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第80話 疑念の予想

「――ということがあったんですが、何か心当たりはありませんか?」

「? 心当たり、ですか?」


 神岡に話しかけられた後、予定通り葵さんと合流した僕は昼食を食べに食堂に向かいながら、先ほど起こった出来事について葵さんに話していた。

 最新の人間関係の情報を持っている葵さんに相談すれば、どうして僕がこんな事を言われたのか分かると考えたのだ。

 

 僕たちが勇者を殺していることがバレた……とは思わない。

 それならば、犯人である僕をわざわざ呼び出す理由がないからだ。

 僕が犯人だと分かっているのなら、それを騎士団の人に教えるなり、僕の行動を監視して証拠を探るなりするだけでいい。

 

 神岡は馬鹿ではない。

 何かしら、理由を持って僕にあんな事を言ったはずだ。


「ええ、何か今の話に関係のありそうな情報がないかと思いまして。何も分からないまま、のこのこと言われた通りの場所に行くのは危険ですから」

「そういうことですか……。言われなくても話そうと思っていたんですが、それならついさっき一つ気になる事がありました。神岡がさっきのウォルス団長の話、正確には橋川さんの死体が発見された話を聞いた時、神岡の思考に大きな変化があったんです。何故かは分かりませんが、努君への疑念が生まれていました」

「疑念ですか。それはあくまで疑念であって、確信に近いものではないんですね?」

「はい、あくまで疑念です。努君が事件に関わっているのではないか、という予想に近いものでした」

「なるほど……分かりました。ありがとうございます」


 ここで僕は会話を中断し、今の話を元に何故神岡が僕を呼び出したのか考え始めた。


 まず最初に、どうして神岡は橋川が殺されたという話を聞いた時僕に疑念を抱いたのだろうか。

 あの話の中に、少しでも僕が事件に関わっていることを示唆するようなものはなかった。

 この疑念が、恐らくは僕が呼び出されたことに関わっているのだが――


 少し考えて、自分の行動を思い返して、僕はあることに気が付いた。

 僕が疑われるのは、ある意味当然のことなのだ。

 

 第一に、勇者が殺され始めたのが僕が来た後だということ。

 第二に、殺された二人には僕と少なからず接点があること。

 第三に、スキル[鑑定]によって確認されたわけではないため、僕が勇者だと確定していないこと。

 どれも確定的なものではなく、偶然で片づけられるものだが、僕が事件に関わっている可能性を示唆している。


 皆、僕が元々クラスメイトだったからか微塵も僕のことを疑ってこないが、神岡は違ったのだろう。

 客観的に物事を見て、僕のことを疑ってきた。

 天才という評価を受けるだけのことはあるらしい。


 ここまで理解したところで、次に本題である僕が呼び出された理由を考えていくわけだが……それはここまで来れば、おのずと分かってくる。

 神岡の性格と今までの行動と、僕が疑われているという事を鑑みるに、僕が呼び出された理由は――


「努君? もう着きましたよ?」


 葵さんに言われてハッとした僕は、足を止めて思考を自分の世界から現実に戻した。

 どうやら考え込んでいる内に、食堂に到着してしまったらしい。


「すみません、少し考え込みすぎてしまったみたいです。ハプニングが控えていますが、取り敢えずはいつも通り昼食を食べてしまいましょうか。昼食を食べ終わったらすぐに来い、と言われている訳ではありませんし、それに……変化した勇者組全員の様子をある程度把握しておきたいですから」


 僕は普段より重い雰囲気の食堂を見渡しながら、葵さんにそう提案した。

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