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第99話 乗っ取り

 実戦訓練の時と同じように、僕はレイヴ洞窟の入り口に設けられたフェンスゲートを超えて、薄暗いダンジョン内部への侵入を開始する。

 

 最下層までの道のりは実戦訓練の際に全て覚えたので、道に迷う心配はない。

 だが、レイヴ洞窟内部は暗闇ではないため、闇属性のボディーエンチャントはもう使えない。

 そのため、面倒だがそこらを闊歩している魔物との戦闘は避けられないだろう。

 弱いから別に大した問題でもないが。


 そんな事を考えながらも、僕は見覚えのある岩壁に囲われた道をすたすたと足早に歩いていく。

 そして、早速進行方向に現れた僕を見ている邪魔なスケルトンの頭蓋を剣で叩き割ろうとして、僕はある事に気づいた。


 このスケルトン、明らかに僕の存在を認識しているはずなのに、僕に対して一切攻撃を加えようとしてこないのだ。

 普通の魔物ならば、誰彼構わず人間を襲うはずなのに。


 ……そういえば、僕は一つだけ、魔物が人間を襲わない例外を知っている。

 ダンジョンマスターという、僕自身が当てはまる例外を。

 まさかとは思うが、そういう事なのだろうか。


 僕は自らの推測を確かめるため、試しに目の前のスケルトンに思考で指示を出してみた。

 通路の脇に退け、と。

 すると、何もせずに突っ立っていたスケルトンは途端にカラカラと骨の音を鳴らしながら歩き始め、僕の指示に従って通路の脇に退く。

 

 どうやら、僕の推測は当たっていたらしい。

 その後も、僕は他のレイヴ洞窟にいた魔物に指示を出してみたり、ダンジョンマスターの持つ視界の切り替え機能を試してみたりしたのだが、ことごとくそれらは成功した。

 魔物は例外なく僕の指示に従うし、念じれば僕はレイヴ洞窟内部をどこでも見る事が出来る。

 現レイヴ洞窟のダンジョンマスターが僕になっているのは、ほぼ確実だろう。

 

 しかし、一体いつの間にこんな事になっていたのだろうか。

 闇属性の魔力の入手と同じく、恐らくは実戦訓練での出来事が原因ではあるのだろうが……謎を解くために来たのに、謎が一つ増えてしまった。

 最下層の再探索でまとめて疑問が解消されればいいが。


 そうして、もはや魔物も気にしなくて大丈夫な事に気づいた僕は、何の障害もない洞窟内部を最下層に向かって進んでいく。

 時間に余裕がある訳でもなかったので、消耗しすぎないよう気を付けつつも、脚に身体強化を使って駆け足で。

 

 あっという間に最下層に着くと、僕は放置されているヘルヘイムトレントの死体には目もくれず、偽物の壁の向こうにある部屋へと向かう。

 そして、実戦訓練の時に破壊し損ねたダンジョンコアに触れ、自分がレイヴ洞窟のダンジョンマスターである事を確かめるために言葉を発した。


「ステータス」


レイヴ洞窟

マスター:篠宮 努

属性:闇

階層数:十

ソウルポイント:4690


 ダンジョンコアの前の空間に、レイヴ洞窟自体のステータスが投影される。

 マスターは僕で、魔力属性は闇。


 そういえば、あの【俺】をサポートしていた機械的な声は、ダンジョンマスターはダンジョンに対応した魔力属性になると言っていた。

 あの言葉が正しければ、僕に闇属性の魔力が増えたのは、レイヴ洞窟にダンジョンマスターに僕がなったからだ。

 だが、そうすると僕がダンジョンマスターになった原因は――


 と、僕は思考を巡らせていたのだが、突然、頭の中に声が響いて来た。

 聞き覚えのある、機械的な声が。


『お久しぶりです、マスター。聞こえますか?』


 それを聞いて僕は「なんであなたがいるんですか」と心の中で叫びつつも、急いでスイッチを切り替えようとした。

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