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第151話 荒野駆け

 [鑑定]の結果は想定外だったが、生憎今は動揺している場合ではない。

 清水さんにせよ謎の男にせよ、能力が分からないのなら戦うのはなおさら危険だ。

 決断した通り、さっさとここから逃げ出さなければ。


 現在地が砦の中央広場という事で、第一にやるべきなのは城壁の向こう側への脱出だ。

 一般人なら城門を通らなければならないところだが、今や僕たちはスキル山盛りの超人である。

 わざわざ帝国兵が固めている城門を通らなくとも、城壁の向こう側へ行く方法はあった。

 小難しい事はせずに、直接城壁を飛び越えてしまえばよいのだ。


 そんな考えの基、僕は地魔法によって生成した岩石を、葵さんは光魔法で生成した《障壁》を足場に使い、跳躍を繰り返して南側の城壁をどんどん登っていく。

 当然、こんな事をしていれば注目されるのだが、僕たちは帝国兵の装備をしているため、敵味方の判断がつかない砦の帝国兵は攻撃をしてこない。

 

 しかし、僕たちの存在に気づいていたあの謎の男は、その逃走劇を黙って見逃がすほど甘い人間ではなかった。


「貴様ら、何をボケっとしている? 同じ装備に身を包んでいようが、脱走兵は死に値する重罪人だぞ。魔法でも弓矢でも何でもいい。今すぐそこの二人組を始末しろ!」


 黒い鎧を着た謎の男は、そう言って砦の兵士たちに命令をする。

 その結果、彼らは慌てて命令に従い、城壁を登らんとする僕たちに魔法や弓矢で攻撃を加え始めた。

 僕からすると、回避の間に合う散発的で精度の甘い攻撃ばかりではあるが、どうしても意識は割かないといけないので鬱陶しい。


 また、それと同時に帝国兵たちがあの謎の男についての情報を口にしたため、盗み聞きであいつの正体もようやく判明した。

 

 名前はバルトロ・クルーガー、役職は帝国騎士団団長、二つ名は血塗れの黒狼。

 だいぶ前に情報を聞き出した帝国の諜報員が、僕に勝てるかもしれないと考えていた男だ

 まごうことなき強者であり、とてもじゃないが真っ向勝負をやりたくなる相手ではない。

 

 そうして、僕たちは帝国兵の攻撃をかわしながらもなんとか城壁を登り切り、その向こう側へと飛び降りた。


 その後は、元々城壁の上にいた弓兵から矢を射られたものの、砦の中で浴びた攻撃に比べたら些細なものだ。

 それで僕たちは、埋魂の荒野の中を南森林に向けて難なく駆けて行く。


 しかし間もなく、僕たちがたった今脱出した帝国の砦の門が開き、中から人間を乗せた軍馬が二頭飛び出してきた。

 目を凝らして見てみれば、その馬の上に乗っているのはあのバルトロ・クルーガーと清水さんだ。

 二人で僕たちの追撃に来るとは、一体どういう関係性なのやら。


 ともかく、馬で追われては流石に追いつかれてしまう。

 その為、僕は葵さんと協力して、まずは馬の方から確実に始末する事にした。


「一旦立ち止まってもいいですから、葵さんはあの馬に矢を放って下さい。念のため、僕もリビングナイフで援護します。あいつらの能力は一切不明ですから、いくら距離が離れていようが油断禁物ですよ!」

「了解です。確かに、ほんっと油断ならない相手みたいですね。楽は出来そうにありません」


 そうして、僕と葵さんは会話通りにリビングナイフと矢を放つ。

 結果、その攻撃は見事に命中したのだが、驚くべき事にバルトロと清水さんはそれでも止まらず、死にゆく馬から飛び降りて僕たちへの追撃を続行し始めた。

 

 もちろん、僕たちもそれを見て逃走を再開したのだが、向こうも身体強化系のスキルを持っているようで、一向に逃げ切れる気配がない。

 それどころか、段々と距離を縮められる始末だ。

 このままでは、南森林に到達する前にあいつらに追いつかれてしまう。


 やむを得ない。

 どうやら、一回刃を交える必要がありまそうだ。

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