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幕間 消失と召喚

 運がいいことに、私は三年生でも努君と同じクラスになれた。

 人のことは言えないけれど、新しいクラスメイトは中々に個性的だ。

 天才肌の人、熱血漢の人、学年のマドンナ、などなど。

 

 まぁ、私は今まで通り目立たないようにするだけだ。

 努君も今まで通り、私と話す時以外は彼の言う"もう一つの人格"を出し続けている。

 流石に、私たちが付き合ってるのはバレちゃったけれど。


 努君は、今までの事情もあってこと恋愛に関してはすごく不器用だったけれど、その分私がアプローチしたり、色々教えたりしている。

 ちょっと恥ずかしいけれど、彼は必ず受け入れてくれるから、喜びの方が圧倒的に勝る。


 それに、私が愛情表現をする度に、彼の目の輝きが増すのが嬉しくてたまらないのだ。

 前は闇しかなかったあの瞳に、私を映すと光が現れる。

 私だけの光、私にだけ見せるあの素敵な温かい光……ああ、思い出すだけで独占欲が溢れてきてしまう。


 しかし、そんな幸せな日々は突然途切れた。

 ある梅雨の日に何の前触れもなく、彼が消えたのだ。

 本当に何の前触れもなく。


 努君が消えた日、私から見ても彼に特にいつもと変わったところはなかった。

 ならば自らの意思で消えたというのは考えにくい。

 事件に巻き込まれたのか?

 可能性は低い、と思う。


 本来の彼は本当に優秀だ。

 私なんか、遠く及ぼないぐらいに頭がいい。

 すぐにその状況下での最善手を見つけ出せる。

 ちょっとやそっとのことでやられたりはしないはずだ。

 でも……彼でも回避不能の事態に巻き込まれていたら?


 不安が湧き出てくる。

 顔色が悪くなっていくのを感じる。

 もう彼と会えないなんていうのは、考えたくない。

 彼のいない生活なんていうのは、もう考えられない。


 私と別れた後の努君の帰路を調べてみたが、特に目ぼしい物は見つからなかった。

 が、どこか異様な空気が漂っているのを感じた。

 地球の空気とは違う、どこか不思議な空気。

 それ以上は何も分からなかったけど……


 努君が消えてから数日たったが、全くその行方は分からない。

 両親もクラスメイトも、皆沈み込む私を励ましてくれたが、誰も彼の代わりにはなりはしない。

 ああ、もし神様がいるのなら、私のささやかな願いを叶えてはくれないだろうか。

 多くの宗教が言うように、善行をしろというなら人助けでもなんでもしよう。

 正義を守れというなら悪を滅ぼそう。

 だから……彼と会わせて欲しい。


 授業中にも関わらず、藁にも縋る思いでそんな神頼みをしていた時、突如異常事態が発生した。

 私の足元がいきなり光り始めたのだ。

 見れば、円形の図形……いわゆる魔法陣らしきものが光を発している。

 そして、その魔法陣はどんどん大きくなっていき、教室全体に広がっていく。

 他の皆も異常に気付き、驚愕の声を上げ始めた。


 そんな中、私は魔法陣を観察していた。

 全く同じではないけれど……雰囲気が似ている。

 あの異様な空気と。


 そうして観察していると、魔法陣が放つ光が一気に強くなり、教室全体が光に包まれた。

 私も例外なく光に包まれ、視界を奪われる。

 体も動かせないまましばらくすると、ようやく視界が戻って来た。

 戻ってきた視界に映ったのは、他のクラスメイト、先生。

 そして、明らかに教室とは違う空間……石造りの俗に言う玉座の間だった。

 次回、幕間もとい過去編最終回です。

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