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マキナ・マギア〜超越と輪廻〜  作者: 希
第一章 G.A.R.D.E.N編
1/3

第一話 ~目覚め~

 閲覧して頂きありがとうございます!初投稿でまだまだ至らない点ばかりですがよろしくお願いいたします!


  静寂の中、僅かな風の音で目を開ける。

 ―あぁ…またこの夢か―

 目の前に広がるのは一面の青い世界。堕ちてゆく…身体は動かず、ただゆっくりと堕ちてゆく。

 ―今回はどこまで落ちるのかな?―

 恐怖はない。物心が付いた時から、もしかしたらもっと前から何度も観た光景だ。それよりもこの夢に先はあるのか、あるのなら見てみたい。その想い一つで落ちてゆく。

 暫く落ちていくと背後から誰かの気配。

 ―また来たんだね。君は一体誰なの?―

 問いかけたくても、振り向きたくても、何もできない。だが、それを知っているように首に手をまわして抱きつかれる。暖かく、それでいて優しい手。

 ―このまま一緒に―


 だが、世界はそれを許さない。


 暴風と共に世界は暗黒に染まる。そして少年は日常へと引き戻される。



 ここは名も無き辺境の村。その中の木造の小さな家の2階から俺の一日は始まる。

 鳥の鳴き声と朝日の光で俺は目を覚ます。

「んっ...もう朝か...」

 俺の名は「---」透き通るような白髪とスカイブルーの目を持つ少年である。

「いっけね!今日は狩りに行くんだった!」

 俺は飛び起きて急いでリビングへと向かう。今日は週に一度の狩りの日だ。

 まずい、完全に寝坊だ。よりによって今日あの夢を見るなんて、ただでさえ狩りは時間がかかるのに。あの夢を見るといつも寝坊するのだ。それに今日はそれだけではない。

 ドアを開けると母に迎えられる。

「おはよう---。また夢を見ていたの?」

「おはよう母さん!ごめん!よりによってこんな大事な日に」


 申し訳なさそうにしているとそっと頭を撫でられる。

「いいのよ、それより誕生日おめでとう---!」

「ああ!ありがとう!」

「もうあなたも16歳なんてねー。時間の流れは速いわねー。」

「へへっ...ってそんな場合じゃなかった!早く森に行かないと!」

 急いで狩りの支度をする。立てかけてあった弓矢と護身用の剣。そしてテーブルに置いてある母の愛情100%の弁当を持って玄関に向かう。

「あっ!---。今日誕生日でしょ。新しいペンダント着けて行きなさい」

 ラピスラズリが装飾されたペンダントを母が持ってこようとする。

「大丈夫だって。去年貰ったやつもまだ壊れてないし、なるべく早く帰るから!」

 ドアを開けて飛び出す。

「あっ!コラ---!待ちなさーい!!」


 村を駆け抜ける。走りながら村人に挨拶をして森へと向かう。村の出口にはいつものように村長が待っていた。

「おぉ---か。すまんのうこの村には若いのがお前しかおらんからいつも負担をかけてしまって」

「いいって!今回もみんながたらふく食えるくらい仕留めてくるよ!」

「頼んだぞーー!」

 村長に手を振りスピードを上げる。よぉし今日も気合入れてくぞ!


 そうして時刻は夕方。

「今日はあと一匹で引き上げるか」

 仕留めた中くらいのイノシシを収納魔法でしまう。量としては十分だけど今日は大物を仕留めていない。村の皆に自慢するにはインパクトが足りない。茂みに隠れて周囲を見渡すと100メートル程先に大型のイノシシ発見。あいつに決定だ。

 魔法陣を展開しながら弓を構える。そして矢に魔法を付与する。魔法は幼いころから母に教わっている。魔法陣によって予め魔法の種類と性質を固定した後、自身の魔力を装填し最後に詠唱する事で発動させる。基礎的な魔法は陣を介さずに無詠唱で発動することも出来るが、まだ完全には扱えないのでここは安定をとる。気づかれないよう小声で詠唱し、矢を放つ。


