表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

195/198

第176話 戦闘狂

 バルトロという男には、二つの才がありました。

 一つは、対人戦における闘争の才。

 一つは、戦いを楽しむ戦闘狂の才です。


 この闘争の才をもってして、バルトロは帝国の騎士養成学校で非常に優秀な成績を収めました。

 ただ、彼の戦闘狂の性はどうにも満たされません。

 バルトロが望んでいたのは命の保証された模擬戦ではなく、互いの命を狙う殺し合いだったのです。


 それこそが、彼にとっての真の戦いでした。


 帝国騎士団に新人として入団したバルトロは、そこで事件を起こします。

 とある騎士団員の一人と酒場にて言い合いになり、取っ組み合いの喧嘩を始めたのです。


 とある騎士団員は言いました。

 「我々の力は帝国のためにある。帝国の意思を達するために、我らは力を振るうのだ」と。


 バルトロは言いました。

 「俺は違う。命を賭けた真の戦いがしたいがために、ここにいるだけだ。帝国の意思なんぞどうでもいい。模擬戦ばかりでつまらない日々だ」と。


 きっかけなんて、こんな些細な事。

 酒が入っていたせいだとは皆分かっていましたが、規則でその騎士団員とバルトロは、罰として三日間地下牢で謹慎する事になりました。


 そんな彼は、地下牢を出た時に不思議と壁の一部に違和感を覚えます。

 理由は‥‥‥さて、なんでしょうか。

 戦いで鍛えられた並外れた観察眼が、些細な違和感を捉えたのかもしれません。


 それが気になったバルトロは、後日一人で地下牢を訪れました。

 軽い気持ちで、バルトロが強く叩くとその壁はがらがらと崩れ去り、向こう側に存在する通路があらわになります。


 バルトロはその先に進んでこの小部屋に辿り着き、興味本位で漆黒のダンジョンコアに触れました。


 ワタシはこの時点で、バルトロをダンジョンの番人としてここに縛り付ける事もできました。

 或いは、魂の収集人として魔物化させて帝都で暴れさせる事もできました。

 でも、そうはしませんでした。


 ワタシはこの世界の神に創造され、忘れ去られた最初のダンジョン。

 試作品であるが故に生物としては不完全で、最初であるが故に創造主の(さが)を強く引き継ぎました。

 

 人間を前にしたワタシの欲求はただ一つ。

 それに手を加え、その行く末を見守る事です。

 

 そうして、ワタシはバルトロを理性はそのままに吸血鬼へと変貌させ、ダンジョンマスターに任命しました。

 彼は何やら喚いていましたが、知った事ではありません。


 やがて喚くのをやめたバルトロは、ダンジョンマスターの力で入り口に魔力に反応して開く隠し扉を設置し、ワタシというダンジョンから出ていきました。

 

 それから、バルトロは順当に成長し、帝国各地の紛争に出向いてその力を示しました。

 その後、帝国騎士団長になって王国との戦争が始まってからは‥‥‥アナタには言うまでもありませんね。


 最後に一つ、バルトロの最期の言葉について補足させてください。

 彼は最期に「俺が所詮は勝ち戦しか楽しめない男だったのかもな?」なんて事を言いましたが、これは少し違うのです。


 これまで伝えてきたように、バルトロが望んでいたのは殺し合いです。

 ところが、アナタはこの殺し合いという賭けで、自分の命を極力BETしようとしませんでした。

 バルトロはきっと、戦う前から負けがほぼ確定していたあの戦いが、殺し合いではなく一方的な殺しのように思えて、楽しめなかったのでしょうね。


 ‥‥‥さて、バルトロの行く末を見届けられて、ワタシはもう満足です。

 強いて言うなら、アナタの行く末を見届けたかったですが、それは欲張りすぎというものでしょう。


 アナタの末路は、きっとワタシの蜑オ騾?荳サが見届けますから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読み頂き、本当にありがとうございます!
楽しんでいただけましたら

↑の☆☆☆☆☆評価欄にて

★★★★★で応援してくださると嬉しいです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