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第143話 ノウハウ

「葵さん、もう集中しなくても大丈夫ですよ。これで、このダンジョンの制圧は終了です」

「あれ、もうですか? 前回に比べて、随分と短い時間で済みましたね」


 今いる部屋、もといザルカム坑道の隠し部屋の出入り口を見張っていた葵さんは、僕の声を聞いて振り返りそう返事をする。


 今回、ザルカム坑道の制圧がレイヴ洞窟の時と比べて短い時間で済んだのは、ひとえに前回の経験のおかげだろう。

 一度コツを掴んでしまえば、精神的な戦いだろうがなんだろうが容易いものだ。


「取り敢えず、帝国で異変は起こしたくないので、僕はさっさと四階層目の改造を始めるとします。クリスタルゴーレムの代わりに、冒険者たちを始末してくれる罠を用意しないといけませんから」


 そう言って、僕はダンジョンコアに再び触れると、宣言通り四階層目の改造を始める。

 とはいえ、特に新しい罠を考える必要性もないので、その改造内容は今まで使ってきた罠の流用だ。


 まず、四階層目の地形は全て迷路に変えてしまい、その天井と床には落とし穴やギロチンなどの罠を大量に設置する。

 それから、例に漏れず薄光りしていたダンジョンの壁はタイルで全て覆ってしまい、迷路内に完全な暗闇を作り上げる。

 仕上げに、以前にも召喚したシャドウという暗闇に溶け込める魔物を三十匹ほど召喚し、この暗闇の迷路内に解き放てば、四階層目の改造は終了だ。


 例えそれなりに腕の立つ冒険者が来たとしても、これだけの準備をしておけば問題はないだろう。

 ただでさえ狭い迷路で暗闇の中、罠と魔物を捌き切れる人間はそういないはずだ。

 少なくとも、あのクリスタルゴーレムだけの時よりかは厄介な階層に仕上げた自信はある。


 余談だが、ついででここの隠し部屋にもテレポートゲートを設置しておいた。

 クリスタルゴーレムの死体は、実はそれでテレポートして来たレギナたちによって既に回収済みだ。

 なんでも、生まれてきた子蜘蛛たちの餌にするらしい。


「努君、作業はもう終わりましたか?」

「ええ、二回も待たせてすみませんね。これで、ザルカム坑道の改造はひとまず終了ですよ」


 僕は葵さんにそう返事をしつつ、ソウルポイントの消費量を確認する。

 結果としては、今回の改造で消費したソウルポイントが合計16900ポイント。

 残りのソウルポイントは240200ポイントだった。

 

 この分なら、まだまだソウルポイントの残量は余裕そうだ。


「さて、これから一体どうしましょうか。日が出ていたら、貿易都市に戻って情報収集の続きが出来るんですが、何せ今は深夜ですからね」

「それなら、今日は大人しくもう寝ませんか? 昼夜逆転も治したいですし」

「‥‥‥では、そうしましょうか。寝るまでに相当苦戦しそうですが」


 そうやって、僕は葵さんの提案を受け入れると、テレポートを繰り返して最初のダンジョンからスライムを、レイヴ洞窟から毛布を持ってくる。

 そして、各々でスライムを敷き布団として設置すると、僕たちは毛布を掛け布団として使い体を横にした。


 ‥‥‥案の定、なかなか眠気は訪れない。

 だがまぁ、こうしていればいずれは眠りにつけるだろう。


 僕は明日の予定をぼんやりと思い浮かべながら、そっと目を瞑った。

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