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第29話 情報

 ある人物に関する情報を得たいとき、一番確実な方法は何だろうか。

 人から聞いて情報を得るのもいいだろうが、一番確実なのは、その人物を直接観察することだろう。

 相手が相手なだけにハイリスクな方法ではあるが、後のリスクを考えればやる価値は十分にある。

 ということで、僕はその観察対象である勇者がいるという王城付近に来ているのだが――

 

「正面突破は……無理そうですね」


 視力を強化して、城を観察していた僕は一人そう呟いた。

 当然といえば当然なのだが、王城は警備が厳しい。

 正面入り口と裏口があるのを確認したが、どちらでも衛兵がしっかりと目を光らせている。

 隠し扉等があるのかもしれないが、観察したところで見つかるものじゃないだろう。

 

 ……お? あそこからなら入れるかな?

 結構高い位置だが、バルコニーがある。

普通ならあんなところに外からは行けないが、僕のフル強化時のスペックを使って、さらにリビングナイフさんに協力してもらえば行けるかもしれない。

 どうやってバレないように登るか検討しておこう。


 さて、侵入口に目星はついたが問題は内部構造だ。

 例え侵入に成功したとしても、内部の構造が分からなければ勇者を観察するなんていう目標は到底達成できないだろう。


 しかし、いくら外から眺めても内部の構造は分からない。

 かと言って中に入って確かめるわけにもいかない。

 が、こういう情報は別に僕が直接確かめなくてもいい情報だ。

 人から聞いて情報を得ようじゃないか。


 僕は選り好みせずに、王城から出てきた人から片っ端から情報を得る事にした。

 

 まず、僕は王城から出てきた人をこっそり追跡する。

 そして、できるだけその人が人気のない場所に移動するのを待つ。

 移動したら、身体強化を使って一瞬で距離を詰め、リビングナイフを対象の首元に当て、抵抗できないようにする。

 そうしたら、より人気のない場所……裏路地なんかにその人を無理やり連れ込んだ。

 その後、連れ込んだ人の手と足をロープで縛ったところで、僕は質問を始める。


「僕は回りくどい話は嫌いです。それを踏まえた上で簡潔に質問に答えてください。王城の中の構造はどうなっているのか。衛兵はどのように配置されているのか。知りうる限りのことを教えてください」

「お前は何者だ!? 何のためにこんなっぎゃああああああ!」


 僕は彼の右手の甲にリビングナイフを突き刺し、貫通させた。


「そちらから質問は受け付けません。もう一度言います。王城の中の構造はどうなっているのか。衛兵はどのように配置されているのか。知りうる限りのことを教えてください」

「誰が貴様なんぞにっ……ぐっ、があああああああああああああああ!」


 今度は、左手の甲に同じようにしてリビングナイフを突き刺した後、リビングナイフに宙に浮くように指示を出した。

 手の甲に開いた穴で体重を支えて、手の肉が引きちぎられていくのはさぞ苦しいだろう。

 現に叫び声を上げて苦しんでるし。

 

 ある程度苦しませたところで、僕はリビングナイフと手を地面に下ろす。

 それから、彼は彼の知りうる王城の様子を限界まで喋ってくれた。

 

 僕は話を元に、脳内で地図を組み立てていく。

 ちなみに、彼は王城の巡回の仕事を終えた衛兵だったらしい。

 素直に喋ってくれて嬉しいよ、うん。


「もう十分喋っただろう!? そろそろ逃がしてくれ!」

「そうですね、じゃあ逃がしてあげましょうか」


 そう言って、僕は彼の首を切り落とした。

 逃がす場所が、この世であるとは限らないという訳だ。


 声を聞かれ、顔を見られているのに生かすような真似はしない。

 また騒ぎになるだろうが、仕方ないだろう。

 

 その後も、僕は同じ事を繰り返した。

 人気のないところを通らなかったため捕まえるタイミングがなかったり、中々口を割らなかったりと多少のイレギュラーはあったものの、おおよそ上手くできたと思う。

 

 イレギュラーの一つとして、護衛の付いてる人……貴族の人だったかな?

 ちょっと偉そうな人が王城から出てきた時に、詳しい情報を持っているんじゃないかと思って、はりきって護衛を殲滅してから話を聞きだしたのだが、たまたま呼び出されただけで王城について詳しくは知らないと言う。

 それを聞いて、僕がさっさと殺そうとしたら、聞いてもいないのに慌てた様子で色々な王国の関連情報を喋り始めた、ということがあった。

 

 情報の内容は、王国の政治勢力、兵力、財力などなどと、勇者の人数だ。

 なんと三十四人もいるらしい。


 予め知ることができたのは良かったのだが、げんなりする人数だ。

 まさか勇者がそんなにいるとは思わなかった。

 「多くても普通は一桁でしょう!」と、心の中で突っ込みを入れる。

 

 僕は嘆息しつつ、得られた情報の整理を始めた。



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