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第38話 条件

「今話題になってるダンジョンというと、あの入ったら二度と出られないっていうダンジョンか。何が狙いだ?」

「そちらからの質問は受け付けません。自分の立場をわきまえたらどうです?」

「けっ、つれねえ野郎だ」

「二度命を助けてあげている事を忘れないで欲しいですね」


 一度目は盗賊から守った事。

 二度目は正当防衛によって殺さなかった事だ。

 まぁ、僕も恩なんて曖昧なものはすぐに忘れるので人の事は言えないけど。


「さて、一旦見逃すとは言いましたが逃げられても困るのでこれを数本必ず身に着けておいてください」

「……ただのナイフにしか見えないが」

「本当にただのナイフだったらよかったんですがね」


 僕はベルトから抜いたナイフがひとりでに動くところを、諜報員さんに見せた。

 

 逃げられないようにすると言えば、ロープなどで拘束するのが一般的だと思うが、それをするとまた目立ってしまうし、ダンジョンに連行出来ない。

 一応決まりとして、捕まえた犯罪者は街にある兵士の詰所に連れて行かなければならないのだ。

 なのでこうして、できるだけ穏便に言うことを聞かせようとしている。


「そんなもんまで持ってるのか。やっぱり只者じゃねえな」

「このナイフは僕の意思によって自在に動きます。そして。以下の場合にあなたに危害を加えるように設定しています。一つ、逃亡を試みた場合。二つ、僕の提案を拒否した場合。三つ、僕に関する情報を話そうとした場合。四つ、僕に危害を加えようとした場合。この四点です。別に難しくはないでしょう?」

「ああ、難しくはねえがクソみてぇな条件だ」

「安心してください。そんな無茶な提案をするつもりはありませんよ」

「どうだかな」


 当然ではあるんだけど信用されてないなあ。

 本当に無茶な提案をするつもりはないのに……今のところは。


「じゃあ伝えることも伝えましたし、実際に身に着けてもらいますね」

「っ!」


 僕は先ほど話した条件を設定した数本のリビングナイフに、諜報員さんが身に着けている腰のベルトの隙間に侵入するよう思考で指示を出した。

 よくよく見れば不自然感があるのは否めないが、パッと見はベルトにナイフがささってるだけに見えるんじゃないかな。


「言い忘れていましたが、当然ナイフを外そうとするのも禁止ですよ」

「分かってるよ」

「では、僕はもう寝ますので、条件に反さない限りは自由にしてていいですよ」

「随分余裕だな」

「それだけそのナイフは優秀なんですよ」

「……俺もとんだ外れくじを引いたもんだ」


 そう言い残すと、諜報員さんは観念してひとまず去っていった。

 

 僕からすると、今回は当たりくじを引いたようなものだ。

 まさか、偶然帝国の諜報員さんと乗り合わせるとは思わなかった。

 そして襲って来るとも。


 貴重な帝国サイドの情報を手に入れるチャンスだ。

 今すぐ欲しい情報でもないけれど、せっかくのチャンスを潰すこともない。

 そんなことを考えながら、強化を解除して僕は再び眠りについた。


 +++++++++


 翌日は特にトラブル無く、ロルムの街までたどり着くことが出来た。

 僕の目的地はこの街じゃないけどね。


「僕と彼はちょっと街の外に用事があるのでそちらを済ませてきます……皆さん、絶対に僕の事は口外しないでくださいね?」

「俺たちは恩を仇で返すような真似はしないよ。なあ皆?」

「本当に頼みますよ。では私たちはこれにて。ほら、行きますよ」

「……ああ」


 同乗者たちに念を押した後、僕は諜報員さんと共に自分のダンジョンへと向かった。

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