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春夏秋冬  作者: 向井孝雄
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春・そよ風と遊ぶ妖精のように 予感

「それでは、最後に生徒会総務委員の選挙管理委員の選出を行います。」

(まだ終わんないのかよー。)成績がいいと言うだけでクラスのみんなから祭り上げられて学級委員になった孝雄は、全校委員会であくびをかみ殺していた。

「まず、立候補する人がいたら、挙手してください。」

2人ほどが手を上げた。(ヒマなやつがいるもんだ。)

「それでは、次に推薦に移ります。」

4人がけのつくえの向こう側に座っている1年生の女子が二人、押し殺した声でおしゃべりしながらクスクス笑っていた。

「生徒会総務委員って、何するの?」

「さあ?でも石川さんが立候補するらしーよ。」

「えー。じゃ私も立候補しようかなぁ。」

「ばっかじゃない。」

(へぇ、あいつが立候補するんだー。)石川は、孝雄の1年の時の同級生で、頭は切れるが、バンドとかやっていて超ナンパ、とても総務委員というガラじゃない。

「向井さんを推薦します。」

後ろのほうで、2年女子の声がした。これも1年の時の同級生の中間裕子だった。

「えっ。」孝雄は不意打ちを食らってびっくりした。

「向井孝雄さんを推薦ということで、よろしいですか。」

「いやっ、困ります。」

孝雄は立ち上がって言った。議長がいぶかしげな顔をしていた。

「実は、総務委員に立候補するつもりなので・・・」孝雄はとっさに口走ってしまった。(なんで、あんなこといっちゃったのかなー。)全校委員会の帰り道で、孝雄は自分の不可解な行動を振り返っていた。

総務委員の立候補は10人だった。もともと、総務委員などにはまったく興味のなかった孝雄だったが、内申書によい影響があるので、それをねらってなりたがるやつがいるということを初めて知った。立候補者の中には、全校委員会でおしゃべりしていた女子二名と石川が居た。(なんであいつが総務なんだぁ?)


孝雄は2位の得票数で当選したので、副委員長ということになった。

「じゃ。これから最初の総務委員会を始めます。」

委員長の岩永が節くれだった木製のテーブルの端で口火を切った。会計の坂東は、長いすに斜に座ってベースギターをいじっている。書記の石川はアコースティックだ。(こいつら、やる気あんのかよー。)孝雄は思った。一年生の3人はさすがにまじめに座って聞いていた。

「委員長ー。総務委員って何するんですかー?」

小川京子が間の抜けた声で質問した。

「うん。さっき顧問の先生に聞いてきたんだが・・・。」

委員長の岩永も知らなかったらしい。

「主な仕事は、9月の学校祭の準備らしい。細かいことは去年までの総務の記録を見るように言われた。」

岩永が取り出した去年までの学校祭の記録をみんなてんでに読み始めた。

「そう言えば、うちの学校祭って名前がないんですよねぇ。南高の学校祭は『鳳祭』だし、西高は『橘祭』でしょ。うちも名前つけましょうよ。」

野波妙子がテキトーなことを言い出した。

「それ、いいな。」

今までずっとギターをいじくっていた石川が唐突に賛成した。

「委員長。うちの学園祭って、飲み食いはできないんですか?」

有馬鉄平が聞いた。(そういえば、去年の学園祭でも飲み食いできる場所はなかったな。)と孝雄が思い出していると、

「なんか、保健所との関係とかで面倒くさいんで、何年か前にやめたそうだ。」岩永が答えた。

「えーっ、そうなんですかぁ。つまんなーい。」京子がまた間の抜けた反応をした。

「よし、喫茶やろーぜ、喫茶!」坂東も聞いていたみたいで、異様に盛り上がっていた。(なんちゅう連中なんだ。)と思いながらも。これは面白いことになりそうだなという予感があった。

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