異世界召喚
この世界には何千何万という異世界がある。
また、それらの世界を管理している神々がいる。
下から天使(約20万人)、下級神(約8万人)、中級神(約2万人)、上級神(約5千人)、最上級神(3人)がいる。
そしてそのすべての頂点、最高神である全世界を創造した創世神ヴァンディール。
同じく、すべての世界の妖精・精霊の頂点、最上級神である女神、精霊女王リルフェニア。
そして私、最高神ヴァンディールと精霊女王リルフェニアとの間に生まれた一人娘、最上級神セレスティリア。
なのだが私は今、現在進行形で家出中だ。
事の発端は17年前までさかのぼる。
***
神々が住んでいる天界にある城で家族3人で過ごしていた時のことだ。
その日私は、ある異世界にある店で手に入れたケーキを間食に食べようとしていた時だった。机に置いてあったはずのケーキはいつの間にかなくなくなっていたのだ。そしてそれがただのケーキならまだよかった。そのケーキはセレスが、いやセレスティリアがわざわざ3時間も並んで買ったものだった。
「わ、私のケーキがないいぃぃぃぃいい?!」
楽しみにしていたケーキが消えてショックを受けた私は思わず叫んだ。
そしてその声に驚き駆けつけてきたのが我が父ヴァンディールだった。
「セレス?!何があった?!」
膝と手を床に着けながら下を向いてうなだれている私を見て父はぎょっとした。
「父様ぁ………私の……私のケーキがぁ…………」
「ん?ケーキ?」
「私のケーキがなくなったんです……うっ……うわぁぁぁああん!!」
そのまま泣き出した私を見て父は混乱していた。
だが、突然少し考えるそぶりをした後、私に問いかけた。
「………セレス、もしかしてそのケーキ、チョコレートケーキだった?」
「?……はい、そうです………もしかしてどこにあるか知ってるんですか?!」
私は涙を目にいっぱいにためて父を見つめた。
すると、さっと私から目をそらして………
「い、いいいいいや、し、知らないよ?」といった。
嘘をついているのが目に見てとれた。
私はむっとして父を問い詰めた。
「父様!私のケーキをどこにやったんですか?!」
「え、ええええ~~っと………」
「父様!」
なかなか口を割ろうとしない父を私はさらにたたみかけた。
「ご、ごめんよ~セレスのとはしらなくて、つい、ね?こう、ぱくっと………」
「3つありましたよね?」
そう、私は父と母にも食べてほしくて3つ用意していたのだった。
「…………」
「ま、まさか………」
「………おなかがすいていて…………」
「ひ、ひどいです!父様!私と母様の分まで食べるなんて!」
「ご、ごめんって!」
「もう父様なんて知りません!嫌いです!うわあぁぁあああん!」
私はそのまま家を飛び出した。
「き、嫌い?!そ、そんな………」
父の顔が絶望に染まっているがそんなのはどうでもいいとばかりに、居場所を簡単に掴まれないように複雑な魔法陣を描き、適当な世界に飛び今に至る。
***
実を言うと今回が初めての家出ではない。
そして、今いるここはどうやらアースと呼ばれる星で人間族のみで科学というものが発展し、代わりに魔法が全くと言っていいほど発展していない世界だった。
そこで私は日本という国である夫婦のもとに少し記憶をいじって生活している。
この世界での名前は雪村美緒。ごく普通の家庭に生まれ暮らしている。あれからもう17年たっているがまだかえるつもりはない。
食べ物の恨みは怖いのだ!
………っと、話がそれちゃったけど今は普通の17歳として高校に通っている。
「ゆ……ら。…い、雪…ら。……おい、雪村!」
「え?あっ、はい!」
「この問題、解いてみろ」
「……わかりました………」
そう言いつつも未だぼーっとしながら黒板に書き込んでいく私を見て数学の教師は注意しようとするが黒板に書き込まれた正確な答えを見て教師は黙るしかなかった。
「…っ……雪村、戻れ」
まぁ、これでも一応、全国模試1位だしね。
そのまま、自分の席に着こうとしたところで私は動きを止めた。
「美緒ちゃん?どうしたの?」
「ん?あっ、いや……なんでもない」
この子は後ろの席の山中優奈。私の友人の一人だ。
と、今はそんなことを言っている場合ではない。
くるここに。
この教室に。
めんどくさいことこの上ないが、私がここにいる以上無視することはできないので、妨害したりしない。
その時、教室の床に白く輝く巨大な魔法陣が現れた。
「な、何これ?!床になんか模様が………!」
「おい!どうなってるんだよ?!」
「っ……みんな!とりあえず落ち着いて……!」
と反応は人それぞれだがその中でも私は落ち着いている。
その時急に光が強くなり、私たちを魔法陣の光が飲み込んだ。
「きゃあぁぁああ!」
「まぶしっ!」
次に目を開けると私たちは、教室とは比べ物にならないほどの大きな部屋にいた。
辺りを見回すと数学の教師以外のクラスメイトは全員いた。
「な、何ここ……私たちどうなったの………?」
「なんなんだよ……これ………ドッキリか………?」
もちろんドッキリではない。
ここはおそらく異世界の一つだろう。
そして私たちは何者かに召喚されたというわけだ。
『よく来てくださいました!勇者様方!』
声のした方向には玉座と思われる場所に一人の男が座っていた。
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