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第156話 不死の王

 あの後、僕たちは作戦の細かい部分を話し合おうとしたのだが、そこである事に気が付いた。

 当然と言えば当然なのだが、まだ召喚をしていないリッチにも作戦の説明をしないといけないため、このままだと二度手間になってしまうのだ。

 という訳で、僕はまずリッチの召喚から先に済ませてしまう事にする。

 

 リッチの召喚に必要なソウルポイントは200000ポイントと。

 これまでの魔物とは比べ物にならないほど高いが、それでも僕の手元に57100ポイントは残る。

 ソウルポイントは余っていたし、どんな結果になるにせよ、持て余しておくよりかは遥かにマシだろう。


 そんな考えの下、僕によって召喚されたリッチという名の魔物は、不死の王という別名にふさわしい姿をしていた。


 禍々しいの瘴気を放つ骸骨の身体に、金色の刺繍が施された濃紫色のローブを堂々と羽織り。

 その右手には、翡翠色の宝石がはめられた杖がしっかりと握られている。

 体格こそ普通の人間と大差ないものの、纏う雰囲気は王と呼ばれるのにふさわしい荘厳さだ。


 そんなこんなで召喚されたリッチは、周囲を見渡して僕を見つけると、その舌の無い頭でどうやってかこちらに声をかけた。

 

「初めまして、と言うべきかな? 我が新たな主よ。早速で申し訳ないのだが、まずは我に名を授けてもらえるだろうか。如何せん、名がないのは色々と不便なのでな」


 レギナを召喚した時とは違い、いきなりリッチに名前を要求されて、僕は思わず少したじろぐ。

 しかし、このリッチの名前は事前に決めていたので、それについてはすぐに答えられた。


「レークス。それが、僕の考えていたあなたの名前です。不満でしたら別のを考えますが、どうします?」

「それで構わん。別にこだわりは無い」

「了解です。では、改めて全員で自己紹介をしましょうか。これから戦場で背中を任せる事になるんですから、お互いの事はよく知っておいた方がいいでしょう」


 それから、僕たちはレークス、レギナ、葵さん、僕の計四名で軽く自己紹介を済ませると、予定通り作戦の打ち合わせを始めた。


 作戦を実行する時間の目安、ロルムに攻め込む際の魔物たちの配置、ロルムに攻め込んでから優先して襲撃する目標など。

 こういった細かい事柄を、僕たちは事前にどんどん決めていく。

 実際には臨機応変に動かなければならない場面もあるだろうが、作戦をスムーズに進めるための重要な作業だ。


 そうして、打ち合わせを終えた僕たちは、作戦の開始時間を一週間後の夕方に決定した。

 

 これは、ロルムを制圧した後にかかる待ち伏せの準備時間と、帝国軍の進軍スピードを考慮して決定された開始時間だ。

 それで、僕たちは一週間後まで基本的に自由行動となるため、僕は皆に一つ提案をした。


「せっかく時間もありますし、お互いの能力の確認も兼ねて戦闘訓練でもしてきたらどうです? 生憎、僕は少し用事があるので行けませんが、自己紹介の延長としても丁度良さそうですし」

「ボクは賛成です! さっきまで森の中でずっと縮こまってたので、体が硬くなってたんですよ。作戦会議も疲れましたし、体をほぐすのにも丁度いいです」


 僕の提案に対し、真っ先にレギナはそう声を上げた。

 すると、それに続くように他の二人も口を開く。


「我も賛成だ。召喚されたばかりゆえ、自分の体がどこまで動くか確かめなければ」

「それじゃあ、レイヴ洞窟の適当な場所で戦闘訓練をしましょうか。皆がそう言うなら、私も特に反対する理由はありません。努君も、早く用事を終わらせて下さいね?」


 葵さんはそう言うと、レークスとレギナを連れてテレポートゲートに入って行った。

 恐らくは、話した通りレイヴ洞窟へとテレポートしたのだろう。


 その様子を見届けると、僕はあの声だけの存在を頭の中で呼びよせた。


『お呼びですか? マスターの方から私を呼ぶとは、珍しいですが一体何の用事でしょうか』

「頼み事です」

『頼み事‥‥‥マスターは有能なので、ある程度融通は効かせてあげられると思いますが、とにかくその内容次第ですね。どういった頼み事です?』


 頭の中に響く機械的な声がそう聞くので、僕はその内容を素直に話した。

 結果として、声は僕の頼み事を承諾した。


 頼み事の内容は、葵さんには秘密にしておく予定だ。

 そのため、思考を読まれても問題無いように、この頼み事に関する話はもう考えない。

 絶対に、考えない。

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[気になる点] 「考えないように考える」って現象は努に関してはないのでしょうか?
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