下級風魔法パルヴ・セレスト


 魔法によって貫通力を上げた矢が獲物に向かって一直線に飛ぶ。一瞬の間に矢は獲物の脳天を貫く。

「よし!大物貰った!」

 仕留めた獲物に駆け寄り収納魔法をかけて小型化し、皮袋にしまう。これなら村の皆も喜ぶはずだ。

 そう喜ぶ自身のペンダントの宝石には亀裂が走っていた。


 鼻歌を交えながら上機嫌の帰り道。開けた場所に出る。そこには他の木々とは比べられないほどの大木と神聖な魔力に満ちていた。

「神樹...こんな奥地まで来てたんだな。狩りに夢中で気付かなかった。」

 この大木は神樹。村の守り神とされ、災いを防ぐものとして村人から崇められていた。幹には空洞があり、中に入ることが可能だが、それは村の掟で禁じられていた。

「ありがとな。いつも見守ってくれて。」

 歩き寄り、外側に手を触れた瞬間。ペンダントが砕け、暴風と共に神樹の幹から黒い靄のようなものが現れる。

「くっ...!なんだ!?」

 四つん這いになり、暴風を耐えながら見上げると、黒い靄は自分を見るかの様に静止した後、村の方角に飛んでいく。嫌な予感がする。風が収まるのと同時に走り出す。


「はぁ...はぁ...はぁ...!!」

 全力で走る。道なき道を最短距離で走る。草や枝による切り傷にも目もくれずに走る。こんな時に限って身体の調子が最高にいい。今までと比べ物にならない速さで森を抜けると...

「なっ...!」

 思わず立ち尽くす。村は黒炎に包まれていた。いつも見慣れていたはずの光景は見る影もなく、ただ焼き焦げた匂いのみが鼻を突く。

「っ...!みんなは!?」

 我に返り、炎を突き抜けてまた走り出す。村の住人の姿が見えない。無我夢中で家へと向かう。

「母さん...無事でいてくれ!」

 なんとか家にたどり着く、幸いまだ炎は燃え広がっておらず、多少の安堵はあれど焦りと共に勢いでドアを開ける。

「母さん!!」

 そこには母親だったものが横たわっていた。傷はない。だがその身体は完全に静止しており、自分の目から見ても生きてはいない。

「そんな...母さん...」

 泣きながら傍に駆け寄り膝をつく。これは夢なのか、むしろ夢であって欲しいという願望は無情にも肌に伝わる炎の熱にかき消される。


 そのまま動けずにいると突然時間が止まる。

「えっ...?」

 炎すらもその揺らぎを止め、凍ったように全てが止まる。

 驚くのも束の間。母の表面に数列が流れ、電子音と共に砕けて消える。

「か、母さん?...何が...?」


 ―ようやくだ―


 脳内に直接言葉が浮かび上がる

「誰だ!?」

 振り返るとそこには真っ黒な人型の影が立っていた。顔も体も見えない。シルエットのようなものだが確かにその影はそこにいる。確証はないが、この影が母や村民を襲った存在であると自身の直感が告げている。

