No.Ex 検証班・デばっかーさんたちの輝かしい軌跡❶
❶チキチキ!BAN⭐︎BAN⭐︎ツイスターゲーム!
故意接触判定と接触による物理反射率の比較実験という名の合法セクハラ。
検証自体は簡単。男女2人のプレイヤーでツイスターゲームをやるだけ。
7世代のVR機器が何処までを故意とし、どこまでも事故と判定して男女における接触時にどれくらいの警告が発生するのか。或いは厚い手袋や接触を感じない厚めのコートを着ている場合の判定はどうなるのか。それらをツイスターゲームを行うことで検証しようとしたのだが、この検証はかつてないほどに沼った。というのも、サンプル集めが超難航した。
そもそも「俺が検証したい」と名乗り出た時点で下心があると疑われてしまう。いつもは検証に為に人権その他諸々を軽率に捨てる検証班とデばっかーさん達だが、なけなしのプライドがあった。その上、検証班やデばっかーに参加している女性プレイヤーは少ない。機嫌を損ねて抜けられても困る。
その上、この実験は下手すると最悪BAN(永久追放)されしまう可能性がある。そうなれば折角のALLFOライフはおじゃんである。
その中でも2組だけ男女ペアでやることを名乗り出てくれた真の勇者ペアがいたが、これだとサンプルが足りない。というわけで、煮詰まりすぎた検証班達は迷走しまくった挙句、広報を行なっている情報屋に声をかけて検証内容に関して一般のプレイヤーにも周知を実行。VR合コンの体で人を集め、その中でもリスクを承知したプレイヤー達だけが合コンの余興の一環としてツイスターゲームをすることになった。
なおこの合コンは他の検証のみならず、生産組の料理や生産物の披露など様々なイベントを兼ねた大規模なイベントととなり、景品なども用意してビンゴなども行いプレイヤー主催のイベントとしては超盛り上がった。因みに場所は競馬町(旧ヒュディキャンプ地)のレース場の中の部分。デッドスペースをうまく活用した。
最終的にツイスターゲームは元々お触りOK状態にしているカップルなども含め、24組(匿名を含めると30組)が検証協力に名乗り出た。
BANが怖かったのであらかじめGMコールを行い、AIと交渉した結果、開発・AIの認可が降りたことが非常に大きな成果なのは間違いない(なおこの交渉自体はノートが行っている。ノート達はスレ越しで協力をしていたのだ)。
結果、触れられている側の認識によって警告の強度が変わることなど様々な事が判明したが、検証の結果自体は面白味のないものだったことを記しておく。
余談だが検証に託けてノートとイチャイチャできたユリンは数日ニコニコで高校の同級生を酷く動揺させたとかいないとか
❷ワールドワイド翻訳デッドレース!
翻訳技術は21世紀前半から飛躍的な進歩を開始し、21世紀後半には音声翻訳技術はほぼ完成した。
その後はAIを駆使し、技術者達は出来るだけより実践的で、タイムラグのない翻訳をすることに尽力した。造語や細やかなニュアンス、方言など様々な変化にも対応し、22世紀ではVRという仮想世界で世界中の人々が直接会話することができる様になった。
しかしどんなに技術が進歩しても乗り越えられない壁があった。それは各言語に於ける語順と省略である。
例えば、英語の基本形は主語→動詞→補語・目的語が多いが、日本語などは主語→目的語→動詞が一般的であり、中には動詞→目的語→主語と言った独特の語順がメインの言語もある。また、日本語は省略を多用できる代表的な言語である。
語順に関しては、最初から全ての文章が判明している文字の翻訳と異なり、音声翻訳はスピードを求めようとすると齟齬が発生する場合がある。省略に関しては、本職の翻訳家が頭を抱えかねない程に深刻な事態に陥ることがある。
もう少し詳しく説明すると、日本語で「テニスをする」と言った時、英語ではI play tennisとなる。しかし、こんな単純な文章でも、そもそも日本語の文章だと誰が主語なのか最後までわからない事がある。最悪、「テニスをする、君がね」と言っても文章は成立する。なのにスピード優先で、「I(私は)」から翻訳を開始してしまうとそれは翻訳ミスになる。つまりどんなに足掻いても相手が全ての文節を言わない限り迂闊に翻訳をすることができないのだ。
