第44話 ウィークポイント
突然だが、今回王国に召喚された勇者たち……つまりは【俺】のクラスメイトたちの弱点はなんだろうか。
僕は、彼らの弱点は精神面ではないかと考えた。
ただでさえ彼らは高校三年生、終わりかけとはいえまだ多感な思春期だ。
いきなり誘拐まがいのことをされて、不安になっていることだろう。
それに加え、この世界にいる限り、地球世界にいる親しい者たちと会えないという現実。
出来る限りの事は聞いてもらえるとはいえ、下がった文化レベル。
慣れない生活環境。
更には戦争への強制参加、つまりは人を殺さなければならないという試練が課される。
僕ほどじゃないにしろ、中々厳しい待遇を受けている。
相当精神的に参ってくるはずだ。
僕としてはこの弱点を利用しない手はない。
しかし、この弱点となる精神面の弱さをカバーしているものがある。
それは集団心理だ。
彼らは皆、高校のクラスという集団に所属している。
そして、一般に人間というのは集団に所属すると、理由は様々だが安心感を感じることが出来るのだ。
これが不安を打ち消してしまっている。
ならどうするか?
方法は二つある
一つ目はその安心感を上回る不安を与えてやること。
二つ目は集団を崩壊させてやること。
ようやく本題に戻るが、今回用意する切り札というのは、使いようによってはこの二つの方法をどちらも実行することが可能な能力を持っている。
そんなポテンシャルを持つ切り札とは一体何かというと、コピースライムという一体850ポイントの魔物だ。
名前からお察しの通り、この魔物はコピー能力を持っている。
コピーしたい生物の体の一部を取り込むことによって、対象の姿を完全にコピーすることが出来るようになるのだ。
ただしコピー出来るのあくまで姿だけで、能力や声などはコピーすることが出来ない。
そこは要注意といったところか。
葵さんに人間関係の調査を頼んだ理由は、この魔物のポテンシャルを最大限に引き出すためだ。
便利な魔物ではあるが、話しかけられたら一発アウトというかなりピーキーな側面も持ち合わせている。
細心の注意を払って、最高の準備をした上で運用しなければならない。
取り敢えずコピースライムを一体召喚して、試しに僕の髪の毛を一本与えてみた。
すると、ただのスライムと大して変わらない姿だったコピースライムが、みるみるうちに人型になっていき、やがて僕と完全に同じ姿になっていった。
装備は着けてなかったけど。
コピースライムを活用する前には、衣服の準備が必要そうだ。
ちょっと面倒。
コピーの性能を確認したところで、僕はコピースライムに元の姿に戻るように命令を出し、ただのスライムの姿にした後、背嚢の中にコピースライムを詰め込んだ。
スライムは流動体だから、持ち運びにすごく便利である。
取り敢えず、今回ダンジョンに戻ったメインの目標は達成したわけだが、まだ丘を削るのには時間がかかりそうだ。
他に何かやる事はないだろうか。
……あ、そういえば鑑定で今使っている黒剣の性能を確かめるのをすっかり忘れていた。
何か新しい発見があるかもしれないしね、早速鑑定してみるとしよう。




