おはよう、新入生
暗闇にだんだんと光が差し込んでくる。母に起こされて目が覚めた。
「おはよう、お母さん」
「おはよう、もう二人とも外で待ってるから、早く支度しなさい」
恐らく充希と奈央だろう。でも約束してないのに一体どうして。まあ二人に聞けば分かることだ。
ベッドから降りて着替える。
母は既にリビングに降りていた。
朝食を済ませて靴を履く。
母が見送りに来た。
「いってらっしゃい、気を付けてね」
「はーい。行ってきまーす」
そう言ってドアを開ける。外には二人が待っていた。
「おはよ。今日って一緒に行く約束とか、してたっけ?」
「あっ、おはよう、新入生。約束はしてなかったけどダメだった?」
奈央が答える。新入生のボケはスルー。
「駄目じゃないけど、そういうの、もう恥ずかしくない?」
「あれ、憲、もしかして思春期ってやつ?大丈夫、私は気にしないから」
奈央が茶化す。
「はあ?俺らは気にするよな、充希」
「照れてる憲も可愛いな~」
「何言ってくれちゃってるんだ、全く」
「ぷぷー、顔赤くなっちゃってますよ」
「なってない!」
二人して俺の顔を除きながらからかってくる。一体俺が何をしたっていうんだ。
じっとしていられなくて、いくぞ、と声をかけて歩き出す。
三人でクラスの書かれた掲示板を見上げる。
「Aだ」
「Aかー」
「Aだった」
「あれ、みんな一緒じゃん」
思わず声を上げる。
「腐れ縁って感じだね。また、一年間よろしくー」
「おう、そうだな」
今日は入学式の日だ。十二の春である。
なんだかんだで帰りも二人にいじられることになった。