以上を踏まえた上で、検証班は様々な言語でNPCに話しかけ、翻訳のラグの時間からNPC達が話していると思われる独自言語の語順を割り出そうとした。要するに、語順が近い言語ほど翻訳も早くなるだろうという寸法である。
結果、恐ろしいことにどの言語でもラグがほぼないことが判明した。というより、明らかにシンギュラリティレベルでタイムラグが消えていた。日本語→NPC独自語も、英語→NPC独自語も、そして英語→日本語でさえも、タイムラグがほぼ同じだったのだ。
つまりそれはVR側が人間の話そうとしていることを言語として喋る前から読み取ってないと成立しないわけで……………検証班は怖くなって考えるのをやめた。
❸全集中の狂気・無限はいはい編
偉業とは何ぞや。称号の獲得条件ラインは何処ぞ。
素朴な疑問を抱いた一人の男が提案したヤバい検証。検証内容は簡単。何らかのイベントが起きるまで延々と赤ちゃんの様にはいはいするだけ。ログアウトする時もはいはいの姿勢で、ログインした時にウッカリ立ったらアウト。人間の尊厳と二足歩行という唯一無二の個性をかなぐり捨てて唯々ALLFOの中で四つん這い状態で過ごし続けるという狂気の検証である。
立案はされたが一人では比較実験ができないという惨い指摘がなされ3人の生贄を追加。4人による同時の検証が行われた。
何故かはいはいし続けるプレイヤーに興味を引かれ群がった子供NPC達に邪魔され立ってしまった者。
ログインした時に何かも忘れてウッカリ立ってしまった者(自己申告のため真偽は定かではないがヤバい目をしていたので誰も何も言えなかった)。
数日間をドブに捨てた事にふと気づいてしまいリアル発狂してセルフで【発狂】の状態異常になり打ち切りになった者。
ちょっと賢い奴が「目隠しして過ごしてみるとかで良かったのでは」と言ったがこの意見は無視された。周りも狂気に四足で踏み入れた人間がどこまで行けるのか純粋に興味があった。
仲間が脱落していく中で、言い出しっぺの法則により四つん這いを強制された男は孤独ながらも続けた。幾ら周囲から笑われ、その段階を超えて恐れられ始めても。彼はひたすらハイハイで居続けた。冒険者ギルドの受付嬢にドン引きされながらも、暇だからとはいはいでもできる薬草採集のクエストを受けるなどして、リアルで1週間に渡る期間をはいはいに捧げた。
結果、彼は無事に称号を獲得したが、人間としての大事な何かは完全に失っていた。
この検証から、やはり他のプレイヤーがしていない事を積極的にする事が称号獲得の条件の一つだとほぼ確定した。
つまり称号獲得に必要なのは差異であり、よってAという称号を獲得するための条件が判明したとしても、その影響で多くのプレイヤーがAという称号を取ろうとしたら希少性は消えて一般との差異が消えてしまうので…………
要するに、人間が二足歩行したところで特に何も面白くはないし、ゾウが四足歩行しててもそれは普通なのだ。しかし人間が四足歩行しゾウが二足歩行すればそれは普通ではない。特異であり、一般との明確な『差異』がある。
この差異が称号獲得の鍵の一つならば。
四足歩行する人間が増え続ければいつしかそれは特異ではなくなり一般化して差異を失うという事であり即ち同じ称号、獲得条件が判明している称号でも取得者数による一般化が進めば獲得難度も変動する可能性があるわけで…………
恐ろしい事実に気づきかけたこの検証班は口を噤んだという。
❹正気度0%0%0%★どっかんグルメレース
非常にシンプルな検証。大食いを行う事で称号などが取得できるのかという検証だが、狂ってるのは期間。一日中、ログイン可能時間限界までただ食うことだけを続けることによる効果を検証している。
プレイヤーのアバターはかなり謎めいていて、排泄器官がない。ないというより機能していない。結局のところ実物を見ようにも本人すら視界補正が影響するので見えないしケツをまさぐって自分にアナルさんがあるかどうか確認すると絵面がヤバいのでほとんど検証がなされてない。
しかし食事は必要なので定期的に何かを食べる必要がある。かと言って栄養学はガン無視しても大丈夫そうなのはトマトしか食べないとあるプレイヤーから実証されている。
