第87話 レイヴ洞窟
王城から出て、予め騎士団の方で手配していたらしい馬車に乗り込んでからおよそ半日経った頃、ようやく僕たちは目的のダンジョンがある町、ドワルドに到着した。
現代日本の乗り物に比べたら圧倒的に乗り心地の悪い馬車での移動は、流石にスキル[勇者]があっても体に堪えたようで、馬車から降りた皆の顔はどれもげっそりとしている。
かくいう僕も、恐らくはひどい顔をしているのだろうが。
二回馬車で移動した経験があるとはいえ、中々慣れるものではない。
その後、僕たち勇者組はウォルス団長と騎士団員に先導されるがまま町を歩き、これまた騎士団の方で予め手配しておいたという宿屋に到着する。
明日のダンジョン探索に備えてという名目の下、僕たちは案内された宿屋の部屋で、すぐに眠りについた。
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翌朝、特に寝過ごす事もなく起床した僕は、部屋を出て食事を摂るべく宿屋の食堂へと向かう。
そして、朝食を食べつつも、頭の中ではダンジョンでの実践訓練に向けて思考を始めた。
まず、僕はウォルス団長から聞いて得たレイヴ洞窟というダンジョンの情報を整理することにする。
まず構造についてだが、名前の通り洞窟型で、どんどん地下に降りていくタイプのダンジョンらしく……なんと、既に一通り探索が完了しているらしい。
そのため階層数も判明しており、全十階層のダンジョンとのことだった。
しかし、探索が完了しているのにも関わらずダンジョンが残っているということは、ダンジョンコアが放置されているのだろうか。
もしくは、そもそもダンジョンコアが見つかっていないのだろうか。
どちらかといえば、僕のダンジョンの方が普通ではないため、ダンジョンコア自体が僕のダンジョンにしかないという可能性もあるのだが。
まぁ、それはさておき、次はレイヴ洞窟内に発生する魔物についてだ。
レイヴ洞窟も他の一般的なダンジョンと同様に、どこからともなく魔物が出現するようなのだが……そのラインナップは、中々に控えめなものになっている。
少し名前を挙げていくと、弱いものではコボルトやスケルトン。
比較的強いものには、オークあたりが当てはまるだろうか。
どれもこれもなんというか、RPGの序盤に湧いて出てきそうな、パッとしない魔物ばかりであった。
だからこそ、こうして実戦訓練の場として選ばれているのだろうが……僕としては少し、物足りなさを感じてしまう。
相手が強すぎるのはもちろん困るが、弱すぎるというのも少々困りものである。
最後に、レイヴ洞窟自体とは関係ないが一応やっても損はないため、ここ、ドワルドとレイヴ洞窟の関係についてまとめておこうと思う。
というのも、そもそもの話になるのだがこのドワルドという町、実は出来た理由がレイヴ洞窟があったから、なのだ。
今まで整理してきた情報を知っていれば分かると思うが、このレイヴ洞窟というダンジョン、内部構造も判明しているし、特別強い魔物もいないしで、ある程度の戦闘能力さえあれば安定して魔物を狩る事が出来る。
そのため、冒険者が大勢集まり、冒険者のための宿屋や薬屋が集まり、そうして集まった人のための飲食店も集まり……と、芋づる式に人や施設が集まって、今のドワルドが出来たらしい。
こうした経緯があるからか、驚くべきことにレイヴ洞窟の入り口は、今はなんとドワルドの町の中央広場になっているそうで――
「努君、隣いいですか?」
頭の中で情報整理を続けていたところ、いつの間にか隣に朝食を持ってやってきた葵さんにそう聞かれ、僕は思考を中断する。
「もちろん、いいですよ。一晩経ちましたが、葵さんは昨日の疲れはとれましたか?」
そして、既に大事な情報の整理は終わらせた事もあり、僕はレイヴ洞窟に出発するまでの時間を、葵さんとの情報共有に費やすことに予定を変更した。