「お前が...お前がみんなを...母さんを!このぉぉぉぉ!!!」

 護身用の剣を抜き、大きく振りかぶり、斬りつける。だが影に触れた瞬間に剣もまた砕けて消える。

「なっ!くそ!」

 距離を置こうとしたが、影の手が胸を貫く。

「くっ...がっ...」

 痛い、憎い、どす黒い負の感情が流れ込んでくる。耐えきれずうずくまる

「何を...したんだ...?」

 上がった息を押し潰しながら苦し紛れに問いかける。


 ―なぁに、宿を貰っただけだ。お前のおかげでやっと動けるようになった―


 苦しすぎて声が出ない。だが言葉は続く。


 ―お前のペンダントの封印が解けたおかげでな。それは俺とお前の力を抑えるものだ。毎年毎年壊れる前に取り換えやがって、この世界で16年も掛かっちまった。―


 何を言ってるんだこいつは。


 ―混乱してるな。お前も見ただろう?母が消えたのを。なぜだと思う?答えは簡単。本物がお前だけだからだ。この世界はまやかしだ。―


 嘘だ


 ―嘘じゃないさ。なら何故母は家を出てまで追いかけて来なかった?―


 やめろ


 ―なぜ村の住民共はいつも決まった場所にいるんだ?なぜ村から出られないんだ?―


 やめろ


 -なぜお前の名前はないんだ?まぁこれは他とは事情が違うか-


 やめろ


 ―理解できたか?なら俺は行くぞ。お前はそこで消えてしまえ―


 気配が消える。もう何も考えたくない。横たわる。そして突如身体を優しい光が包む。それに身を任せるように目を閉じる。


 ふと目を開ける。もう苦しさはない。純白に染まった世界の中、目の前には

「神樹...」

 ただ大木がそこにあった。

「そうだ...神樹...神樹なら何とかしてくれる筈だ。」

 よろめきながら立ち上がり、中へと入る。まともな思考はもうない。

 奥へと進む。そこで見たものに目を奪われ、思考が蘇る。

「なんでこんなところに...」

 そこには眠るように祈りながら四肢と首、そして腹を鎖でつながれた少女がいた。

 白く長い髪をした少女は息もせず微動だにしない。歳は自分と同じくらいだろうか。

「助けなきゃ」

 そうしなければいけない気がして、手を伸ばす。鎖に触れると砕けて消える。

「よし、これなら。」

 安堵した瞬間衝撃が襲う。それは死と同等の苦痛。全身を確認するが出血どころか外傷もない。むしろ体の内側を丸ごと握り潰されたかのような痛みと不快感だ。

「くっ...」

 それでも手を止めない。止めてはいけない。また鎖を砕く。また苦痛が襲う。

 また手を伸ばす。また鎖を砕く。

 そうして12本すべての鎖を砕いたその瞬間。

<エラーコード01及び02を確認。これより仮想空間の消去を開始します。>

 俺と少女は光に包まれる。


「-きて。ねぇ起きて?」

「んっ...もう朝か...」

「なに寝ぼけてるの。大丈夫?」

「えっ?」

 目を開けると自分と同じくらい綺麗で同じスカイブルーの双眸が二つ。心配そうに自分を見ていた。

 あの少女だ。さっきまで鎖に繋がれていた少女が自分を膝枕している。なんだが名残惜しいけど起き上がる。彼女の背後にはカプセルのようなものがあり、彼女はそこから出てきたのだと理解する。

「ああ、大丈夫。それよりもよかった。君はまやかしじゃなかったんだね。」

「...まだ寝ぼけてるの?」

「いや、こっちの話。それより君こそ大丈夫?名前は?」

「...わからない」

「へ?」

「思い出せないの。なにも。」

「そっか...」

 なんと返したらいいのか分からずにいると

「そういうあなたこそ何者なの?私が起きた後そこの機械から出てきたのよ?」

「機械?」

 少女の指すその機械はまたカプセルのようなもので、人がちょうど一人入れるほどの大きさだった。そしてその隣にはもう一つ中身のない同じものがあった。その中に入っていたものが解るような気がして

