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第34話 行動指針

 本来、この王城に侵入した目的は勇者の情報集めだ。

 勇者がクラスメイトということで大幅に手間が省けたものの、それぞれに固有のスキルがあるという非常に面倒な事柄が発覚したため、結局のところ情報集めは継続しなければならない。

 

 生憎僕は鑑定なんていう便利なスキルは持っていないため、地道に観察を続けるしか……いや。

 もっと手っ取り早い方法があるじゃないか。

 殺してスキルを奪い取ればいい。

 

「葵さん、僕はまず下準備をします。先ほどの鑑定というスキルを持っている人がいる場所に心当たりはありますか?」

「はい。鑑定スキル持ちは珍しいらしくて、王国が保護して王城に住まわせてるらしいですよ。場所は――」


 僕は葵さんに、鑑定スキル持ちの人がいるという場所を教えてもらう。

 別に王族じゃあるまいし、特別警備が厳重ということもないだろう。


「聞いておいて難ですが、なんで部屋の場所なんて知ってるんですか? スキルを調べてもらっただけなんですよね?」

「それはですね、私たちは一応勇者なので、意外と色々な要求が通ったり高待遇だったりするんです。それで、サービスの一環として無償で鑑定をしてもらえるというのがあって、それで場所を知っていたんです」

「……なるほど」


 決して、待遇の違いに悲しくなったわけではない。

 理不尽さを感じただけだ。


「では、僕は一仕事してから一旦王城を出てダンジョンに戻ることにします。葵さんには王城でしてもらいたい事があるのですが……不安ですか?」

「うん、ちょっと。また努君がどこかに消えてしまうような気がして」

「……不安を和らげることが出来るかどうかは分かりませんが、僕の配下のリビングナイフを渡しましょうか。勇者になっているので余程のことがない限りは大丈夫でしょうが、いざという時は役に立つと思います」


 僕はベルトから初期の鉄製リビングナイフを四本取り出して、指示を始める。


「君たちへの命令を変更します。今後は以下の指示を守ってください。一つ、暫定的に彼女を君たちの主君とします。二つ、基本的には待機状態を維持してください。三つ、彼女に敵対者が現れ、肉体的に危害を加えようとした場合、状況に応じて包囲状態、殲滅状態に移行し、すみやかに敵対者を排除してください。分かりましたね?」


 確認の言葉を発すると、リビングナイフたちは待機状態もとい普通のナイフのふりをやめた後、刀身をコクコクと縦に振って、また元の状態に戻った。


「この子たちって知能あるんですか?」

「どうなんでしょう。戦いのやり方を教えたらしっかり学んだので学習機能はあるようですが……少なくとも、命令は守りますよ」


 教えたら字とかを書けるようになるのだろうか。

 今のところ、意思疎通に問題はないのでする予定はないが。


「話を戻しますが、葵さんには城内の細かい人間関係の調査をしてもらいたいんです。その目を使って」

「人間関係ですか?」

「ええ。葵さんなら、特定の人物と特定の人物が接触したときの心の変化を読み取る事ができるんじゃないかと思いましたので」

「分かりました。これで努君の役に立てるんですよね?」

「はい。というか僕としては同じ目標を掲げてくれるだけでも嬉しいのですが」

「私だって役に立ちたいんです。貰ってばかりは嫌ですから」

「……ありがとうございます。では、一仕事してくるとしますかね」

「早く帰ってきてくださいね」

「もちろんです」


 名残惜しさを感じながらも、僕は彼女の部屋を後にした。

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