第十四話、リスイ
砂漠の砂の色の機体に、銀色の魔紋。
美しい
イオリはコックピットのふちを優しく撫でた。
「……行こう……」
ファラクの手を取り、後席に座るのを手伝う。
「あ、ありがとう」
顔が赤い。
「体調はもういいのか?」
「大丈夫っ」
ファラクの座る後席は、船巫女用に作り変えられている。
椅子にも内壁にも魔紋が描かれていた。
メーター類がつけられる場所には、小さな、”アマリリス式、魔術式制御盤”がつけられていた。
”踊る”必要のある魔紋の効果をある程度、制御するためだ。
”踊り止め”という、技術の応用である。
これは、魔紋が励起する寸前で踊りを止め、任意のタイミングで魔紋の効果を得る手法である。
砂に埋って沈もうとしている”砂上船”の船内に、緊急に空気を満たすときなどに用いられるものだ。
イオリは、ファラクが座ってハーネスをしめたのを確認してから、前席に潜り込んだ。
真ん中に、上から見た機体と可変翼の角度の絵が描かれた指示計。
その下に翼の角度が機械式の数字で表示される。
その左右に、ジェットエンジンの回転数を表すメーター。
小さく、前部ジェットエンジンのメーター
姿勢指示器、高度計、気圧計。
膝と膝の間から操縦桿。
右には、垂直離発着モードのセレクトレバー
左には、アクセルレバーが重ねて二つ。
二つのジェットエンジンを個別に操作可能だ。
その隣に上を向いた扇状の可変翼の操作レバー。
ハンドルを回す方式ではなくなっている。
一部の角度から赤く色を塗られていた。
「主電源を入れる」
パチッ
スイッチを”切り”から”入り”に。
メーターのバックライトがついた。
「ファラク、ジェットエンジンを始動させる」
「魔術式の制御を頼む」
「了解」
小さな魔術陣から、積層構造の魔術式が丸く何重にも浮かびあがり消えた。
「いけるわよ」
「エンジン始動」
イオリは、始動用レバーを引いた。
ゴゴゴゴ
ゴゴゴゴ
二つのジェット音が一つになる。
ゴオオオオウ
”ネコジャラシ”のものより低音で重厚だ。
「もやいを外してくれ」
桟橋に括り付けていたロープを外す。
少しエンジンを吹かして桟橋から離れた。
レバーを操作して全閉にされている、可変翼を開く。
赤く塗られた所以上に開かないと、”ファウラーフラップ”が下せない。
翼の後ろ半分が可動部ごと大きく下に広がった。
バシャン
キャノピーを後からスライドさせて閉じた。
「魔紋を励起させるわ」
シャラララン
ファラクは、両手首に着けた、鈴を鳴らした。
魔紋が銀色に一瞬、輝き、すぐに消える。
後席を中心に、銀色の輝きが、機体全体の魔紋に広がった。
”イザナミ”を中心に湖面に円形に波紋が立つ。
「こちら、”イザナミ”、離水準備完了」
「離水許可を求む」
「こちら管制、イオリ、”イザナミ”、離水を許可する」
「了解」
「上げるよ」
「うん」
”イザナミ”はしばらく水面を滑った後、白い線を残して、ふわりと飛び上がった。




