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第158話 第二段階

 目標人物の殺害を終え、三度(みたび)立ちはだかった兵士をなぎ倒した後に、僕が詰所から城壁の上に戻ると、そこでは詰所と同様の血生臭い惨劇が広がっていた。


 僕たちの襲撃によって、慌てて城壁上に駆けつけて来たと思わしき兵士は、今や葵さんに頭を射貫かれて絶命し。

 それを見てか、盾と鎧をしっかり装着して来た兵士も、結局はそれらの装備ごと身体を矢に貫かれてしまっている。


 とにかく、見晴らしのいい城壁の上に出ていた兵士は、全員例外なく葵さんに殺されていた。


「お疲れ様です、葵さん。見たところ、そちらは中々順調そうですね」

「はい。何せ、ここからはロルム全体が一望出来て敵が撃ち放題でしたから。努君も、その様子だと相当な人数の兵士を殺せたんじゃないですか?」

「そこそこですよ。まぁ、人数はともかく隊長格の人間は殺せたので、今はそれで満足しています」


 物見塔に再び登り、目下に広がるロルムの街並みを眺めながら、僕は葵さんとそう言葉を交わす。


 目に入るのは、突然の騒乱から逃げ出そうとする人々や、反対に自分たちの街を守ろうと武器を持つ人々。

 それから、どうしたらいいのか分からずに右往左往する人々による、小規模な混乱模様だ。

 

 流石に、大規模なパニック等は起きていなかったが、僕たち二人だけの仕事結果と考えれば、これでも十分すぎる成果だろう。

 第一段階の目的は、もはや十二分に果たされたと言っていい。


 という事で、僕は続く第二段階を開始するべく、付近で待機させていたレギナとレークスに指示を飛ばした。

 「予定通り、ロルムへの攻撃を開始せよ」と。


 それから程なくして、レギナとレークスを含む化け蜘蛛の集団が、こちらの方に向かって来るのが物見塔の上から確認出来た。

 その中でも、最初に動きを見せたのはレークスだ。


「距離は十分、死体の数も十二分と。我らが主は中々上手く事を運んでくれたようだ。だからという訳でもないが、我も作戦通り、持てる力を遺憾なく発揮して見せよう!」


 ロルムの城壁まで、およそ百メートルの位置に接近したところで、レークスは声高にそう宣言をしつつ、翡翠色の宝石が嵌った例の杖を高々と掲げる。

 そして、彼は何やら少しの間その杖に意識を集中させた後に、杖の先を思い切り地面に突き刺して、再びその骸骨頭の口を開いた。


「これが、死者たちによる祭典の幕開けの合図だ。黄泉帰りの波動(ネクロマンスウェイブ)!」

 

 刹那、地面に突き刺さった杖の先から、黒い瘴気が波のように周囲に広がる。

 城壁にぶつかってもそれは止まらず、重力に逆らって城壁をつたうように登って行く。


 そうして、黒い瘴気の波は城壁の上までたどり着き、遂にはその向こう側にあるロルムの市街地にまで侵入し始めた。

 とは言っても、実のところこの瘴気の波は、ロルム内にいる大多数の生きた人間には何の影響も及ぼさない。

 本当に影響は受けるのは、僕たちに殺された兵士の死体たちだ。

 

 黒い瘴気が死体に接触すると、それはあっという間に、レークスの思うがままに動くゾンビと化した。

 あの[黄泉帰りの波動(ネクロマンスウェイブ)]という技は、要するに周囲広範囲の死体をアンデット化させて、自身の配下とさせてしまう技だったのだ。

 

 ロルムにいる人々にとっては最悪な事に、これによって城壁の上で葵さんに殺された兵士たちは、一人残らずゾンビと化した。

 つまり、彼らは外敵から街を守ってくれるはずだった城壁の兵士たちに、逆に包囲されてしまったと言えるだろう。

 僕にとっては順風満帆、レークスたちも含めて完璧な状況だ。

 

 この勢いをそのままに、ロルムの制圧を作戦通り遂行してしまおう。

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