第40話 下ごしらえ
「お前……やっぱり魔物だったのか」
「失礼ですね、違いますよ」
僕がダンジョンマスターだとカミングアウトした後の、諜報員さんの第一声がこれである。
僕は職業がダンジョンマスターなだけで、正真正銘人間だ。
人外にはなっていない……多分。
「ダンジョンの主が人間だなんて信じられるかよ! 魔物が人間に従うはずがねえ!」
「まぁ、反論する必要は特にないので、別にそう思ってもらっても構いません」
会話を続けつつ僕はダンジョンコアのところに移動し、召喚出来る魔物のリストを開いた。
今回この諜報員さんに対して使いたい魔物がいるんだが……お、見つけた。
今あるソウルポイントの残量は確認していないが、滅茶苦茶な量のポイントを消費する魔物でもないので、取り敢えず召喚していく。
小さい魔物なので、気づかれることもないだろう。
魔物が手元に召喚されたことを確認した後、僕は諜報員さんのベルトにいるリビングナイフに指示を出した。
致命傷にならない範囲で、最大限の痛みを与えろと。
リビングナイフに切りつけられたことで、諜報員さんは「ぐあぁぁぁぁ!」と痛みに叫び声をあげる。
その瞬間、僕はすかさずフル強化状態で接近して、叫び声の発生源である諜報員さんの口に手を突っ込み、先ほど召喚した魔物を押し込んであげた。
そう、今回召喚した魔物は寄生型の魔物なのだ。
その名もブレインオペレーター、500ポイントの魔物だ。
見た目は一見ミミズのようだが、頭の方を見れば円形に開いた口と、そこにびっしりと並ぶ鋭い歯を確認することが出来る。
先ほど口の中への侵入に成功したこいつは、喉を食い破りながら進み、脳の方を目指しているはずだ。
喉を食い破られる痛みで、諜報員さんはもはや叫び声をあげることしかできなくなっている。
食い破るとは言っても、出来る限り重要器官は傷つけないようにしているはずだが、痛みは変わらないか。
少し時間が経つと、痛みに悶えていた諜報員さんの体の動きが突然停止した。
どうやら無事脳に到達出来たようだ。
リストに載っている情報通りなら、脳を乗っ取れているはずだがどうだろうか。
確認してみるとしよう。
「脳の乗っ取りには成功しましたか?」
「はい。成功しました」
「記憶は読み取れますか?」
「この人物の記憶は全て読み取れます」
雰囲気的に、どうやら乗っ取りには成功したことは間違いないようだ。
さっきまで軽い口調で表情豊かにしゃべっていたのが、今は丁寧語で無表情のまま僕の質問に答えている。
完全に別人といった様相だ。
僕と【俺】も、客観的に見たらあんな感じなのだろうか。
それはさておき、ようやく安心して情報を引き出せるようになったので色々と聞いていこう。
さっき質問をして確かめたように、この魔物は寄生対象の記憶を自由に読み取ることができる。
だから、聞き出す情報の正確性について心配する必要はない。
手間をかけた分、有益な情報があるといいなぁ。




