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第103話 魔物の食事事情

 蜘蛛の女王という二つ名の通り、アラクネには蜘蛛に関する能力が主に二つある。

 一つは、蜘蛛族の魔物を自在に従える能力。

 そしてもう一つは、他の魔力を持つ生き物を食らう事によって得たエネルギーで卵を産み、新たに蜘蛛族の魔物を生み出すという能力だ。


 それで、僕は早速レギナにその能力を遺憾なく発揮してもらうべく、そこそこ魔力を持っていたであろうヘルヘイムトレントの死体の下にレギナを連れて行ったのだが……僕の予想以上に、当人であるレギナの食いつきがよかった。


「うぇへへ……ほんとにこれ、ボクが食べてもいいんですか? 中々いないですよ、こんなに質の良い魔力を大量に持ってる魔物なんて。これだけの量の魔力があれば、ボク、可愛い蜘蛛ちゃんたくさん産めますよ? ですから、本当にこれ食べちゃっていいんですよね? ね?」


 レギナは僕に向けてそう確認をするものの、その視線の向きはヘルヘイムトレントの死体から微動だにしない。

 その様子はさながら、餌の前で「待て」をされている犬のようだ。

 欲求を理性で抑え込んでいる感じがありありと伝わってくる。


 僕としても特に止める理由はないので、さっさと「いいですよ。他に有意義な使い道もないですし」と返事をして許可を出す。

 すると、レギナはすぐさまヘルヘイムトレントの死体に飛びつき、自身の体よりも大きいそれをあっという間に糸でぐるぐる巻きにしてしまった。


「それ、一体どうやって食べるつもりなんです?」

「ん~? 気になるんですか? それはですね、主様。まずは口から消化液をぐるぐる巻きにした糸の中に流し込んで、獲物をドロドロに溶かしちゃうんです。それから、溶けた獲物を吸い上げて食べるんですよ。せっかくですし、主様も食べますか?」

「いや、遠慮しておきます。人間の体には合わなさそうですので」


 僕はレギナから嬉々として提示されたそんな恐ろしい提案を、そうやって丁重に断る。

 流石に、蜘蛛の消化液で溶かされた魔物の体なんていうゲテモノは食べたくない。

 レギナからしたらどれほどの御馳走なのかは知らないが。


「しばらく時間がかかりそうですかね?」

「はい、いくらボクでもこの大きさの獲物は時間がかかります」

「そうですか……では、僕は少し他の用事を済ませてきます。卵を産むのは自由ですが、場所は出来るだけ最下層にしておいてください。一から九階層は、後で地形の改造を行う予定なので」

「分かりました。主様」


 そうして、レギナに伝えたい事を粗方伝えた僕はダンジョンコアの下へと向かい、テレポート機能を使ってグリフォンたちが待つダンジョンへと移動する。

 そして、以前帰って来たときと同様に溜まった侵入者の死体を還元しようとしたのだが……何故だか、死体が一体も見つからない。


 侵入者が来ていない可能性も考えたが、その割には防衛用に配置しているクレイゴーレムの装備がボロボロだ。

 戦闘も行っていないのに、ここまで装備が劣化するとは考えにくい。

 それで違和感を感じた僕は、クレイゴーレムの内一体を捕まえて質問をしてみる事にした。


 「クレイゴーレム君、侵入者の死体がどこにいったか知りませんか?」と。


 すると、僕の質問の意図が伝わったのかクレイゴーレムは僕に向かって手招きをした後、自身の持ち場を離れてゆっくりと歩き始める。

 僕もそれに従い、クレイゴーレムの後ろについてゆっくりと歩いていると、ある部屋の前に到着した。

 グリフォンが待機している、部屋の前に。


 それにより、侵入者の死体がどうなったのかをおおよそ察した僕は、クレイゴーレムに元の場所に帰るよう指示を出す。

 その後、確認のために部屋の中に入ってみると……案の定、そのくちばしに乾いた血をこびりつかせているグリフォンの姿があった。

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