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犯した罪

「きゃあ!」

「な、なんだよ……これ………体が動かな………」



私以外はみんなその圧にたえられずに床に膝をついている。

それを好機とばかりにエルカナンは、一番初めの原因となった委員長の佐々木花のもとへ、その息の根を止めようと人間には見えないスピードでせまっていく。



「死ね!小娘!」



そう言ってどこからか剣を取り出し佐々木花の首が切られる。


と、思われた。


だが、永遠にその時は訪れなかった。


理由はもちろん私だ。


私はエルカナンの剣先を左手の人差し指一本で受け止めていた。



もともと私は正体がばれるようなまねはしたくなかった。もしこの男が現れていなかったら、みんなはきっとしぶしぶではあるが勇者としての役目を果たそうとしただろう。その場合私は皆が死なないように影からサポートしていくつもりだった。だが、このエルカナンとかいう神のせいで私の考えも無駄になった。そしておそらくこの神はいくつかの罪を犯している。そして、同じクラスの友達が死ぬところを止める力がある私が黙ってみているわけにもいかない。


自分の正体がばれる代わりに友達の命が救えるのだ。


私はこの男のようにくさっていない。

 


「えっ……」



いきなり自分の前に現れたクラスメイトが自分を殺そうと向けられていた剣を指一本で止めていたら、それは驚くだろう。



「なっ!我の剣を止めただと……!」



驚くのも無理もない。

今の私はちょっと顔がいいだけの黒髪黒目の小娘にしか見えないのだ。

そして、ラッキーなことにエルカナンが驚いた拍子に神力の威圧も霧散された。


「み、美緒ちゃん!」

「雪村……さん?」


「大丈夫。優奈も佐々木さんもそこで見てて」


「雪村さん!危ないから下がって!」

「勇人の言うとおりだ!い、今、指で剣を止めていたように見えたけど相手は神なんだ!」


「だから私は大丈夫だって。悪いけど邪魔だから下がってて?」



普段見せないような黒い笑みを向けて言うとクラスメイトは黙るしかなかった。



「たかが人間の小娘が……!我の剣を止めるなどあり得ん………!貴様一体何者だ……!」



未だに自分の方が格上だと思っているエルカナンを私は故意で煽る。



『そっちこそ、相手の正体すら見破れない中級神ごときが』


私は神々が使う天界語で話しかけた。

天使は小さな翼が二枚、下級神は翼が二枚、中級神は翼が四枚、上級神は翼が六枚、最上級神は翼が八枚、最高神は翼が十枚だ。よって翼が四枚のエルカナンは中級神というわけだ。

だが、普段の私は身分で人を貶めたりしない。

そして、私の挑発に見事に乗ったエルカナンは私に斬りかかってきた。


だが私はそれを魔力も神力もなにもつかわずに、でこぴんで突き飛ばす。



『うわあぁぁああああ!!』



「うっ……うっそぉ~……」


後ろの方でクラスメイトが驚いているが仕方ない。


正体をばらすことになってしまったのも全部このアホ神のせいなのだ。



『………この私が負けるなどあってはなら………』


築けばエルカナンいや、もうアホ神でいいや。アホ神も天界語でしゃべっていた。

そして、私は未だにあきらめていないアホ神のために、本来の姿に戻ることにした。


私の体が宙に浮き、白い光に包まれ姿と服装が変わり背中には八枚の翼がはえた。

ちなみに今の私は父譲りの白銀の髪と金色の瞳そして母譲りの紫の瞳をしている。そして、自分で言うのもあれだがそこのアホ神がかすむほどの人間離れした顔だ。そして、体はしなやかで細いが出るところは出ている。



「えっ?だ、誰?」



クラスメイトは何が何だかわかっていないようだったが、性別関係なくこの場にいる誰もが私に目を奪われていた。

そこで私は、アホ神に目を向ける。



『これで私が誰だかわかりました?これでも私、結構有名だと思うんですけど?』


『は、白銀の髪に金と紫の違う瞳……そしてその莫大な魔力と神力………ま、まさか、あなた様は………!』

『えぇ、私は創世神ヴァンディールと精霊女王リルフェニアの娘、最上級神セレスティリア』


ようやく私が誰だかわかったみたいだけど、だからって特になにもない。

後は、犯した罪でさばかれるだけだ。

私が実際に見ていたのだから、弁明の余地はない。



『あなたは、自分が何をしたかわかっていますか?』

『は、はい!申し訳ありません!私はセレスティリア様に手を………』



私に手を上げたことが罪だと言っているアホ神に私はさらに失望した。



『そうではないでしょう?本当に分からないのですか?』

『え、ええと………』

『はぁ……まず、ルールその3。異世界からの召喚は最高神、つまり私の父の許可が必要。ルールその11。神は正体を隠すならともかく、上級神以下が最高神に許可なく神として人間に積極的に関わってはいけない。ルールその27。無抵抗の人間に手を上げてはならない。あなたはこの3つのルール守っていませんよね?』

『ど、どうか、弁明の余地を………!』



この言葉は私がいまあげた3つの罪を肯定することに他ならない。

私は実際に見ていたのだから。


『あなたに弁明の余地はありません。最上級神セレスティリアの名においてあなたの中級神としての資格を剥奪します。これからは天使としてやり直しなさい』

『そっ、そんな!そ、そうだ!他の神は皆、自身の世界の管理で忙しいでしょう!なら私が続けた方が他の神の負担にならないはずだ!』

『それなら安心してください。代わりのものが見つかるまではしばらく私自らこの世界を管理しますから』

『そ、そんな………』


あいにく私は家出中だ。そして、最上級神の私には管理する世界がない。だから、そんな下心丸見えの発言を私が受け入れるはずがないのだ。

それに後で父様宛に報告書を出しておけば何の心配もない。もし、探しに来たら全力で逃げるだけだ。


『己の罪を悔い改めなさい』


それだけ言い残して私はアホ神から中級神の資格を剥奪し、天界へ送った。




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