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幕間 清水結希乃という女の過去③

 結局、あの後私たちは様子を見にきた吉川さんの友達に発見され、それから慌ててやってきた教員によって事情聴取をされる運びとなりました。

 

 今回の事件は、一概にどちらが悪かったとは言えません。

 私に向かって火種をばら撒いた吉川さんも悪いですし、先に手を出してしまった私も十分悪いです。

 そんな訳で、その場は最終的に喧嘩両成敗という事になり、お互いに謝罪をして解散しました。


 自分の激情を言葉にして吐き出すというのは、色々な意味でとても疲れる行為です。

 率直に言って、あんなのはもう二度とご免でした。

 ですから、私は自分に二つの課題を課す事にします。


 一つ目の課題は、恋を知ろうとするのを諦める事です。

 これまで私は、無理だと半ば分かっていながら恋を知ろうと足掻いていましたが、今回の事件でようやく踏ん切りがついたのです。

 どうやっても無理な事は、スパッと諦めた方が健全でしょう。


 二つ目の課題は、現在の孤立状態をなんとかして改善する事です。

 今回の事件も元を辿れば、私の吉川さんからの好感度が低かったのが原因の一つでした。

 幸いなことに、やはり私の容姿はいいらしいので、やりすぎないように愛想を振りまいたり、忌避していた恋バナにも無理矢理ついて行けばなんとかなるでしょう。

 

 ‥‥‥といった風に、当時の私は多少頭がおかしくなっていたからか、どちらの課題に対してもひどく楽観的でした。

 もちろん、現実はそんなに甘くはなく、これらの課題はそう簡単には達成されません。

 しかし、私はめげずに努力を続け、およそ二年間もの時間を費やして、高校生になった頃にはすっかり課題を達成していました。


 高校生活は小学生以来の、本当に平穏な日々でした。

 少し好感度を上げすぎて、女神だなんて大層な異名で呼ばれてしまう事もありましたが、そんなのは中学時代のあれこれと比べれば些細な事です。


 私はこんな平穏な日々が、ずっと続くものだと思っていました。

 恋を諦めた清水結希乃という人間は、外見以外はどこまでも普通の人間だったから。

 普通の人々と同じように、平穏で平凡な日々が送れると、そう思っていたのです。

 私たちが、異世界転移なるものに巻き込まれたあの日までは。


 グランツェル王国に召喚されてからの私たちの日常は、平穏からは遠くかけ離れたものでした。

 

 帝国兵を殺すために、ほぼ毎日行われる戦闘訓練と座学。

 それだけならまだしも、何者かによってクラスメイトたちが一人、また一人と殺されていく日々。

 とてもじゃありませんが、普通の高校生が平常心を保てるような状況ではありません。


 そんな中で、恋人である五十嵐さんを攫われた篠宮君が提案したのが、二回目のドワルド遠征です。


 本音では、誰も神岡君が殺された場所には、二度と行きたくなかったと思います。

 しかし、最終的には全員が篠宮君の熱烈な説得と、仲間を助けるという大義名分のもとに屈しました。

 

 私たちは流されるままに、ドワルドのレイヴ洞窟へと向かったのです。

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