じゃあ腹に何か入ればいいんじゃね?と言って石ころを飲み込んだ狂人がいたが普通にダメだった。変な状態異常になってのたうち回ってコロリと死んだ。まるで殺虫剤をかけた虫のようだったとはその現場を見ていたクラメンの言葉である。
なお土や紙は問題なかった模様。何を食うことができて、何が最も効率よく空腹値を回復するのかはまだ全く判明できていない。
ではプレイヤー側の容積はどうなっているのか。空腹値をオーバーしても食料自体は喰える。その性質から最大値を見極めるという目的もこの検証にはあった。
結果、喰い続けることにより【健啖家】などの称号を獲得し、空腹値の最大値を伸ばすことは可能だった。また、ランクが上がることでも空腹値の最大値が上昇していることも判明した。加えて、途中で打ち切りにはなったものの食べ続けること自体はできた。問題はプレイヤーの容積以上に食料を接種できていたことに加えて体重の変化が見られなかったこと。また、空腹値をオーバーした状態で食べ続けても、その後の空腹値の減り方が緩やかになるなどの変化は見られなかった。
❺アイドルはトイレにいかない
あんまり検証名とは関係ない。内容はNPCの排泄関係の設定を探るというふざけている様で真面目な検証。デばっかーさんより検証班がメインとなっている企画。
ALLFOがモデルとしているであろう中世から近世までの西洋にてご活躍なさった太陽王ことルイ14世の治世の近辺、排泄関係のエピソードは今から想像もできないものが多い。ハイヒールが生まれた理由もなかなかに業が深い。
しかしALLFOの街は至って綺麗だ。つまりそれは下水道のシステムが完璧というわけで……………
今までのゲームだと無視される様な要素だが、ALLFOならば、とプレイヤー達は考えた。
だがNPC達に「う○こってするんですか。するんだったらその後どうしてますか」とは聞きにくい。それを聞くと人間的な何かを失いそうで物怖じしてしまう。そんな中、恐れ知らずの男がNPCに直接聞いて回った結果、NPCは人間同様に排泄は行うが、その排泄物は教会やギルドなどがなんらかの方法で処理していることが判明した。
ただ、ほぼすべての時間を寄生虫、もとい、ストーカー、もとい聖女愛好家に貼り付かれている聖女はプレイヤーが見ている限りではトイレに行くことがないらしく、また、睡眠自体も一日に1時間程度しかとっていない可能性があることから、聖女ちゃんはトイレに行かないと非トイレ派は訴えているとか。
❻食品表示法は偉大ナリ
特級呪物、邪悪の根源などなど様々な名前で呼ばれている戦闘糧食の安全性と原材料を探る禁断の検証。
そもそも、だいたいの物質を変形させられるはずの錬金術にも一切影響を受けない時点で「かなりやばい物体なのでは?」という指摘は成されていたが、具体的にどれくらいヤバいのかは誰も調べていなかったので検証がなされた。
以下某S氏のレポート抜粋
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①燃やす
単純に火で燃やす方と、魔法で燃やすことによる違いを検証した。
火で燃やせば焦げるものの、ほとんど燃焼しない。物理的な火でも、魔法的な火でも影響度に関しての差はなかった。一番不気味なのは、焦げてるのに臭いがしないことだと思う。ただ、焦げてるので少なくとも有機物なんじゃないかとは思う。
②水溶性
砕いて水に漬け込んで溶けるがどうか検証した。
結果、全くと言っていいほど溶けていないことが判明。水自体は吸収するが、体積自体はあまり変化しない。ワインなど他の液体にもつけてみたが結果はほぼ変わらず、ワイン付けにしても相変わらずゲロマズだった。クラメンが抱えてたワインを平和的にお借りしたが殴られ損だった。クソ。
③錬金術
最後までごねていたがQ.ED君に検証をしてもらった。ED君は変わった奴だが腕は立つ。ちょっと多めに拝借したワインの残りをチラつかせたら引き受けてくれた。現段階で判明している錬金は主に5つ。上位化、変質、下位化、分離、相対となっている。
ここでは錬金術についても軽く触れながら結果を書いておこう。
