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第7話 ダンジョンの便利屋たち

 もういくつ目か分からない衝撃の新事実がさっき判明したが、俺はまだ元気である。

 邪神一派には、もうちょっと気を遣ってほしいものだ。

 

 現在俺は、例の声によって次々に頭の中へと流れてくる異世界語の発音や文字、文法の情報を詰め込みながら、召喚できる魔物のリストを眺めている。

 378ポイントと、余り多いとはいえないポイント量だが、出来ることはやっておきたい。


 そうやって眺めていると、使えそうなモンスターを三種見つけたので召喚してみる。

 一体目はカワキリムシというモンスターだ。

 このモンスターは皮の加工が得意らしいので、手に入れた皮の軽鎧のサイズの変更や、改造ができるのではないかと思って選んだ。

 なお、お値段は50ポイントである。

 強靭そうな顎に、甲虫のような体をもつ体長一メートル弱のその魔物に、俺は早速質問してみる。


「この防具のサイズを俺に合わせる事ってできるかな?」  


 俺は管理室にある、皮の軽鎧を指さしながらそう聞く。

 すると、カワキリムシ君は俺に近づいて体のサイズをいそいそと測り始めた。

 近づかれると流石にちょっと気持ち悪い。

 思わず異世界語の授業をちょっと聞き逃してしまった。


 少しの間じっとしていると、採寸が終わったようで、皮の軽鎧の方に向かって行った。

 加工結果に期待しよう。


 二体目は、リビングウォッシャーというお値段100ポイントのリビングシリーズの魔物だ。

 これからも戦利品は増える予定だが、それらが汚れたままなのはあまりいただけない。

 自分が使わないものだとしてもである。

 

 リビングシリーズということで、ウォッシャーもとい物を洗うための道具になっていると思っていたのだが……召喚で出てきたのは毛玉であった。

 具体的には、たわしを球状にして全体的にふさふさにしたような感じの見た目をしている。

 そして、リビングソードのようにふよふよしている。

 

 少々驚いたが、当初の予定通り戦利品を洗ってもらうことにした。

 指示を出すと、思っていたよりも素早く動き始める。

 そうして、どこからともなく水を出すと衣服を洗い始めた。

 どこから出てきたんだろう、あの水。


『魔物も魔法を使えるので水魔法を使ったのでは?』


 授業を中断してそう言われて、今まで魔物が魔法を使うということを考慮していなかったことに気づく。

 まあ魔法なんてもの今までなかった能力だし、見逃してしまうのも仕方ない。

 これからは魔法も考慮して選択をしなければ。


 三体目の魔物はスライムである。

 そのお値段、驚異の一体1ポイント。

 安い、圧倒的に安い。

 というか最低価格だ。

 余りの安さについ一度に十体も召喚してしまった。

 まとめ買いである。

 

 召喚されたスライムは、透明感のある青色の丸みを帯びたボディでぽよよんっと飛び跳ねていた。

 THE・スライムな見た目に安心感を覚える。

 多すぎたかと一瞬思ったが、指示を出して集合させるとちょうどいいサイズになった。

 何にちょうどいいかというと、ベッドである。

 

 スライムに関しては、防衛のためとかではなく欲望の赴くままに召喚した。

 俺は集合したスライムに向けて思いっきりダイブする。


 うん、ひんやりしてて弾力があって、中々気持ちいい、癒しである。

 危うく夢の世界に旅立ってしまうところだったが、なんとか意識を引き戻す。

 これで残りのソウルポイントは218ポイントだ。


 残りのポイントは自身の強化に使うことにする。

 今腰にナイフを二本差しているわけだが、これをリビングシリーズのリビングナイフと取り換えようという算段だ。

 俺は200ポイントを使って、100ポイントのリビングナイフを二体……二本? 召喚する。

 

 召喚されたリビングナイフは、例のごとくふよふよと浮いて移動して、俺の腰のナイフに寄ってきた。

 それを特に何もせず眺めていると、俺の腰のナイフにくっついてきて……重力に従い落下する。

 そして、ふよふよしなくなったナイフの代わりに、俺の腰のナイフがカタカタと震え始めた。

 どうやら、腰のナイフに乗り移ったようである。

 

 もしやと思って、俺のそばでふよふよしているリビングソードに「いい剣があるなら使っていいよ?」と、管理室にある戦利品の片手剣を指して言う。

 すると、最後に殺した侵入者の剣の方に寄って行って乗り移った。

 俺には剣の良し悪しなど分からないが、多分いい剣なのだろうと思う。

 これからも、剣を手に入れたら彼らにお伺いを立ててみよう。


 そうこうしている内に、異世界語の授業(基礎編)が終わった。

 異世界語は所々日本語に酷似している部分があり、思ったよりも覚えやすかった。

 召喚された者が言語文化を輸入したのだろうかと考えていると、頭の中に響く声が俺に話しかけてくる。


『私はこれでいなくなりますが、最後に聞きたいことはありますか?』

「そりゃまた唐突な」


 本当に唐突である。

 心臓に悪いので勘弁していただきたい。


「大体どうしていなくなるんだ?」

『この精神は地球世界の神の力で維持されているのですが、その神が「必要なことはほとんど教えたし大丈夫じゃろう」と』


 なるほど、チュートリアルは終わりという訳か。

 分からないことがあってもすぐに聞けなくなるのは残念だが、確かに基本的な事は教わっているので大丈夫だろう。

 最後に【僕】の方からの質問があるので、最後に俺が聞くことにする。


「ダンジョンマスターはダンジョンの外に出られるのか?」

『はい、特にダンジョン内にいないといけないという縛りはありません』

「ダンジョンマスターがダンジョン外で人を殺すと魂はどうなる?」

『一旦ダンジョンマスターが魂を取り込み、ダンジョンに戻るとソウルポイントとして還元されます』

「勇者の魂を取り戻したら何か報酬はあるのか?」

『実際に取り戻したらお伝えします』

「今は答えないってことかよ」

『許可が下りていませんので』

「……仕方ない、諦めるしかないか。聞きたい事は以上です。ありがとうございました」


 そう言うと、頭の中から何かが消えていくような感じがした。

 気のせいかもしれないが。


 さて、もういい加減体が限界だ。

 ダンジョン内で休みなく働いていたため、外を確認する余裕が無く、昼夜が分からなくなってしまっているが、自分の体が睡眠を欲している事は分かる。

 俺はスライムベッドになだれ込むと、あっという間に意識を手放した。

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