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第137話 空の旅

 霧の中に突っ込んで行くと、当然の事ではあるが視界が一面の霧に包まれる。

 そして不思議な事に、霧の中で数度まばたきをしていると、僕はいつの間にやら最初のダンジョンの管理室に一瞬でテレポートしてきていた。


 どうやら、テレポートゲートは問題なく作動してくれたらしい。

 間もなく、葵さんも僕のそばに一瞬で現れた。


「おお、本当に何の前触れもなくテレポートしましたね。流石は神の創造物といったところでしょうか」

「忌々しいですが、あの神様は明らかに僕たちより上位の存在ですから。その技術力も、もはや疑いようがありませんね」


 突然のテレポートに少し驚く葵さんに対して、既に何回かテレポートをした事がある僕は、冷静にそう言葉を返す。

 そして、そのまま僕たちは特に中身のない会話をしながらも、グリフォンのいるスペースへと向かった。


「これが本物のグリフォンですか‥‥‥話には聞いてましたけど、本当に大きいですね。人を乗せて飛べるのも納得です」


 葵さんは専用のスペースに佇むグリフォンを見上げながら、そう驚嘆の声を上げる。

 魔物としての格はアラクネのレギナの方が上なのだが、大きさや威厳はグリフォンの方が上なので、葵さんとしてはこれまた少し衝撃らしい。


「それでは、僕が最初にグリフォンに乗るので、葵さんはその次に僕の後ろへ乗ってください。鞍が二人用ではないので、狭くなるとは思いますが」

「了解です。それにしても、今からこれに乗って空を飛ぶだなんて、ちょっと実感が湧かないですね」


 そんな風に会話をした後、僕と葵さんは話した通り順番にグリフォンの鞍にまたがる。

 それから、僕は葵さんがしっかり鞍にしがみついた事を確認すると、グリフォンに帝国へ向かって飛び立つように指示を出した。

 

 ダンジョンの外は、予定通り暗闇に包まれた真夜中だ。

 王国から人間を乗せた魔物が飛び立った、なんていう情報を広めないために、今回もこの時間帯に移動することにしている。

 

 幸いな事に、王都にいた時この世界の地図は座学で丸暗記しているので、暗くて何も見えなかろうがここから帝国までの行程にはさほど問題はない。

 空に障害物がないのは、地球もこの世界も同様なのだ。


 そうして、僕たちは必死にグリフォンとその鞍にしがみつきながらも、およそ半日もの間空を飛び続けて、夜明けの少し前に帝国の領地に到着した。

 それからは、グリフォンが人が見つからないよう、まだ辺りが暗い内にとある森の中に降り立つ。

 これにて、今回の空の旅はおしまいだ。


「それで、グリフォンに乗ってみた感想はいかがでしたか?」

「とにかく疲れました。精神的にも、体力的にも。分かってましたけど、夜中のせいで景色も何も見えませんし、気を抜くと振り落とされそうになりますし、散々ですよ。出来れば、二度と乗りたくないですね」


 葵さんは僕たちを降ろして、元のダンジョンに帰っていくグリフォンを虚ろな目で見ながら、明らかに疲れた声でそう言った。

 

 前にも言った通り、これは異世界旅行ではなく敵情視察なので、何かと苦労が多くなってしまうのは致し方ない。

 今回の場合も、グリフォンの速度を落とせばいくらか楽にはなったのだろうが、夜の間に移動を終わらせたい都合上そうするわけにはいかなかった。


「まぁ、体力的に疲れたというのには僕も同感です。予定通り、さっさと近くの街に行って、宿でもとって休む事にしましょう。あと少しの辛抱ですよ」


 僕は葵さんにそう言うと、暗記した頭の中の地図を頼りに、森の中を先導し始めた。

 

 次の目的地は、王国との国境の近くにある帝国の都。

 交易都市ガルムンドである。

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