第26話 戦力増強
ダンジョンを留守にするにあたって、念のために防衛用の魔物を追加しようと思う。
予算となるソウルポイントの残量の合計は、7140ポイントだ。
なんやかんやで押し寄せる冒険者を数十人殺して、15000近くのソウルポイントを集めてはいたのだが、主にリビングナイフさんの大量召喚により相当量のポイントを消費したため、今回の収入を除くと1510ポイントしか残っていなかった。
リビングナイフについて言及すると、今現在は合計百本のリビングナイフが、僕の外套の裏とベルト周りでひしめき合っている。
なんでこんなにたくさん召喚したのかというと……端的に言うならば便利なのだ。
まず第一に、無機質系の魔物なので維持費がかからないこと。
次に、外出に便利だということ。
当然のことではあるが、外に出るときに普通の魔物を引き連れていくわけにはいかない。
そこで、一見普通の武器に見えるこいつらは便利なのだ。
戦闘の場面においても、特定の指示に反応して特定の動きをするように訓練してあるため、結構使い勝手もいい。
今回の防衛戦でも、「殺せ」という指示で特定のターゲットの包囲、攻撃まで一通り行ってくれた。
ベルトはカワキリムシの特注品で、腰回りにナイフがたくさん装着出来るように魔改造してもらった一品だ。
その数、なんと八本。
外套は……破ってしまったので街に出たら買い替えようと思う。
リビングナイフたちにも、リビングソードと同様に自由なナイフを選んでいいと言ってあるので、半数近くのリビングナイフたちが、召喚された時点でのシンプルな鉄の両刃ナイフとは違う姿になっている。
魔法士や射手などの遠距離支援職の侵入者さんが、近接戦用にナイフを持ってくるため、五十本くらいは普通にあったりするのだ。
おかげさまで黒いナイフ、片刃のナイフ、柄が派手なナイフなどなど、かなりバリエーション豊富なナイフ軍団が出来上がりつつある。
一応、どれも既存のものよりは高性能になっているとは思う、多分。
さて、ここで本題に戻ろう。
防衛用の魔物に、僕はクレイゴーレムという一体200ポイントの魔物を選ぶことにした。
こいつは文字通り、土で出来ている人型のゴーレムだ。
この魔物は土で出来ているからか、ある程度体の形を変化させることが出来る。
つまり、装備のサイズに融通が利くのだ。
早速クレイゴーレムを三十体ほど召喚すると、管理室の隅っこの方に連れていき、積み上がっている中から装備を選んでもらった。
見たところ、しっかり武器と防具を対応したものを身に着けているようだ。
これで余っていた装備品を有効活用できるだろう。
このクレイゴーレムたちは、二階層目の壁際に配置することにした。
そして、できるだけ侵入者を逃がさないようにするために、侵入者がある程度広間を進むか、クレイゴーレムたちの存在がバレるまでは、侵入者に襲い掛からないよう指示を出しておく。
ついでに、僕に回復魔法をかけてくれる魔物も召喚してしまおう。
回復魔法には水属性のものと光属性のものがある。
水属性はじわじわとしか回復しない代わりに長時間効果が継続する。
光属性は一気に回復するが、発動したっきりという特徴がある。
僕は一人なので、ほんの僅かな隙が命取りになる。
そのため、出来れば光属性の魔法が使える魔物を召喚したいと思ったのだが、これが中々に高い。
それに、街中には連れていけないような魔物ばかりだ。
神々しいオーラを放ってそうな奴らしかない。
仕方ないので、水属性方面で探していくと、中々良さそうな魔物を見つけた。
アクアマリンスライムというスライムの亜種だ。
スライムならそんなにかさばらないだろうし、周りに人がいるときはしまっておけばいいだろう。
300ポイントを消費して、実際召喚してみると、普通のスライムより深い青色のスライムが出てきた。
触り心地も気になるが、とりあえず水属性の回復魔法を試しにかけてもらう。
……じわじわと体の節々の痛みが消えていくのを感じる。
地味ではあるが、これは成功ということでいいだろう。
流石は普通のスライム三百体分のスライムだ。
これで残りのソウルポイントは840ポイント。
戦力を増強したので、Aランク冒険者レベルが来ない限りは、僕がいなくてもダンジョンは安泰だと思う。
今、ダンジョン内でするべきことはした。
いつまでも籠ってるわけにはいかないし、次は久しぶりの外出といこう。




