番外編(質問返しから生まれた主任とT君のSS):「T君、明日からあの3人の専任ね」
「え、ちょ、主任は?」
「聞いてくれるかい、T君。10年ごとにその倍発展しているといわれる22世紀でも、なぜか完全に解決できない問題があるのをしっているかい?」
「いきなりなんの話ですか?」
「私はね、ずっと大切に守ってきたんだよ」
「本当に何の話ですか?娘さんの話ですか?」
「もちろんそれはとても大事だが…………いいから聞きたまえ。私はね、先祖の写真を見て、親父を見て、そういう家系ってことはわかってたんだ。でも色んな手を打って守ってきた。しかしだ、今朝、わたしの、ま、まk、まく」
「主任、もう大丈夫です!そんな心が壊れてしまいそうな顔で『枕に抜け毛が大量にあって禿げの危機を感じた』なんて言わなくてもいいんですよ!」
T君のその無慈悲な一言で、第三管理室は水を打ったように静まり返った。
なにがとてもたちが悪いかといえば、T君には一切悪気はなく、そして文脈が読めても空気は若干読めないことだろう。
今にも壊れそうだった主任の心は木っ端みじんに砕け散り、そしてその目に映るは虚無。AIよりもより感情を一切感じさせない瞳になっていた。
彼は人の心を捨てたことにより、その苦行を申し付けることに対する後ろめたさは微塵もなくなった。
「もう一度言おう。T君、君は明日からあの三人の専属とする。後輩の二人もつけるからついでに新人教育もしてほしい。なに、大丈夫。私は君のその『はっきりした物言い』は評価しているんだ、“とてもね”。君は優秀だと思っているよ。“とても”ね」
「主任、目が死んだ魚を通り越してなにか違うコスモをみてますよ?」
「ああ、君の“おかげ”だ。ところで私は心労による労災を上層部に訴える準備をするので後は頼んだよ」
主任はそれだけを言い残すと、すんっとナチュラルにログアウトした。
困ったように周囲を見渡すT君。しかし周囲はまるで急に時が動き出したかのようにそそくさと動き出しT君に目を合わせない。
「そんな~…………」
T君はがっくりと項垂れたが、室内には「いや、今のは半分自業自得だろ…………」という空気が蔓延していたのだった。
後日、監視から解放された主任は不気味なまでに明るい表情だったが、集団ひき逃げ事件の発生を聞き再び目に虚無が宿るのだった。
※なんてことがあったかもしれないですね。実際はどうかわかりませんが!
ある一人の感想欄での何気ない一言が、SSを生み出したのである。
感想欄常連の皆さまありがとうございます。