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第115話 定例会議

「――と、いうのが今の皆の精神状態ですね。私たちの暗殺によって、大部分の人には精神的に深い傷跡を残せていると思います。ただ‥‥‥」

「一部、友人の死を克服する人も出てきた、という事ですか。はぁ、面倒ですねぇ。いずれはそういう人も出てくるだろうとは予想していましたが」


 王城の食堂の、特に言う事もない適当な場所。

 そこで、あのレイヴ洞窟があったドワルドから帰ってきて三日後の僕と葵さんは、いつものように皆の様子の観察と話し合いをしていた。

 

 今回の話し合いの目的はずばり、次にどのような作戦を行うかについてだ。

 三日間、葵さんの訓練の時間の確保のためにも様子見をしていたが、そろそろ頃合いだろう。

 悠長に構えてばかりいられない不穏な情報も、僕の耳に入ってきている。

 

 なんでも、度重なる暗殺とその調査により、流石に騎士団も内部の人間に疑いを持ち始めたらしい。

 実際、今までされなかった勇者に対する一対一の事情聴取が行われたりと、身内に対する捜査は強化されていた。


 僕としては、これで勇者同士が疑心暗鬼になってくれれば万々歳だったのだが、残念ながらそう都合よく事は運ばない。

 仲間を疑う事を知らない彼らは、ここまで暗殺が発生しているのにも関わらず自分たちの中に犯人が紛れているなどとは夢にも思っていない様子だ。


 まぁ、平和な日本社会で生まれ育った人間が、共に長い時間を過ごしたクラスメイトを連続で殺せるわけがないという理論はあながち間違いではないと思うが‥‥‥流石に、少しは例外の可能性を考えて欲しいものである。


 ‥‥‥しかし、ここまで現在の状況を思い返してきたわけだが、肝心の作戦は一体どうしたものか。

 予定通りに行くならば、次に行うのは清水さんか九重先生かウォルス団長の殺害になるが、先述した通り僕たちはもう悠長にはしていられない。

 今までのように一人ずつ殺していくのは、少し時間がかかりすぎる。


 となると、少し早いがやはり前々から考えていたあの作戦を行うしかないか。

 この方法なら、葵さんの言っていた精神状態の回復した人も利用できるだろうし。


「葵さん、何か顔を隠せる装備を持っていたりしませんかね? マスクでも、仮面でも、役割さえ果たせれば何でもいいんですが」

「ん~、そういう物は今は持ってないですね。努君にしては珍しく話が唐突ですけど、今度は何をするつもりなんです?」

「勇者たちを一網打尽にするんですよ。この王国での演劇も、もう終わりにしようというわけです」


 そう前置きをしてから、僕はその勇者たちを一網打尽にする作戦について具体的に説明し始めた。


 はっきり言って、この作戦は今まで行ってきたどの作戦よりも難しい。

 準備しなければいけない事も手順も多いし、僕と葵さんの長期間の別行動が必要とされる。

 勇者を皆殺しに出来るという莫大なリターンがなければ、実行に移さないようなリスクの高い作戦だ。


 しかし、今の僕たちなら十分可能だろう。

 お互い、人にバレないように何かをする事に随分慣れた。

 僕はこの異常な頭を、葵さんはその異常な目を生かして、今まで通りやればいい。


 時々質問をされつつも、葵さんへの作戦の説明は難なく終わった。


「さて、作戦の実行までにはまだ時間があります。今日はもう時間がありませんが、また明日にでも細かい所を詰め直しましょうか。君の顔を隠す方法も考えないといけませんし」

「了解です。はぁ、これで努君の仕事が終わりだったらいいのに、地球の神様はブラックですね。勇者全員の魂を集めないとだなんて」

「僕はソウルポイントがあるだけ出来る事が増えますから、この作戦が終わったら後は貯まったポイントで楽が出来るかもしれませんよ? 捕らぬ狸の皮算用ですが、期待をするのも悪くありません」


 そう言って僕が軽く微笑むと、葵さんもそれに釣られるようにして朗らかな笑みを浮かべる。

 

 それは大量殺人計画の話し合いの後でも、僕たちにとってはいつも通りの、定例会議の光景だった。

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