第101話 神からの贈り物
『私がマスターの下に再び現れた理由は二つあります。一つは、マスターが行ったダンジョンの制圧行為について説明するため。もう一つは、勇者の魂を取り戻してきた報酬について説明するためです』
僕の頭の中に響く機械的な声は、約束通り簡潔に僕の疑問にそう答え、続けてその内容についても説明を始める。
最初に聞いたのは、ダンジョンの制圧行為についての話だった。
まず、ダンジョンとはそもそも何なのかという話から始まったのだが、ダンジョンというのは元々はこの世界の神様が創造した生物だったらしい。
食虫植物が虫を誘って食らうように、人を誘ってその魂を食らう、生態系から逸脱した生物。
どういった意図を以てして創造されたかは定かではなかったが……この世界を調査していた時、そんな特殊な生物を発見した神様は、それを利用出来ないかと考えた。
召喚された魂を、取り戻すために。
そうして考えた結果神様が思いついたのが、自分の世界の人間をダンジョンとのハイブリッドに改造して、魂を取り戻してきてもらおうという案だった。
言わずもがな、その案の対象になった人間は僕。
この世界に転移させる直前に、色々と改造を施したらしい。
その改造こそが、僕が自分のダンジョンと同じ属性の魔力を持ち、魂を食ったり他のダンジョンを自分のダンジョンにしてしまえたり出来る、全ての理由との事だった。
ある程度は理解を進めているつもりだったが、やはり神というのはとんでもない存在で、とんでもない思考の持ち主だ。
流石に、自分は既に純粋な人間では無くなっているとは思わなかった。
以前から判明している通り、肉体そのものに変化はないので、別に問題はないのだが。
「ところで、最初に会ったときは何故【俺】にこの話をしなかったんですか?」
僕は最初の話を聞き終わって浮かんだ質問を、遠慮をする理由もないので素直にそうぶつける。
『今のマスターならともかく、あのときの【俺】の方のマスターに今の話をすると精神的に危なそうでしたので』
……確かに、あのときの【俺】は突然の異世界転移や課せられた仕事に関する説明で、かなり精神的に参っていた。
今僕が聞いたすぐには受け入れがたい話を聞けば、おそらく【俺】はただでは済まなかっただろう。
『納得されましたか?』
「ええ、十分です」
『分かりました。それでは、次の話の方に入らせて頂きます』
僕が返事をした後、機械的な声はそう切り出して、次の話を始める。
その内容は最初にも言われた通り、勇者の魂を取り戻した事による報酬についての話だった。
報酬の内容は、簡単に言えばダンジョンの機能のアップグレードだ。
今回僕は、朝倉宏和、橋川恵里菜、ヘルヘイムトレントと化していた九条広樹の魂を納めた訳だが、これによって僕のダンジョンには二つのアップグレードが施された。
その内の一つは、自分のダンジョン同士で行き来が出来るようになるテレポート機能だ。
何でも、ダンジョンコアに触れて移動したい自分のダンジョンを思い浮かべれば、そのダンジョンの管理室にテレポート出来るようになったらしい。
実際に試してみたところ、僕はそれが出来て当然の事かのようにすんなりと、グリフォンたちがいる向こうのダンジョンと、ここレイヴ洞窟を行き来する事が出来た。
流石は神様の力である。
かなり便利だし、ノーコストでこの機能を使えるのは本当にありがたい。
そして、もう一つアップグレードされたのが召喚出来る魔物の種類だ。
今まででも、召喚出来る魔物の種類は決して少なくなかったはずだが……召喚出来る魔物のリストを見てみると、確かに種類が増えていた。
これについては、後でまたじっくり見てみようと思う。
『さて、これで私がマスターの下に再び現れた理由に関するあれこれは全て説明し終わった訳ですが、いい機会ですので、マスターが仕事を完遂された際の報酬の話もここでしておきましょうか。結果的に、マスターの疑問の解消にも繋がると思われますし』
「仕事の完遂というと、勇者の魂を全て取り戻したら、という話ですか?」
『はい。その通りです、マスター。それで、その報酬の具体的な内容ですが……マスターと五十嵐葵の地球世界への帰還を可能にする、というものになるそうです』
「その報酬の意図を聞いてもいいですか?」
『地球世界の神曰く「協力するのに十分なメリットがあればあやつも早々には逆らわんじゃろう」とのことでした』
……なるほど。
どうやら、地球世界の神様は僕自身についても相当の理解があるようだった。




