第65話 後悔
無事医務室まで到着した僕は、待機していた医師の人に事情を説明して、葵さんをベッドに寝かせた。
医師の人の診察によれば、一時的に意識を失っているだけとのことだったので、ひとまず安心だ。
医務室に向かう途中すれ違った衛兵に、ウォルス団長に僕と葵さんが医務室にいる旨を伝えるように頼んでおいたので、昼食に行かなくても心配されることはないだろう。
しかし大丈夫そうだとはいえ、さっきのは迂闊だった。
全ての魔力を活性化させてしまう可能性を考慮せずに、魔力の活性化の仕方だけを教えてしまった。
自覚はなくとも、少し作戦の成功に浮かれていたのかもしれない。
もっと細かく手順を踏んでやるべきだった。
もっともっと具体的に教えるべきだった。
もっともっともっと慎重にやるべきだった。
後悔し続けることはいくらでも出来る。
でも後悔は、すべきことじゃない。
本当にすべきことは、反省すること。
そして、後悔する自分を想像することだ。
あのときこうすればよかったと後悔する未来の自分を、今想像する。
そうすれば、その未来の自分に今の自分はなるまいと、心に刻むことが出来る。
事が起きる前に、反省が出来るのだ。
……今はとにかく、目が覚めるまで葵さんの傍にいてやりたいと思う。
傍にいられなかったと後悔する、未来の自分を想像したから。
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「ん、うぅぅ……あ、あれ、努君? ここは?」
夜になって、ようやく葵さんは目を覚ました。
魔力を使い切った代償は中々大きかったようだ。
「ここは王城の医務室です。慌てて起き上がったりしないでくださいね、まだ安静にしていてください」
「分かりました。けど、何があったんですか? 確か魔力操作を教えてもらっていて、魔力を体の外に出せるようになって――」
「その説明をしたいところですが、今は少し待ってください。体調の確認が最優先ですから」
僕は念のために医師を呼んで、再度葵さんの診察をしてもらった。
その結果、特に異常はなし
もう魔力は十分回復したようだ。
体調はもう大丈夫そうなので、僕は葵さんに何が起きて、どうしてここにいるのかを説明した。
「そうだったんですね。ずっと傍にいてくれたんですか?」
「ええ、こんなことになった責任は僕にありますから」
「努君だけの責任じゃないですよ。でも、ありがとうございます、傍にいてくれて。起きたときに努君がいて安心しました」
「僕も、葵さんが起きて安心しましたよ。さて、もう夜ですし、僕たちも自分の部屋に戻りましょうか」
僕の言葉を受けて、葵さんがベッドから出てくる。
葵さんの準備が終わったところで、僕たちは一緒に自分の部屋に向けて移動を開始し、葵さんの部屋に到着した。
僕はここで葵さんに別れの挨拶をして、自分の部屋に戻るつもりだったのだが……突然、葵さんに服の裾をつかまれた。
「葵さん?」
「あの、最後に一つ、努君に私のやりたいことに付き合ってもらっていいですか?」
「勿論かまいませんが……なんです?」
「その、添い寝、して欲しいんです。私が寝るまででいいので……無理だったらそれでいいんですけど」
顔を赤くして、段々声を小さくしつつも、葵さんは確かにそう言った。




