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第83話 光魔法

 あの後、【俺】から体の操縦を返してもらった僕は少し何をするか考えた後、葵さんの部屋へと向かうことにした。

 せっかく葵さんが自主的に魔法の練習をしているので、それに付き合う方がいいと考えたためだ。


 そうして、葵さんの部屋の前に到着した僕はいつぞやの夜の訪問の時とは違い、コンコンと扉をノックして葵さんを呼ぶ。

 すると、中から「あ、ちょっと待って下さい。すぐ出ますね」と、少し慌てた葵さんの声が返って来た。

 

 待って下さいという言葉から読み取れるように、どうやらすぐには手を離せない状況らしい。

 丁度魔法を発動している最中だったのかもしれない。


 という事で、少し扉の前で待っていると扉が開き、葵さんが姿を現した。


「あれ、努君? もう神岡からの呼び出しの件はもう済んだんですか?」

「はい、もう済ませてきましたよ。状況が状況だったので長く感じる時間ではありましたが、ひとまず疑念を晴らすことは出来たと思います。それで時間が出来たので魔法の練習に付き合おうと思って来たのですが……大丈夫ですかね?」

「勿論です! そんなの私が断るわけないじゃないですか。遠慮せずお邪魔してください」


 そう葵さんは嬉しそうに言うと僕を部屋の中に促して、自身も扉を閉めてから部屋の中へと戻る。

 そして、早速魔法の練習を始めようということになったのだが――


「予想以上ですね……これは」


 葵さんの魔法を見た僕は、その上達具合にそう驚嘆の声を上げた。

 

 なんと、葵さんはかつて僕のダンジョンを訪れた冒険者が使っていたような《ライト》や《障壁》といった光魔法を既に使えるようになっていたのだ。

 おまけに以前の僕との練習の経験によるものか、光によってナイフの複製を作る、といった応用技まで使えるようになったらしい。


 葵さん曰く「魔力の活性化が出来るようになったらあとは簡単に出来ました」とのこと。

 

 スキル[勇者]で魔力量も多いし……あれ?

 これ僕が教えることあるのか?

 一瞬、そんな考えが頭をよぎってしまう程度には、葵さんは上達していた。


 しかし、僕も練習に付き合うと言った手前、黙って見ている訳にもいかないので、何かアドバイス出来る事はないかと思考を巡らす。

 

 ……そうだ、ダンジョンで使ったあの閃光トラップ。

 あれを光魔法で再現することは出来ないだろうか。


「葵さん、ちょっといいですか? 試してみて欲しい事があるんですが」


 僕がそう切り出すと葵さんは練習の手を止め、こちらの方へ向き直って


「はい、なんでも試させてください。それが努君のためになるなら」


 と、弾んだ声で言った。

 それを聞いた僕は、そんな自然に出てきたであろう嬉しい言葉に頬を綻ばせつつも、早速思いついた魔法の指示を出していく。


「ありがとうございます。では最初に、《ライト》を使う時のように魔力を操作してみてください。発動はしないで大丈夫です」

「分かりました。次はどうすればいいですか?」

「次は……少し難しいかもしれませんが、さっき《ライト》を発動させるために魔力を集めた場所にさらに魔力を集中させてみてください。同じ場所で複数の《ライト》を発動させるイメージで魔力を集中させるといいかもしれません。出来そうですか?」

「ん……はい、なんとか。かなり集中しないと厳しいですけど」


 僕の確認に対し、葵さんは魔力の集中を維持するのに意識を裂いているからか、余裕のない声で返事を返してくる。

 それで時間がない事を察した僕は、最後の指示を出すべく口を開いた。


「それでは目を瞑ってからその集めた魔力を一瞬、ほんの一瞬だけ活性化させてください。発動した魔法は僕が確認しますから」


 そう指示を言い切った瞬間、僕の目に一瞬だけ《ライト》とは比べ物にならない光を発する球体が映り……あっという間に、僕の視界は光そのものに覆われた。

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