CD
夏休みになった。
憲はあれから結局、一度も学校に行かなかった。
退屈で憂鬱な日々を過ごした。塞ぎがちになって、暗くなった。死んだら楽になれるかと、考えたこともあった。
充希が死んでから、三か月が経とうとしていた。
百か日法要に呼ばれた。
大人は結構楽しそうに、食事をしていた。
その場には奈央もいた。
帰り際、奈央に「話がある」と言われて、二人でファミレスへと立ち寄った。
「はいこれ」
手紙とCDだった。
「これは?」
「充希から憲にって、渡されてたもの。CDは良く分からないけど。ごめんね、遅くなって。機会がなくて……。ってあんたが学校来ない所為じゃない、全く」
「あはは……悪いな。このCDはコンサートに行ったときに、充希に貸してたやつだ。返そうとしてくれてたんだな」
「何それ初耳。私も行きたかった」
「二枚しかチケットがなかったんだよ」
「あっそ」
手紙の入った封筒の裏に、日付が書いてあった。充希が亡くなる二日前だ。
中の手紙を取り出す。
それは震えた字で書かれていた。
拝啓 進藤 憲様
私はもうすぐ死んでしまうと思うので、手紙を書こうと思います。人生初の遺書になるなー。ちょっと楽しい。
学校にはちゃんと行ってる?
ご飯は三食しっかり食べてる?
憲は私が死んだら、いつまで経っても下を向いていそうなので、この手紙を書きました。
憲とは幼稚園の頃からの付き合いだね。
二人で行ったコンサートはとっても楽しかったね!
憲が歌ったチャイムの曲は、幸せな気持ちになった。
私が沖に流されたときは、憲が助けてくれて、本当に嬉しかった。あの時の憲は、とってもかっこ良かった!あれは惚れちゃったよ。
小さい頃から泣き虫で、迷惑かけてごめんね。
病気になって、冷たく当たっちゃって、ごめんね。
いっぱい、いっぱい、ごめんね。
もっといっぱい話したかったな、一緒に居たかった。
私のこと忘れないでね。
絶対だよ!
憲と出会えて本当に良かった。
ありがとう。
岡本 充希
小学校を卒業した春休み、憲は好きな歌手のコンサートのチケットが、二枚当たったので、充希を誘った。
コンサートは盛り上がった。
充希も楽しんでいるようだった。
「なかなか面白かったね」
「あ、そう!じゃあ今度おすすめのCD、貸してあげるよ」