第十三話、ホメル
飛行艇空母”キサラギ”の、人気のない格納庫のすみである。
「クルック様、分かっているでしょうな」
感じの悪い上官が言った。
上官は、クルックの実家である”エンバー伯爵家”の寄り子の子爵だ。
「ふんっ」
クルックは、不機嫌そうにそっぽを向いた。
「その態度、エンバー伯爵様に報告させていただきますよ」
「……分かったよ。 選考から落ちればいいんだろっ」
「アレの置き場所は、確認してあります」
上官は、寄り家の伯爵令息であるクルックに、終始、見下した態度を変えなかった。
しばらく、二人の密談は続いた。
◆
全員、”シラフル湖”の教導部隊の基地に帰っていた。
早朝だ。
「ふっふっふ~」
ファラクの前に、砂上用飛行艇”イザナミ”が浮かんでいる。
桟橋の上だ。
――やっと動かせるう~
船を動かすのは、船巫女の本能の様なものだ。
「美しい機体だっ」
「えっ」
ファラクが驚きの声を上げる。
イオリだ。
いつの間にか後ろに来ていた。
「煽情的かつ、セクシーで、凹凸のはっきりした、グラマラスな、ボディッ」
「小悪魔で、悪戯いたずら)好きな娘を連想させる、可変後退翼っ」
「めくるめく”初体験”を期待させるエキゾチックな、無垂直尾翼っ」
「凄いっ、ゲインが”ネコジャラシ”(←×ザ〇)の二倍あるっ
と、思わず叫んでしまう、縦置双発ジェットエンジンッ」(←ジェットエンジンが二つ、ついていること)
「動く密室っである、密閉式キャノピーッ」(←しかも与圧式)
「更に、銀色の植物の蔦のような、螺鈿細工のような、瀟洒なお化粧つきだっ」(←魔紋のこと)
「艶女だっっ」(←異世界の言葉)
ハアッハアッ
イオリが一息に言い切る。
ファラクが、全身を真っ赤に染めてしゃがみ込んでいた。
船体=船巫女の体である。
イオリの大声に、周りに人だかりが出来ていた。
「……壮絶だな……」
クルックだ。
――イッ、イオリの馬鹿ああ
午前中は、何故かファラクの腰が抜けて使い物にならず、午後からの活動となった。