まず上位化とは、対象となる物質を生贄に、その物質の上位互換を生み出す錬金術の一種である。上位と言ってもその度合いはまだブレが大きく、例として挙げるならば、渋柿が渋みのない甘い柿に代わるレベルから、MP回復などを効果を持つ全く別の果実に変化するレベルまで、ガチャ的な要素が強い。ただ、何をもって“上位”と定義するかという点で意見が割れており、例えば先ほどの「渋柿を甘い柿に」を例に挙げると、柿が甘くなるのは食べる人のメリットであって、では甘い柿が渋柿より上等な物質であるかと考えると疑問符が付く。別の例を挙げると、錆び切った刀を上位化して切れ味の鋭い刀に変えたとして、切れ味の良い物が必ずしも上位だとは限らないという事だ。つまりそこには錬金を行う者の価値観も作用している可能性があるという事でもある。
この術はかなり結果の振れ幅が多く、失敗もダントツで多い。実際、錬金術ギルドで上位化が開示されたのは一番最後であり、安易な考え方をするならば最も難易度が高い術であると捉えることもできる。その分、物質の変化は最もわかりやすい。よって上位化で弾かれればあとは消化試合になる可能性もあったので、一番最初にやってもらったが、何をどうやっても、どれほど相性の良さそうな触媒を用意しても戦闘糧食は全く変化しなかった。
次に変質。変質は物体の状態を変化させる非常に便利な術だ。水を氷に、蒸気に、と言った具合で状態を変える。上位化と決定的に違うのは、上位化がA→Sの変化に対し、変質はA→A’の変化でしかないという事だ。なお変質の難度は対象となる物質の複雑さで大きく変化する。例えば水はH2Oという分子のみで構成されているが、料理など様々な材料、分子で形成されてる物質を変質させようとすると結果がばらける。単純に温まったり凍ったりすればいい方で、液状化や水分の消失などがあり得る。変質とは単純な分子運動、位置の変化ではないらしい。
なお液状化した後などは元の物体に対し質量の変化が見られたので単純に1:1の変化でもなさそうなところがミソである。というかその様な効果を持つ陣なのかもしれない。聞いてもニヤニヤしてるか「まためんどくさいこと考えてる」みたいな顔をするギルド職員NPCが憎たらしい。アイツら絶対なにか知ってやがるとはED君のグチである。元の物質が複雑なほど1:1の変化とはならない確立が上がるらしい。陣と触媒、対象物質の組み合わせでそこらへんはいくらでも変わるので情報が全くまとまっていない。ALLFOのボリュームはイカレてやがる。これだけで単一のゲームが成り立ちそうだ。
また、これだけ脱線している時点でお察しだが、戦闘糧食はうんともすんとも言わなかった。クソが。
下位化。長らく軽視されていたというかそもそもギルドでもほとんど情報が公開されておらずスルー気味だったが、ところがどっこい金の生る木であり非常に興味深い術だとED君は言っていた。どうやら裏スレで最初にだいだい情報公開がされただけに眉唾扱いされてたのも発見が遅れた原因だったらしい。問題はその裏スレで暴露した奴が錬金術師たちの間でも全く心当たりがないらしく、情報提供者は完全に謎の人物扱いになっている。錬金術師系のユニーククエストでも引き当てた奴ではないかと言われていたが、その候補に真っ先に上がった銀帯さんもなにも知らないようだった。
ともかく、地球産の素材がほぼ0のこの世界において、その素材を作り出せる下位化錬金は非常に便利だった。ゲーム方面ではあまり役に立たないと上位陣からは軽視されているが、娯楽や検証という点ではなかなか面白い。
ただ、どうしてこの技術が確立されているのかが見えてこないらしい。確かに上位化はなんとなく理解できる。持ち物をより優れた物へ、ゴミを宝物へ。素晴らしく夢のある技術だ。しかしその逆をやってる技術を誰が体系化したのか、上位化との決定的な違いも見えてこないらしく謎が多い。歴史考察系のプレイヤーがギルドなどにへばりついているらしいが、それっぽいことを言われるだけで実態はまだまだ全然見えてないらしい。なまじなにか設定がありそうなだけにタチが悪いとは私のクラメンの話である。
なお下位化でも全くダメだったもよう。クソクソクソ!
