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第73話 愛ゆえに壊す

 あの後、少ししてから夕食を食べ終わった私は、食器を返してからいつも通り自分の部屋に戻った。

 そして、自分の部屋に戻ってからベッドに腰掛け、魔力操作の練習をする。


 魔力を体の外に出すのではなく、流し込むイメージ。

 物に魔力を出すのなら、その物を入れ物に例えて、空間に出すのならその空間に入れ物をイメージして。

 私は、目の前の空間に筒状の入れ物を想像してから、そこに魔力を流し込んだ。


 ……うん、出来る。

 昨日努君と練習しておかげで、すっかり魔力操作は出来るようになったみたいだ。

 まぁ、肝心の魔力の活性化では大失敗をしちゃったけれど。


 またいつか、魔法の練習が一緒に出来たらいいな、と思う。

 私が、努君の役に立てるようになった後に。


 練習が終わった後、私はいつも通り眠りについた。


 +++++++++


 翌日も、その翌日も、そのまた翌日も、私は橋川さんとの交流を繰り返した。

 自分のやりたい事をかなぐり捨てて、罪悪感を押し殺して、橋川さんとの距離を縮めていった。

 ときには他の友達も交えて。

 ときには二人きりで。

 自らの能力も、躊躇いなく使って。

 途中努君との話し合いを優先したりもしたけれど、基本的には橋川さんとの時間を最優先に行動した。


 そうして今、決意を固めてから五日後の朝に至る。

 最後の日が来たのだ。

 この作戦、最後の日。

 

 何をするかは、もう決めてある。

 後は実行するだけだ。

 実行、するだけ。


 私は心なしか重く感じる自分の身体をベッドから起こして、身支度を済ませてから通路へ出た。

 そして、通路でたむろしているクラスメイトの中から橋川さんを探して駆け寄り、合流する。


「橋川さん、おはようございます」

「ん、おはよ、葵ちゃん。……あれ、葵ちゃん大丈夫? 何か顔色悪くない?」

「大丈夫です。ただちょっと――」


 ただちょっと、中々眠れなかっただけですと、いつもの癖で言おうとしたのだが、最後まで言う直前で口を一旦止める。

 今言うべき台詞は、これではないと気づいたからだ。


「ちょっと、大変なことがあって」


 私はいつものように取り繕ったりせず、本当の事を喋った。

 これがまず、最初のやる事。


 私の言葉の続きを聞いて、橋川さんは悲しいような、でもほんの少し嬉しそうな、複雑な表情を浮かべた。

 実は、橋川さんはこれまでの交流を通して、私が何か問題を抱えていることに薄々感づいていたのだ。

 だからやっぱりかという悲しさに加えて、話してくれたという嬉しさ少しでこんな表情になっているのだろう。


「大丈夫なの? 私に出来る事なら手伝うよ?」

「本当に、いいんですか? 簡単な問題じゃないですよ?」


 私は確認の意を込めて。

 また、ここで断られたら今日は[実行]しなくてもいいという邪な思いを少し抱えて、そう聞いた。

 橋川さんが断るわけがないと知りながら。


「いいよ。私と葵ちゃんの仲だもん。とにかく、何があったかだけでも話してくれる?」

「分かりました。じゃあ二人きりになれるいい場所を知っているのでそこに行きましょうか。あまり人には聞かれたくない話なので」


 そう言った後、私は何の疑いも抱いていない橋川さんと歩いて移動を開始した。

 そして、城の中でも私たちの部屋からそれなりに離れたところにある、ある扉の前で立ち止まる。


「ここです」


 そう言って私は橋川さんに到着を知らせ、扉を開けて中へ入った。

 続いて、橋川さんも扉の向こうへと入ってくる。

 そして、橋川さんが扉を閉めるために後ろを向いた瞬間、私はリビングナイフを取り出し……扉が閉まった瞬間、そのナイフを橋川さんのうなじのあたりに突き刺した。

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