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第20話 未知

 今回、【俺】はギルドにダンジョンの位置情報を渡した。

 その理由は、ダンジョンに冒険者をおびき寄せるためである。

 【俺】がギルドで行った演技によって、そこそこの注目を集める事ができたし、特に何もしなくとも未知のダンジョンというのは冒険者にとって魅力的に写るらしいので、結構な人数がほいほい集まってくるんじゃないだろうか。

 

 事の顛末を伝えるにあたって、あの四人がトラップでやられたことにする嘘のくだりは僕も少々苦しい話だと思ったが、ギルドにとって一番重要なのは未知のダンジョンがあるという事実と、Dランクパーティーが僕を除いて全滅したという難易度なので、なんとか誤魔化せたんじゃないかと思う。

 僕と彼らが話をしていたのを目撃している冒険者もいるはずだしね。

 マップ含む情報料として、金貨(一枚およそ一万円相当)を数枚貰ったのだが、次街に出てこられるのがいつになることやら。

 

 翌日確認したところ、とりあえずはCランクでギルドから探索依頼を貼り出す事にしたようだ。

 僕としてFランクからでも大歓迎なのだが、初手でそこそこの獲物を狩ってしまったので、難易度が高くなってしまうのは致し方ないだろう。

 ともかく、Fランク冒険者である【俺】がCランクの依頼を受けて行ってしまったので、ギルド側の人員は【俺】がしばらくいなくなっていても気にしないだろう。

 多分失敗して死んだとでも思ってくれるんじゃないかな。


 これで下準備は終わった。

 あとは押し寄せてくるであろう冒険者をダンジョンで待ち構えるだけだ。


 彼らは、自分たちがおびき寄せられている事に気づかない。

 彼らは、ギルドで販売されているマップが間違っている事に気づかない。

 何より、彼らはこのダンジョンのマスターを人間がしていると気づかない。

 それも、剣士ガルムの皮を被った、異世界からきた異常な人間がしているとは特に。


 +++++++++


 最初は中堅冒険者を中心に中々の盛況ぶりだった。

 時にはEランクの冒険者も来ていたし、他の冒険者についてくる形でFランクの冒険者が来ることさえあった。

 E、Fランクの彼らを勇気ある冒険者と評すか身の程を知らない冒険者と評すかは悩みどころだが、結果を知っている僕としては後者を選択したい。

 E、Fランクに限らず、結果は同じなのだが。


 彼らは、未知のダンジョンへの夢と期待に溢れていた。

 皆、Dランク冒険者四人がやられたという話を聞いた程度では、怖気づかなかったようだ。

 僕だったら、間違いなく警戒して情報収集を優先するところだが……一番槍にでもなりたかったのだろう。


 ある射手は、一階層目の探索中に運悪く喉に矢を受けて絶命した。

 ある戦士は、ウォールゴーレムを調べようとしたときに発生した毒霧から逃れようとして、慌てて落とし穴に躓いてしまい、ギロチンを避けられずに首を撥ねられた。

 ある剣士は、仲間がトラップによって死んでしまったため、逃げようとしたところで僕と遭遇し、練習台にされた後殺された。

 ある魔法士は、暗がりの中に潜むシャドーに足を引っ張られ転んだ後、トラップによって二度と起き上がる事のないただの肉塊になった。


 ある神官は、首にリビングナイフを当てられながら拷問をされた。

 最初は爪を一枚ずつ引きはがされた。

 次に指を一本ずつ切り落とされた。

 最後に目を潰され、耳を削がれたその後、用済みとなった彼はあっけなく死んだ。

 

 結局、夢と期待に溢れる冒険者がダンジョンの外に帰ってくる事はなかった。

 

 当然のことだが、別に好きで拷問なんていう面倒なことをしているわけではない。

 ただ教会の事が詳しく知りたかったので、神官さんに聞いてみたのだが中々口を割らないので、手段が脅迫から拷問にグレードアップしただけである。

 人間という生き物は、痛みを与えると素直になるからね。


 そうして、数日ほどダンジョンの改造と防衛戦を繰り返していると、段々侵入者の人数が減ってきた。

 より正確に言うと、低ランクの冒険者が完全にこなくなり、中堅ランクもかなり減ってきた。

 そして、侵入者がダンジョンに対して感じるものが、夢と期待から畏怖と警戒に変わってきているようだった。

 

 それからさらに数日ほどたった時、かなり強そうな冒険者がやってきた。

 バッチを見る限り、Aランク一名にBランク三名。

 今までで一番強い相手だろう。


 だが、負ける気はさらさらない。

 今日までに大量のスキルを食らった。

 大量のソウルポイントを、自身とダンジョンの強化に注ぎ込んだ。

 侵入者が残した装備の類も使えるものは使った。

 準備は万端だ。


 今回も他の冒険者同様例外なく、魂を置いていってもらおうじゃないか。 

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