続いて分離。原材料を突き止めるという点では非常に期待されていたが全くダメ。対象の素材を原料にバラすという謎の術だが、何かをやらかしたときにそこそこ使える。ただしバラすには元の素材からの変化率が大いに関係しているらしく、そもそもこの術、やってることはシンプルな癖に上位化より難しいらしい。なんでや。
なおワイン漬け戦闘糧食に関しては完璧に分離できたらしいのでこの性質は何かに使えそうだ。
最後に相対。
考察班まで匙を投げてる最も難解な術だ。この術は対象となる物質と大体同じ価値を持つ物質を出現させるという何とも言えない効果がある。例えば、形の悪いトマトを相対錬金すると形の良いトマトができると言った寸法である。トマトと言う価値に違いがなければ問題ないらしい。そもそも同じ『価値』といってもそれは誰からみた価値なのかよくわからないのが一番めんどくさい。過去の例だと、ナス擬きを相対錬金したのに、茸擬きができた事例もある。魔境と呼ばれてる農園を作り上げた100ファンちゃんの育てた種子も大体この相対錬金で作られてるらしい。
戦闘糧食に使ってみたがやはりよくわからなかったのでマーカーで色を付けてもう一度やってみたが、色が変わるくらいだった。これが別物になったのか、それとも塗料だけが相対錬金の対象になった結果なのかもはや判別できなかったので検証は打ち切りになった。もっと高度な器具が欲しい所存である。
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❼猫、猫?猫!
[削除済み]
❽夏休みの自由研究Dxスペシャルファイナルエクセレントフォーム・昆虫編
名前がとっ散らかっているが結構マジメな研究。この世界は開拓しても一定時間で元に戻ってしまうというが、だとすれば巣を作るタイプの動植物はどう繁殖しているのか。
街の外を研究区域として、森の中で巣ごと掘り起こして捕まえてきた蟻系の昆虫を放し飼いにする。仕切りなどの設置オブジェクトはプレイヤーが触れないまま一定時間経過するとロストするので交代交代で監視を行い、蟻たちが新しい巣を作ることができるのか、という実験。
と言っても最初から昆虫で試すのは難しいので、最初は植物の植え替え。森で育ってる植物を根から掘り起こして、街の近くの草原に植えて育ててみる。結果、植物は2週間経過してもロストすることなく普通に根付いた。この結果よりフィールドへの干渉は完全に無理ではないと検証チームは判断。
続いて本来の研究通り、蟻を使用する。
結果からいうと、蟻達は現実の蟻と同様に新しく巣を作り、そしてその巣が時間経過で元に戻ることはなかった。つまり、人間達と違いフィールドで生きる動植物には土地の開拓能力があることが証明された。
なお、植物と共に森から持ってきた石などは普通に消えた為、人工物でなくとも人間が移動したものは元に戻ってしまう可能性が浮上した。
問題とすれば、予想より昆虫にも昆虫らしい思考回路が組み込まれている事まで判明したせいでSOPHIAに積まれているデータの大きさが全く読めなくなったこと。
どういう条件であればフィールドは元の形に戻るのか、そもそも元の形とは何なのか。フィールド検証班の探求はまだまだ続く。
❾ドラゴンレーティングZ 復活の「F」
——————折角第七世代の質感を味わえるなら風俗店が俺ぁ欲しいんだ!!みんな、オラに力(金)を分けてくれ!!!
