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第2話 異世界召喚はダンジョンの中で

 気がつくと、俺は灰色の石のレンガで出来た薄暗い横穴の中にいた。

 天井、壁、床を石レンガで覆われたこの空間は、今いる部屋と入り口らしき光が差し込んでくる場所を繋ぐ通路によって構成されている。

 通路の大きさは、人が三人横に並べる程度で長さは五十メートルほど。

 部屋は学校の教室と同じくらいの大きさだ。

 部屋を見渡すと、通路とは反対側の壁に、親指の爪ぐらいの大きさの紫色の宝石が埋まっているのを見つけた。


 取り敢えず、俺は自身の身体に異常がないか確かめる。

 俺の外見は、男子高校生としてはやや小柄な体躯に、日本人としては一般的な黒髪黒目だ。

 特徴を挙げるならば、やや細目である事ぐらいだろうか。


 ひとまず目で分かるような異常がない事を確認すると、頭の中に突然機械的な声が響いてきた。


『マスター、聞こえますか?』


 普通なら驚くところだろうが、神様による誘拐事件の後ではこんな事は些細な事である。

 しかしどう返事をしたものだろうか。

 普通に声を出せばいいのか?


『マスターの思考を読み取れるので考えるだけで問題ありません』


 あ、君も人の考えが読めるのね。

 思考でも会話をすることはできるだろうが、伝えたいことをはっきりさせるため、必要時以外は声を出して会話をすることにする。


「早速で悪いんだけど、君は何者なんだい?」


 開口一番、俺は疑問を口にした。


『はい、私はマスターのサポートをするために地球世界の神に生み出された者です。主にダンジョンマスターの仕事をサポートします』

「……え? ダンジョンマスターってどういうことだ?」

『マスターには人間の魂を集めて貰うために、この世界に元々あったシステムを利用してダンジョンの経営者、つまりはダンジョンマスターになってもらったのです』

「ということは、俺はダンジョンへの侵入者を殺して魂を集めなければならないってことか?」

『その通りです、マスター。ダンジョンコアを守るのが最優先ではありますが』


 あの神様やってる事めっちゃ邪神じゃん。

 考えを読まれると分かっていても、突っ込まずにはいられない。

 善良(自称)な市民をあっという間に人類の敵に変えてしまうとは。

 あの光の神様感はなんだったのか。


 俺は若干遠い目をしつつ、横穴を見渡す。

 本当にただの横穴だ。

 迷路も無ければトラップも無い。

 これを本当にダンジョンと呼んで良いのだろうか。

 

『ダンジョンコアに触れて、ステータスと言ってみてください。ダンジョンとマスターの情報が表示されます』


 そう言われて、俺は部屋の中の紫色の宝石を確認する。

 恐らくこれがダンジョンコアなのだろう。

 言われた通りコアに触れて「ステータス」と言ってみた。

 すると――


名も無きダンジョン

マスター:篠宮 努

属性:無

階層数:一

ソウルポイント:1000


 という情報が、宝石の前の空間に投影された。

 一本道のダンジョンの見取り図も表示されている。


「ソウルポイントというのは?」


 名前からして大体察しはつくが、確認のために質問をする。


『お察しの通り魂の量を数値化したものです。これを使って神に魂を渡す代わりに力を行使出来ます。取り敢えず、初期費用に一般人十人分のソウルポイントを入れておいてあります』


 やはりそうだったか。

 取り敢えずで一般人の魂が用意されているのがなんとも言えない。

 というか、質の高い魂を取り返せと言われたが普通の質の魂でもいいのか?


『普通の質の魂でも使い道はありますので大丈夫です』

「……」


 どんな使い道か気になるが、嫌な予感がするので聞くのはよしておこう。

 色々と思うところはあるが、ひとまず置いておいて自分の情報の確認をする。

 先ほど表示された情報の中の、自分の名前に意識を集中させてみると画面が切り替わり、以下の情報が映し出された。


名前:篠宮 努

種族:人間

性別:男性

年齢:十八

職業:ダンジョンマスター

魔力属性:無


 ふむふむ、こんな感じで表示されるのか。

 この中で見慣れない情報は……これだな、早速質問してみよう。


「魔力属性って一体何なんだ?」

『魔力属性とは、使える魔法の種類を決めるものです。火、水、地、風、無、闇、光属性があり、ダンジョンマスターはダンジョンに対応した属性になります。ちなみに、無属性だと身体強化や付与魔法などが主に使えます』


 ということは俺も魔法が使えるようになったのか。

 火属性とかで派手な魔法が使えないのは残念だが、使えないよりはマシだろう。

 しかしながら、異世界人である俺は当然魔法の使い方を知らない。

 と、一人で悩んでいると向こうから声をかけてきた。


『魔法の使い方を教えましょうか?』

「ん? そんなことできるのか?」

『はい、では実際に教えてみせま――』


 その瞬間、ダンジョンの入り口に影が差した。

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