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第63話 書庫

 部屋を出た後、周りに誰もいないのを確認してから、僕はコピースライムに思考で合図を送る。

 これで今、僕の姿をしたコピースライムと一緒にいる葵さんにも、この合図が伝わったはずだ。


 現在葵さんには、僕のアリバイ作りのために、僕の姿をしたコピースライムと一緒に城内を歩き回ってもらっている。

 二人で歩いていれば、突然話しかけられることも少ない。

 もし話しかけられても、よほど怪しまれていない限りは葵さんのカバーが効くはずなので、喋れないコピースライムを僕が直接監視していない状態でも使っていいと判断したのだ。


 そして、僕は合図を送った後に、予め集合場所として決めておいた書庫へと向かった。


 書庫に入った後、書庫の中でも特に奥まった場所の本棚と本棚の間へと向かう。

 到着すると、そこには既に葵さんと僕の姿をしたコピースライムがいた。


「上手くいきましたか?」

「ええ、なんとか。遅くても明日の朝には死体が見つかっていると思いますよ。コピースライムは元の姿に戻ってください。間違っても背嚢の中で動かないように」


 そうして、指示を受けて元の姿に戻ったコピースライムを、僕は背嚢にしまう。

 

「それで、この後今日はどうするんですか? またここで読書でもしますか?」

「いえ、もう気になる本は粗方読み終わったので読書はしませんよ」


 僕は今日までの3日間、自由な時間を使ってここに来て、気になる蔵書を読んでいた。

 魔物に関する本、勇者に関する本などだ。

 ダンジョンに関する本があれば読みたかったが、残念ながらそのような本はなかった。


 魔物に関してだが、スライムやゴブリン、オーク等に関する本はあった。

 しかしその一方、リビングソードやコピースライム、他ダンジョン改造リストに載っている多くの魔物に関する本は特になかった。

 

 どうやら、自然に暮らしている魔物の記録はあるが、ダンジョンにしかいないような魔物の記録はないということらしい。

 僕としては助かるが……他のダンジョンの魔物を知れないのは少し残念だった。


 続いては勇者に関してだが、これに関しては特に興味を引くものはなかった。

 中身が詳しくなっていることを除けば、街の人が話している事とさして内容は変わらないものばかりだったのだ。


 召喚されて、活躍して、行方不明になって終わり。

 王国の人の話が本当なら元の世界もとい地球に帰っているはずだが……とても信用は出来ない。

 地球の神様も召喚されっ放しだって言ってたし。

 別に、地球の神様も信用はしていないが。


 と、いうような感じで読みたい本は網羅済みだ。

 そこで、今日は後何をするかだが――


「今日は葵さんがやる事を選んでください」

「私が選ぶんですか?」

「ええ、僕と君で出来る事なら何でもいいですよ。最近僕が付き合わせてばかりですから」

「でも、いいんですか? 忙しいんじゃ」


 確かに、これからのことを考えるとまだまだやる事はたくさんある。

 でも宏和の死体が発見されて動揺が広がってからの方がやりやすいし、何より――


「葵さんと同じように、僕も葵さんの役に立ちたいんですよ。だから、たまには僕も役に立たせてください」

「……分かり、ました。じゃあちょっと考えます」


 僕はちょっぴり頬を赤くした葵さんの思考が終わるまで、ナイフの手入れをすることにした。

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