下半身に脳を支配された1人の男がそう叫んだ。
奴はBANを恐れないスーパー最低人ゴッドだったと企画に携わったアホどもはALLFOの獄中でそう語った。7つの竜玉を集めてギャルのパンティーを本気で願いかねない奴だった、性欲に足が生えて歩き出した様なヤツだったと、彼らは寂しげに笑いながら語った。
歓楽街は街とは切っても切り離せない関係にあり、人類史を紐解いてみると、地球上で一番最初に生まれた職業は【娼婦】だ、などという説もある。だがしかし、ALLFOのシティにはそれらの職業や、スラム街、貧民街などの様な場所が見当たらない。いやまぁそれはゲームだから仕方ないでしょ、そう言う者が殆どだったが、とある男は諦めなかった。奴は人力でキャバクラ、ホストをALLFOにおったてようとしたのだ。なんならセクハラブロック機能で過剰なお触りを制限可能なので現実のキャバよりクリーンなはずとまでのたまった。
といっても最初からキャバクラ全開だとキャストが集めにくいので、まずは出会いの場を設けるという形で女性を集めた。要するに、ランクの高い男プレイヤーと、ランクの低い女性プレイヤーを引き合わせて、女性プレイヤーには男性プレイヤーの太鼓持ちになってもらい男性プレイヤーは気持ちよく狩りをするというわけだ。その結果としてパーティーを組みたい、つまり身受けがしたいと男性側が言った場合は、女性側の任意で胴元にしかるべき料金を追加で支払ってもらう。
女性プレイヤー側も自分より強いプレイヤーと組めるメリットがあるので金銭以上のメリットがある。
経験値制だと姫プになりかねないが、ランク制はただついていくだけではランクは上がらないので姫プのそしりを逃れることができるという大義名分のおまけつきだ。
無論、相手は戦闘系のプレイヤーに限らない。生産系のプレイヤーの助っ人として派遣してもいいし、単純におしゃべりがしたいというプレイヤーの需要にもお答えする。
ALLFOは抽選参加式なので友人と一緒に始めることができないケースが多く、いきなりパーティーを組むのも難しいと言った一面がある。その様なプレイヤー達の為に出会いの場を、その出会いがたまたま異性でした、と言う体で彼は本当にキャバクラを競馬町におったてた。そこには面白がった検証厨どもがバックについてと後に判明するが、とにかく彼はなんとかこぎつけたのだ。
だが、もともとは彼が女性プレイヤーとキャッキャウフフしたくて頑張ってただけなので、オーナーにはなったが女性キャストにしょっちゅうちょっかいをだしクレームが頻発するという事態に。その上彼の暴走は止まらず、競馬町へ移住しに来たNPC達にまで勧誘をして本気でキャバクラ経営に乗り出した。だがそれは流石に見過ごせなかったらしく、冒険者ギルドから派遣された治安部隊のガサ入れが入り、彼は更迭されたのちに失踪したという。
噂によれば彼の試みを非常に面白がった開発陣からキャラをリメイクしてもらったという話が真相は定かではない。ただ確かなのは、ガサ入れが入りオーナーが更迭された後もキャバ自体は存続しているという事実である。
➓働いたら負けかなって思ってる
——————そもそもなんでキャラメイクの時点で職業決めなきゃいけないの。俺はニートでもいいと思ってる。ゲームで働くの馬鹿らしくね? T.M氏(24)の妄言
よくわからないことに情熱を燃やす者は度々現れるが、この男は一味違った。ALLFOはキャラメイクの時点で正職業を3つ、副職業を1つ決めることができ、運営からも告知されているように序盤は正職業は三つまでにとどめておくことが推奨されている。
裏を返せば、選ばないという選択肢があるのだ。あとはもうお分かりだろう。
T.M氏は職業を一つも選ばずにゲームをスタートした。
何を馬鹿なことを。当然周囲から言われた。パーティーを組もうにも堂々と『無職だ!』と言われ、冗談かと思ったら本当に無職なので敬遠され、かといって働きたくない。働きたくないでござる。寄生して生きていきたいとクズが服を着て歩いているような事しか言わない彼は空腹値が限界に達して5回ほど死んだ辺りで噂を聞きつけた検証厨に拾われた。
彼らは全てから見捨てられたT.M氏を絶賛した。「貴重な検体だ」と。
ALLFOでは一度職業を選んでしまうと、教会で転職は可能だが、職の消去は行えないので無職になる事ができないのだ。そう、つまり無職は現状ではどんな手段を使おうとも最初のチャンスを逃すと二度となる事ができないのだ。
T.M氏はほいほい検証班についていき、軟禁された。餌をもらう代わりにちょっとだけ動いた。絶対に働きたくないでござる、と主張する彼に対し、ヒモでも少しは家事をするかもしれないよ、という謎の説得がなされ、ちょっとだけ検証に協力した。
しかしその結果は酷かった。スキルも魔法をほとんど派生しない。そもそも初期のスキルも魔法も無し。なんならパラメータの伸びまで悪い。結局メリットらしいメリットが本当に見つからないまま、今日も彼は元気に検証班のエリートヒモとして、数少ない同士ニートのリーダーとして労働のクソさを世に説いている。




