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第140話 魔石

 あれからほどなくして、僕たちはなんとか日が沈む直前に、ザルカム坑道の入り口に到着した。

 

 そのぱっと見の外観は、森の中の崖に開いた何の変哲もない洞穴だ。

 レイヴ洞窟とは違い、柵のような人工物も一切設置されていない。


「私から見てみても、特に罠だとか異常なところはなさそうです。努君の情報通り、三階層目までは何もないと思いますよ?」

「そうだと、こちらとしても有難いんですけどね。取り敢えず、それならさっさと侵入を始めましょうか」


 そう言って、僕と葵さんはザルカム坑道への侵入を開始した。

 

 入口付近はまだ普通の洞窟だったのだが、少し奥へ進むと、魔石が水晶のように生えている光景が段々と目に入ってくるようになる。

 そして、一階層目が間もなく終わろうかという頃には、魔石に擬態した紫色のスライムや、壁に擬態したロックゴーレムが出現したりした。


 ‥‥‥しかし、彼らは全員成す術もなく葵さんに見つかって、遠距離から弓矢であっという間に始末されてしまったのだが。


「手ごたえは無いですけど、これはこれで的当て練習になるのでいいですね」

「それは良かったです」


 曖昧に頷きながら、僕はそう返事をする。

 実際、魔物に対して矢を放っては回収し、放っては回収しを繰り返す葵さんはそこそこ楽しそうだ。

 こんな調子なので、前衛の僕には全く仕事が回ってこない。

 

 一階層目から先に進んでも、魔石の生えている量は多少増えたが、魔物のラインナップは何も変わらず。

 結果として、三階層目の終わりまでの戦闘は、全て葵さんだけで事足りてしまった。

 

「さてと、問題はここから先ですよ。恐らくは冒険者たちを全滅させた、未知の四階層目です」

「私の目が正しければ、階段付近にはレイヴ洞窟の時みたいな罠はありません。ひとまず、そこまでは安全だと思います。先に何があるのか確かめるには、進むしかありませんけどね」


 葵さんは四階層目へと続く階段を見ながら、僕にそう言葉を返した。


 階段の向こう側には、見慣れた洞窟の床が覗くばかりだ。

 葵さんの言う通り、先にあるものを確かめるには進むしかないのだろう。


 選択の余地がない僕たちは、一歩ずつその階段を降りていく。

 そうして降りた先にあったのは、まるでレイヴ洞窟の十階層目のような大広間だった。

 しかし、それとは明らかに異なる点が一つある。


 僕の背丈ほどもあろうかという巨大な魔石が、広間の奥に鎮座していたのだ。

 

「努君、あれは‥‥‥」

「ええ、言われなくとも流石に分かります。あの大きさの魔石に、どれだけの価値があるのかは知りませんが、明らかに冒険者を釣るための罠ですね」


 欲に目が眩んだ冒険者たちには通用したのかもしれないが、金稼ぎが目的ではない僕たちにとっては、あんな物はただの怪しい物体だ。

 それで、僕はその正体を確かめるべく、巨大な魔石に向かって[鑑定]を使用してみる。


名前:西村(にしむら)騎士(ないと)

種族:クリスタルゴーレム

性別:無

年齢:三百十二

職業:ダンジョンマスター

魔力属性:地

スキル:勇者LVMAX、言語理解LVMAX、魔力霧散(まりょくむさん)LVMAX、罪悪の鎖LVMAX、スラッシュLV2、剣撃LV1

 

魔力霧散LVMAX:自身の周囲の空間に存在する魔力を霧散させます(任意発動)

罪悪の鎖LVMAX:劣等感による罪悪を以て之を縛る(常時発動)


 ‥‥‥うん、まぁ、何と言うべきか。

 薄々、元勇者がここにいるかもしれないとは思っていたが、まさかこの陳腐な罠自体がそれだとは。

 

 その後、僕は怪訝そうにしている葵さんに向き直ると、その[鑑定]結果を手短に伝えた。

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