「もう一つは?誰が入ってたんだ?」

「わたしが気が付いた時にはもう空だった。それよりここはどこなの?」

 周囲を見渡す。そこはとても無機質な、研究室のような小さな部屋だった。奥には階段が上に向かって続いている。どうやらここは地下のようだ。

「俺にもわからないや」

「それもそうよね。ところであなたは?あなたも記憶がないの?」

「いや、その...名前だけ知らないんだ。」

「えぇ!そんなことってあるの!?」

 とても驚かれる。

「でも、俺が暮らしてた場所はまやかしだったみたいだし、同じようなものだよ。」

そう。村が消え、俺だけがこうして見知らぬ場所に存在している以上、あの村は、母は、村民はまやかしなんだ。そして俺には村で過ごす以前の記憶がない。

「そっか...ふふっ...変な人。」

「お互い様だろー。ははっ...」

 笑いあう、互いが一人ではないことに安堵する。そう。眼前の眩しい程の笑顔を向けてくるこの少女だけは現実なのだ。

「それより外に出よう。ここにいるよりは何か分かるだろうし。」

 立ち上がり、少女に手を差し伸べる。

「そうね。お互い記憶喪失みたいだし、一緒に行きましょ。」

 少女は微笑みながら俺の手を取る。

「とりあえず、不便だし思い出すまでの名前を決めよう。君は...そうだな...エルなんてどう?」

 俺は少し考えて、最初から決まっていたかのように少女の名を呼ぶ。

「エル...うんっいいわよそれで。じゃああなたはルーって呼ぶわ」

 少女は最初から決まっていたかのように少年の名を呼ぶ。

「人のこと言えないけど、随分と早く決めたな」

「だってあの機械に書いてあったから。擦れててよく読めなかったけど。」

「えっ?」

 自分が入っていたカプセルの表面には消えかかった文字で


 Lu f - a a


 と刻まれていた。

「ルーファ...でいいのか?これが俺の名前。」

 呟くと同時に警報が鳴り響く

<エラーコード03を確認、爆破プロセスを開始します>

「なっ!またかよ!」

「えっ!なに!?何が起きるの!?」

 床が揺れ爆発音と共に天井が崩れ始める。

「とにかく急いで外に出よう!このままだと生き埋めだ!」

「そ、そうね!急ぎましょ!」

 焦りと共に走り出す。二人共ボロボロの布の服に裸足のまま階段を昇る。


「「はぁ...!はぁ...!はぁ...!」」

 時間が長く感じる。村にいたころから体力には自信があったが、生死の境目を彷徨っているようなこの状況が体力をみるみると奪っていく。本当に出口があるのか不安になってきたところで、ようやく光が見えてきた。

「きっと出口だ!大丈夫かエル!?」

「な...なんとかね」

 息を上げながら昇るが無情にも天井が崩れ落ちていく。このまま走っていては間に合わないと判断したルーファは賭けに出る。

「エル!摑まって!」

 手を伸ばし、魔法陣を足元に展開する。

「どうする気ぃ!?」

 エルは俺の手を取り、首に手をまわしてしがみつく

「弓矢でしか試したことないけど、魔法で飛ぶ!」

「えぇ!?」

 エルを抱きかかえながら魔法陣を完成させる。同時に人間二人を飛ばすには力不足だと直感する。

「くそっ!このままじゃ...」

 もう失いたくない、失う訳にはいかない、だが力が足りない。諦めかけたその時、もう一つの魔法陣が展開される。

「わたしも手伝うわ!」

「エル...ああ!行こう!一緒に!」

 二つの魔法陣は重なり、下級から中級へと姿を変える。

「「中級風魔法(メデム・スラスト)!!」

 一陣の風が吹き荒れ、二人を飛ばす。風は勢いを止めることなく二人を空へと導く。

 勢いが収まり、目を開けるとそこには...

「「うわぁ」」

 そこには夕日に照らされ、輝く一面の海と空があった。

 その間に浮かぶ大陸の上に俺達はいた。大陸の中心には巨大な塔が雲を突き抜けてそびえ立ち、その麓には町が広がっている。目を凝らすと遠くにも大陸が見える。

「まだまだ分からない事だらけだけど、エルと一緒なら大丈夫だ!」

「そうね!ルーと一緒なら大丈夫!」

 そう確信して俺達は笑いあって、新しい世界の、二人の物語が始まる。

「ところで...」

 心配そうにエルが問いかける。

「ゑ?」

 新しい世界への期待で一杯のアホ面を向ける

「この後どうするの?」

 2秒前の笑顔が嘘のように消える。魔法も消える。当然、落ちる。

「考えてなかったあああああああ!」

「ばぁかあああああああああああ!」

 二人の物語が始まる...?

 最後まで閲覧して頂きありがとうございます!

 後書きでは、本編の補足と次回の投稿についてを中心にしたいと思います。

 まずは補足から

一応この物語のラスト及びラスボスは決まっています。おおまかな世界観と設定も決めてあります。

仲間も主要人物は決めてあるので、楽しみにして頂けると幸いです。

そして物語の最後にルーファとエルが使った魔法ですが、実は中級魔法ではありません。中級の威力を超えています。これにもきちんと理由があります。

気になるのはそこじゃねぇ!って感じですが、今回は物語の根幹となる伏線を大量に入れてありますのでこのくらいで勘弁してください。

 更新頻度ですがなるべく一週間に一回程度を予定しています。

 それでは次回も気が向いたら閲覧して下さい!


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