第十二話、コクハク
次の日、”シラフル湖”に向けて二機の”ネコジャラシ”が飛び立った。
帰りはイオリ機に、ファラクが乗っている。
やはり行きと同じように、”ミナヅキ”が先に飛行して、後ろを”キサラギ”がついて来た。
イオリの飛行は丁寧で穏やかだ。
渓谷の景色を楽しみながら、ゆっくり飛行している。
「気分が悪くなったらすぐ言ってくれ」
イオリが、後席のファラクに振り向いてにこりと笑う。
「つっ。 ありがとう」
ファラクの顔が赤い。
しばらく飛んだ。
「……あのさ」
「もう少しで、”イザナミ”の操縦者を選ぶじゃない?」
「ああ、そうだな」
多分この遠征で、”ネコジャラシ”の機種変換訓練は終了する。
”ネコジャラシ”は”イザナミ”の試作機だ。
「もし、私がイオリを選んだら……」
「私と一緒に砂漠に来てくれる……?」
「ああ、いいぞ。 砂漠の西方の”アールヴ”だったな、確か」
ファラクの出身国である、”アールヴ首長国連邦”は、砂漠の西方に点在するオアシス都市が集まって出来た国である。
ヘタリナ王国と砂漠を分ける、”アイール山脈”は、西方までは完全に続いていない。
西でヘタリナ王国と平地で繋がっていた。
昔から、ヘタリナ王国やレンマ王国との交流は盛んである。
約10年前に、”アールヴ”のハーレム出身の”踊り子”が、”魔紋”について”ハナゾノ帝国”の”魔術学園”に留学したことがある。
これを切っ掛けに、ファラクが”魔術学園”に行くことと、”イザナミ”の開発に繋がった。
”アールヴ”の東方には、”モンジョ古王国”があるのだが、これから追々出てくることだろう。
「……ありがとっ」
ファラクは肩の力を抜いた。
イオリは、船巫女が船主(”イザナミ”の場合は、操縦者)を選ぶ真の意味を知らなかった。
◆
クルックは、一人だ。
好き勝手に飛んでいる。
狭い渓谷内を自由自在に飛んだ。
――ああ、いいぜ
――飛んでる時は、全てのものから自由だ
イオリ機を置き去りにして飛び去った。
「おっと、先行していた空母”ミナヅキ”に追いついちまったぜ」
「んんっ」
三千メトルを超える山々が連なる、白眉山脈の山頂部には万年雪がかかった部分もある。
そこには、アイスドラゴンたちの巣があった。
このルートはたまに、飛行艦に興味を持ったドラゴンが見にくることがあった。
前方に、空母”ミナヅキ”より少し大きなエルダードラゴンが、”ミナヅキ”と並んで飛んでいた。
時々”ミナヅキ”の窓を覗きこむようにしている。
「ははは、おもしれえっ」
”ネコジャラシ”を加速。
巨大な白いドラゴンに急接近した。
◆
”シラフル湖”に帰ってきた。
「これで、”ネコジャラシ”の機種変換訓練は終了する~』
「引き続き”イザナミ”の操縦者選考に入る~」
「イオリか、クルックか、どちらか一人だ~」
「「了解」」




