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第85話 殺害対象

「さて、《閃光》に関する話もひと段落しましたし、まだ時間があるなら別の大事な話をしたいんですが、今大丈夫ですかね?」

「はい、特に用事もないですし、大丈夫ですよ。何の話ですか?」

「次のターゲットの話です。今日、無事に葵さんが橋川さんを殺す事に成功したので、今の内に次のターゲットを決めておこうと思いまして。僕の中ではもう決まっているので、葵さんから特に反対が無ければそいつにしようと思っています」

「反対だなんてそんな。流石に一度お願いを聞いてもらったばっかりなのに、おいそれと反対なんてしないですよ。それで、誰に決めてるんです?」


 そう葵さんに聞かれて、僕は少し考え込む。

 口に出す前に、自分の選択が間違っていないか再確認をするためだ。

 自分自身を疑い、先入観を捨てて、考える。


 そうして考えて、再確認を終えた僕は、決めた次のターゲットの名を告げるべく口を開いた。

 

「神岡です。僕は、次のターゲットは神岡にしようと思っています」


 すると、僕の発言から間もなくして、葵さんの目に驚愕の色が浮かぶ。

 無理もないだろう。

 何せ、葵さんは既に訓練等で神岡が[瞬間移動]という反則級のスキルを行使する場面を何回も見ているのだ。

 神岡が如何に手ごわい相手か、理解している。


「本当に、もう殺すんですね。あの神岡を」

「ええ、そのつもりです。というのも、ここで殺しておかないとあの男、どんどん殺し辛くなると思うんですよね」


 当然のことではあるが、僕が次に神岡を殺すことにしたのには理由がある。


 その一つは以前も説明したが、神岡がクラスのリーダーとして勇者同士を繋げるという、僕にとって不都合な役割を果たしているから、というものだ。

 実際、今日の人間観察でも神岡のリーダーシップによる士気の向上が確認出来た。


 そして、もう一つ。

 次に神岡を殺す事を僕に決断させた理由が、もう一つある。

 それは、神岡の予想以上の警戒心の強さだ。


 今まで僕たちは、クラスメイトという立場を利用してターゲットの不意を打ち、絶対に一撃で仕留められるようにして勇者を殺してきた。

 絶対にイレギュラーが起きないように、窮鼠に噛まれないように、と。


 しかし、神岡はどうだろうか。

 一時的に疑いが晴れたとはいえ、犯人の可能性がある人間を無警戒で至近距離に居させておくだろうか。

 

 そんなことはまずあり得ないだろう。

 近づくこと自体は出来るかもしれないが、恐らく警戒されているので武器を手に取った瞬間逃げられること間違いなしである。


 と、今でさえ殺すのが難しそうなのに、他のターゲットに手を出してさらに神岡の中の警戒レベルを引き上げてしまったら……ノーリスクで殺すのは、ほぼ不可能になるだろう。

 だから――


「また神岡に僕が犯人だとあたりをつけられる前に、さっさと殺しておいた方がいいと判断しました。無論、一筋縄ではいかないと思いますが。……葵さん?」


 僕が神岡をターゲットにした理由を話し終えたところで突然、葵さんが僕の目を覗き込むようにして顔を近づけてきた。

 一体どうしたのだろうか。


「努君、不安ですか?」


 葵さんに至近距離でそう言われ、僕の心臓が大きくドクンと脈打つ。

 どうやらまた、感情を読まれてしまったらしい。


「そう、ですね。今回ばかりは、少し不安です。今までに比べて、難易度が圧倒的に高いですから。それでも、やらなければいけませんが」


 そう僕が正直に胸の内を吐露すると、葵さんはすっと顔の間合いを元の位置に戻す。

 そして――


「努君なら大丈夫ですよ。今までも努君は、どんなに難しい事でも私のために自分のためにってやってのけたじゃないですか。普通の人には出来ないような、凄い事を。この世界でも、元の世界でも。だから、もっと自信、持っていいんですよ」


 微笑みながら、自信たっぷりな声で、葵さんは僕をそう激励した。

 

「……ありがとうございます、葵さん。これは僕も、断然頑張らないといけませんね」


 不思議と回転の速くなった気がする頭で、僕は早速神岡を殺すまでの計画を立て始める。

 僕の感情がプラスに動いた事を読んでか、上機嫌そうな葵さんを視界に収めながら。

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