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第136話 遠征準備

「さて、葵さん。これから僕たちは、いよいよあの帝国へと向かうわけですが‥‥‥そちらはもう、準備は出来ましたかね? 何せ、僕たちだけで遠征に向かうのはこれが初めてですので、何も抜かりがなければいいんですが」

「大丈夫です。ついさっきも、ちゃんと持ち物を二回確認しましたし、忘れ物はありませんよ。矢筒も、食料も、その他もろもろの小道具も、背嚢の中にしっかり入ってます。そう言う努君こそ、装備の準備はもう大丈夫なんですか?」


 僕が意識を取り戻した時よりも、幾分か戦利品の片付いたレイヴ洞窟の隠し部屋にて。

 葵さんにそう聞かれて、僕はこれまでの準備を頭の中で振り返る。

 僕は彼女にスキルを譲渡した後も、時間潰しを兼ねて色々な事をしていた。


 ロルムに出向いて、自分の服や外套と食料を買ったり。

 ダンジョンの新しい機能である、テレポートゲートをこの隠し部屋に設置したり。

 葵さんと、次の予定について詳しく話したり。


 そうして、半日ほど時間を潰した頃には、魔物たちに頼んでおいた装備の作り直しは終わっていた。

 それらの装備を回収して、リビングナイフとリビングソードたちを召喚し直せば、僕の装備はすっかり元通りだ。

 

 黒いフード付きの外套を身に纏い、アクアマリンスライムが入ったウェストポーチを装着して、地味な背嚢を背負ったいつもの装備。

 例の如く、魔鉄で作られた二本のリビングソードは腰に差され、百本のリビングナイフはベルトと外套の裏にきちんと収まっている。


 最終的に、スキルの譲渡と魔物の召喚費を合わせて、消費したソウルポイントは計40300ポイント。

 残ったソウルポイントは257100ポイントだった。


 ‥‥‥と、これまでの振り返りをしてみたわけだが、僕はここである事を思い出す。


「そういえば、大司教から奪ったあの便利な魔道具を、所持品に加えるのをすっかり忘れていました。ちょっと待ってて下さい。今すぐ持ってきます」


 そう言うと、僕は戦利品の中から黒曜の通信球を二つ持ってきて、その内の片方を葵さんに手渡す。


「大司教から奪ったって事は‥‥‥もしかして、これがあの通信魔道具ですか?」

「ええ、そうです。少量でも魔力を流し込めば、もう片方の球に自分の声を届けられるという優れものですよ。これを使えば、お互い連絡手段に困る事ももうないでしょう」


 僕はそう言いながら、手元に残った黒曜の通信球を背嚢の中に放り込むと、予め設置しておいたテレポートゲートの前へと向かった。

 

 テレポートゲートの外観は、一見するとただの石製の大扉だ。

 しかし、ひとたびその扉を開けば、向こう側には先が何も見えないほどに濃い、謎の白い霧が立ち込めている。

 何でもこのテレポートゲートは、使用者がこの霧に突っ込む事によって作動するらしい。


 今回、僕と葵さんはこれを使って最初のダンジョンにテレポートし、そこからグリフォンに乗って帝国の領土へと向かう予定だ。


「それでは、持ち物の確認も終えた事ですし、そろそろ出発するとしますかね。楽しい異世界旅行ではなく、敵情視察だというのが本当に残念ですが」

「そうですねぇ。食事は美味しくないですけど、日本人の私たちからすると、そこら中が珍しい物ばかりですからね。のんびり楽しめないのが口惜しいです」


 僕と葵さんは、そんな風にたわいもない会話をしながら歩みを進める。

 そして、そのまま予定通りに、テレポートゲートの霧の中へと突っ込んで行くのだった。

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