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第155話 方針転換

 清水さんとバルトロに帝国本陣から締め出され、散々追いかけ回された末に逃げ込んだ南森林にて。

 僕はこれからどうするべきか、休憩をしつつ考え込んでいた。


 元々の作戦では、戦争のどさくさに紛れて帝国の勇者を殺す予定だったが、あんな化け物二人組がいるとなると話は別だ。

 

 何故だかは知らないが、僕は清水さんから明確に殺意を向けられているし。

 顔を知られてしまっている以上、顔面を隠さない変装が通用しないとあっては、いくら戦争でもどさくさに紛れるのは相当難しくなる。

 そもそも、通常の勇者より強い人間二人と不意に遭遇する可能性があるとなっては、予定していた作戦は中止した方が賢明だろう。

 

 ‥‥‥という事で、僕はレギナと葵さんに事情を話した後に、皆を引き連れてザルカム坑道まで撤退した。

 今までの準備を水の泡にするのは残念だったが、妥協をして命を落とすよりかは遥かにマシだ。

 強者との殺し合いは、徹底した準備の下でしかやりたくない。


「それで、私たちはこれからどうするんです? 一応、もう次の作戦は考え始めてたみたいですけど」

「‥‥‥ええ。確かに、既に考えついている作戦案が一つあります」


 ザルカム坑道の隠し部屋にて、僕は葵さんの質問にそう答えると、いつものようにその新しい作戦の概要を説明し始めた。


 次の作戦は、最初のダンジョンの近くにあるロルムという街が、帝国の国境と近い事を利用したいつもの待ち伏せ作戦だ。

 大まかに区切ると、この作戦は四つの段階に分けられる。


 まず、一段階目では僕と葵さんがロルムの城壁内に潜入し、城壁の上にいる見張りの兵士などを殺害。

 あわよくば隊長クラスの人間まで殺害し、ロルム内部の防衛計画に混乱をもたらす。


 次に、二段階目では混乱に乗じて部下の魔物たちに攻勢を仕掛けてもらい、そのままの勢いでロルムを制圧。

 町長などの偉い人を除いて全ての住民を虐殺し、街の支配を確固たるものにする。

 

 そして、三段階目では最終目的である待ち伏せの準備を行う。

 街中に蜘蛛の巣を張り巡らし、僕たちでも作れるような初歩的な罠を設置して、敵を迎え入れる準備をする。


 最後に、四段階目では王国軍を破ってやって来た帝国軍を、殺さずに残しておいた偉い人によって城壁内部に招き入れ。

 地形の有利を生かして彼らを殲滅すれば、本作戦は終了だ。


 前述したように、帝国軍が王国軍を破ってロルムまで攻めてこなければ成立しない作戦だが、勇者のいない王国軍の敗北は率直に言って時間の問題だろう。

 勇者だけでなく、王国は騎士団長に大司教も失っているし、帝国軍の進撃が止まる場面はあまり想像出来ない。


 ――と、ここまで話をしたところで、葵さんと一緒に説明を聞いていたレギナが声を上げた。


「主様。作戦の概要は分かったんですけど、戦力がちょっと足りなくないですか? 街の占領はともかく、その後に来た帝国軍を相手にするのは、例の二人組の事も考えると正直厳しいと思うんですけど‥‥‥」


 確かに、現状だとレギナの言う事はもっともだ。

 やって来る帝国軍の人数は未知数だし、あの二人の迎撃は僕たちが担当すると想定すれば、帝国兵はレギナと蜘蛛たちだけで相手しなければならない事になる。

 いくら上位魔物とはいえ、一軍隊を全て相手にするのは不可能に近い。

 

 しかし、僕には取っておいた財産がある。


「もちろん、戦力不足については理解しています。そこで、今まで使わずに残しておいたソウルポイントの出番ですよ。現在は257100ポイントもありますから、これを使って魔王クラスの魔物を召喚するつもりです」

「なるほど、最初からそういう腹積もりだったんですか。とすると‥‥‥その魔王クラスの魔物は、一体どいつを選ぶんです?」


 レギナにそう聞かれ、僕は質問に答えるためにもにダンジョンの改造リストを開くと、魔物の欄から目的の魔物を探し始めた。

 そうして、間もなく見つかった魔物の名前を読み上げる。


「正式名称はリッチ、別名は不死の王。僕が今回召喚しようとしているのは、正真正銘、アンデットの王として君臨する魔物ですよ」

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