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第171話 街の最期

「思いのほか楽しくなかったよ。誰かさんがあっという間に終わらせちまったからな。或いは、俺が所詮は勝ち戦しか楽しめない男だったのかもな?」


 僕の言葉に、隙を見せれば今にも襲い掛かってきそうな様子のバルトロはそう返事をする。

 

 辺りでは、依然としてゾンビたちと兵士たちの戦いが続いているが、今やそれはさして重要な事ではない。

 それよりも、僕はバルトロに聞きたい事があった。


「一つだけ最後に聞きます。あなたが主のダンジョンはどこです?」

「そんな事まで知ってるのか。だが、俺が無条件でそんな質問に答えるとでも思ってるのか?」

「まさか。ですがこちらにも考えがあります」


 僕がそう話してから少しして、さっきまで狙撃をしていた葵さんが近くにやって来る。

 その理由は、もはや言うまでもないだろう。


 僕はバルトロに対して[看破]を使用し、彼の持つスキル[箝口令]を封じたところで、再び口を開いた。


「もう一度聞きます。あなたのダンジョンの場所はどこです?」

「だから、答えねぇって言ってるだろ。‥‥‥いや待て。五十嵐葵とかいう名前だったか。お前、今俺の何を見た?」

「帝都の城塞。その内部にある地下牢にダンジョンへ繋がる隠し通路があるみたいです。にしても、この人ダンジョンマスターだったんですね」


 いつものように、バルトロの思考を読み取ってみせた葵さんは、そう言って僕に思考の内容を報告した。


 それを聞いて、もう自分が生かされる理由がない事を悟ったバルトロは、ボロボロの身体で無理やり立ち上がり、なんとか最期の反抗を試みる。

 だが、勝負は既に終わっているのだ。


 僕はバルトロの首筋に当てていたリビングナイフに指示を出し、彼の命を瞬時に刈り取った。


「これで本作戦の目的は達成しました。残っている兵士たちは粗方殲滅して、何人かはわざと逃がしましょう。事態を報告させて、この街という囮に帝国軍の注意を集中させます。続きの話はまた後に」


 僕がそう皆に指示を出してからは、試験運用の時と同じような兵士たちの殲滅が始まった。


 いくら精鋭といえども、所詮は常識の範疇に収まる一般人だ。

 ゾンビの物量に押された状態で、上位魔物や僕と葵さんのような存在に敵うはずもなく、彼らは次々に蹂躙されていく。

 

 しかし、バルトロの最後の指示が届いていたからか、彼らの意思はしっかりと統一されていた。

 有象無象の兵士たちは、誰もが死に物狂いで、先にある撤退路を切り開こうとしていた。


 その結果として、何人かの兵士はゾンビの大群や数々のトラップに、草原に潜むソイルワームさえもくぐり抜け。

 わざわざ僕たちが手抜きをするまでもなく、ロルムからの撤退を成功させたようだ。


 そうして、ようやく街に静寂が戻ってきたところで、僕と葵さんは町長の屋敷を訪れていた。

 

「兵士たちは逃がしたのに、町長たちは殺すんですね」

「ええ。生かしておく意義もありませんし、彼らは少し知りすぎています。僕たちが魔物と共に、綿密に計画を立てている事を知る人はいない方がいい」


 葵さんの質問に対する回答から分かる通り、僕は用済みとなった町長たちをここで殺すつもりだ。

 口約束など、最初から守るつもりはなかった。

 対等な関係でなければ、まともな取引は成り立たない。


 それから、僕と葵さんは無抵抗の屋敷の住人を一人残らず殺した。

 何回か叫び声を浴びせられたが、全て言い切る前に殺してしまったので、その内容は聞いていない。

 聞く必要性もないだろう。


 その後、僕は上位魔物たちに頭の中で指示を出した。


『レギナは蜘蛛たちも含めてダンジョンに撤退。レークスは三分の一程度ゾンビを残してダンジョンに撤退してください。囮としての外面を保つためにある程度ゾンビは残しますが、基本的にロルムの街はもう放棄します。次の行動予定については、またダンジョンに戻ってから話しましょう』


 かくして、このロルムの街を舞台に行われた作戦は完全に終了した。

 

 勇者の魂狩りの進捗も、もう間もなく終盤だ。

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