


「サイドスラスター展開」

 エルザードが、転輪の横にある切り替えレバーを押し下げた。

 艦体前後の横にある、横向きのジェットのカバーが上に開く。


「艦首を出口に向ける」

 転輪を左に回した。

 前後の、サイドスラスターが反対に作動。


 ズズズズズ


 接地している艦底から砂煙をあげながら、”アマテラス“は、その場で180度回転した。


「ヘリウムガス、排出」

 艦体左右の排出口から白い煙が出た。

 砂地に完全に接地。


「艦橋深度まで潜行」

「ワルダ、ランダ、舞ってくれ」

 伝声管に言う。


「「わかった~」」

 伝声管から帰って来た。

 周りに波紋を描きながら、”アマテラス“が潜行する


「両舷、微速前進」

「”アマテラス“出港」


 飛行艇”イザナミ“の受け渡し完了や、クルックと’ヨモツヒラサカ”のことの報告が必要だ。 

 “アマテラス”一行は、アールヴ王に謁見するために、首都”サーハリ“を目指して出港した。



 コオオオオオオ


 空に白い線を引きながら、クルックと”ヨモツヒラサカ“は砂漠の上を飛んでいた。

 目印が少ないのでわかりにくいが、”アールヴ“の国境を越え”モンジョ古王国“に入っているはずだ。

 最近、夢見が悪く頭が重い。

 後部座席に座っているカスマールは、最近ブツブツと独り言を言って様子がおかしい。


「んん?」

 しばらく飛んだ。

 ふと横を見ると、砂色の巨大な柱がこちらに近づいてくる。

「砂嵐……か?」


 その時、


「ちょおっとおおお」


 野太いおばさんの声が、コックピット内に響き渡った。


「えっ、緊急用の無線、…か?」

 全国共通の緊急時用の周波数だ。


「あれ(砂嵐)が見えないのかいっっ」

 耳がき~んとした。

 下を見ると、中型のキャラバン船が見えた。

 全体的に重厚で厳つい。


「何に乗ってるか知らないけど、巻き込まれたら、バラバラだよっっ」

 飛竜も含めて、砂嵐の前で飛行は厳禁である。

「ほらっ、急いで降りてきなっっ」

 船に後ろにある、飛竜用の甲板に表示灯が点滅していた。


「お、おおう」

 頭が重い上に、耳をつんざく大声に気圧された。

 クルックはキャラバン船の甲板に、飛行艇”ヨモツヒラサカ“を着船させた。


「ほらほら、急いで急いでっっ」

 大慌てで”ヨモツヒラサカ“に、シートをかけて甲板にロープでしっかり固定する。


 ゴオオウ、ゴオオオオウ


 作業を終えて、船の分厚い鉄の扉を閉じた頃には、砂嵐は目の前まで来ていた。


 全てのシャッターが閉じられ、船内は裸電球の赤い光が揺れている。


「初めましてだねっっ」

 恰幅のいい、女性が大声を出した。

 無線の声と同じだ。

「ローズキャラバンの船長、‘ローズヒップ”だっ」

「砂嵐の近くを飛ぶなんて、危ないじゃないかっ」

 バンバンと、クルックの肩を叩く。


「あ、ありがとう」

 クルックが礼を言った。


「おや、兄さん、どっしりしてていい男だねえ」

 クルックは、下腹が少し出て固太りしている。

 砂漠では、貫禄があるといってもてるのだ。


「兄さんも、連れの人もお疲れのようだ」

「部屋の案内するから休んどくれ」

 カスマールは、無言で後ろに立っている。


「わかった」

 時折、船が左右にゆっくりと傾く。

 クルックは、案内してくれた部屋のベットに横たわった。


 シャラン、シャラララン


 眠りに入る寸前に、涼やかな鈴の音を聞いたような気がする。

 その夜は、悪夢を見ずにぐっすり眠れた。



 朝だ。

 砂嵐を乗り越えたキャラバン船は、砂に半ば埋まっている。

 操砂の魔紋で船を浮かび上がらせる。

 船巫女がいなくても、簡単な魔紋なら使用可能である。

 ただ、魔紋を励起させるのに時間が掛かるのだ。(操砂の魔紋で大体十分くらい)


 クルックは、久しぶりに爽快な気分で目が覚めた。

 頭も痛くない。 

「何故だ?」

 取り合えず、“ヨモツヒラサカ”を確認しに行った。


 シャラン、シャラララン


 聞き間違いか?


 “ヨモツヒラサカ”のある場所を教わりながら、船内を移動する。


 シャラララン


 鉄の扉を開いた。


 シャラン


 シートをかぶされた“ヨモツヒラサカ”の前で、踊り子が一人、舞を舞っていた。


 銀髪に、深紅の瞳。


 彼女の肌に描かれた、魔紋は漆黒の色をしていた。

 深紅の瞳がちらりと、クルックを流し見る。

 

 ビュウウウウ


 風がシートの一部をはだけさせる。


 シャラン


 彼女の魔紋と、隙間から見えた、“ヨモツヒラサカ”の魔紋が一瞬、銀色に光り脈動した。




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