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11.もちゃもちゃポリッジ、試食

 電子レンジ代わりに熱魔法を使って温め直したポリッジに、マーサから受け取ったスプーンを突き刺す。

 な、なんかぬちょぬちょしてる気がするんだけど……。

 まあ、とにかく食べてみないことには分からないわよね。別に元が毒入りって訳じゃないんだし。とスプーンで掬い上げたポリッジを口に運ぶ。ヴィクターとマーサがドン引きした顔をしていた気がするんだけど……気がするだけだよね!!



「ね、ねーさま…それ、美味しいの……?」

「んー……なんとも言えないわ。味は悪くないと思うのだけど、食感が…うん、かなり変わってるわ。なんて言うのかしら…?

 粘り気がある?って言うのかしらね…。こう…ぬちゃ?にちゃ?うぅん……表現し難いわね……もちゃもちゃ?してるわ。」

「もちゃもちゃ……」

「初めて聞きました、その表現……」



 作ってすぐは確実に美味だったのであろうそれは、なんと言うか…原野味?みたいな、穀物の味?が増して好みが分かれそうな味がする。そして、水分を吸いすぎたのか、粘り気というか、弾力というか……噛めば噛むだけもちゃもちゃする、不思議な食感だ。


 お粥のものとは到底思えない弾力を若干、楽しみながら咀嚼をしていると、ヴィクターが興味はあるけどなんだか怖い、とでも言いたげに尋ねてきた。うんうん、分かるよ。初めて食べるものってちょっと勇気いる時あるよね。

 恐る恐る、わたくしの顔色を伺うように尋ねてきたヴィクターに素直な感想を返すと、マーサがびっくりしたように目を丸くさせた。何故か反応はわたくしの発した語彙の方にしてたけれど。



「……食べてみる?」

「………………………ん」



 じーっとわたくしの手元のもちゃもちゃポリッジを見つめるヴィクターに、その器を軽く掲げて食べるかと聞いてみると、たっぷりすぎる葛藤の後に頷きが返ってきた。なんか、反応が微妙だな…。

 一口分だけ、スプーンでポリッジを掬い上げてヴィクターの口元に持っていく。あーん、とわたくしが言えば、ヴィクターは素直に口を開けてパックリと食べた。


 前世で弟たちにやってた感覚であーんしちゃったんだけど。これって貴族的にはアウト?はしたないって怒られちゃう?…まあ、6歳と4歳の子供の戯れだから大目に見てください。



「……ねーさま、まずいよコレ…」

「そうかしら?」

「うん、まずい。なんか……少し固くて食べにくいし…もちゃもちゃするし……味も、なんか変。僕、コレ嫌いだ」



 愛らしい顔をくしゃりと顰めてヴィクターが言う。もちゃもちゃ、気に入ったんだね。

 それにしても……嫌いだ、って言いながらべぇって吐き出さないでちゃんと飲み込む辺り、偉いわよね。ヴィクターって。

 けど、そんなに不味いかしら?わたくし、前世でもっと不味いもの食べたことあるし…そんな風には感じないのよね。食べづらいし、食が進む味じゃないのは認めるけれど。でも、サルミアッキやシュネッケンよりは格段に美味しいわよ。

 ……これは比較対象にしちゃダメだろうけど。

 っていうか!!わたくしの味覚ってちゃんとリセットされてるわよね!?前世で兄(次男)の甘酸っぱ苦い錬金術料理を数回食べて麻痺しかけた味覚じゃないわよね!?

 ……大丈夫、きっと!!だって、我が家の美味しい料理をちゃんと美味しいって感じてたもの。前世の記憶が戻る前だけど!



「失礼ながら申し上げます、お嬢様。冷めたポリッジはよほどのことがない限り、平民であっても食べようとはしません」

「あら、そうなの?」

「はい。食感も良くありませんし、風味もあまり……。ですので、お嬢様のように自ら進んで食べようとする方はそうはいらっしゃいません」



 自分の味覚に不安を覚えながらも、もっちゃもっちゃ、とポリッジを無心で口に運んでは咀嚼し、飲み込むというのを繰り返す。

 そんな時、マーサが教えてくれた冷えポリッジ事情に驚いてしまう。…だとすると、みんな熱々の内に慌てて食べてるってこと?猫舌の人、大変そうね……。それと慌てて食べて舌、火傷しないかしら?



「まあ、食べにくいもの。冷やしポリッジ」

「ひやしぽりっじ……」



 納得だ、とマーサの言葉に頷く。食べにくくて苦手なものをわざわざ口の中に放り込む人なんて、そうそういないでしょうね。

 けど、うーん……やっぱり、もったいないって思っちゃうのよね…。焼いて水分を飛ばしたらいけるのかしらね?

 ヴィクターがもういらない、と言うのでもちゃもちゃと格闘しながら、この冷やしポリッジを食べ進める。しかし元々、わたくしが少食なのもあると思うのだけれど、まだ半分しか食べてないのにお腹がいっぱいなのだけれど。

 食べるスピードを落として何となく冷やしポリッジの活用法を見出せないかと考えて、口と頭を一生懸命に動かすわたくしの隣で、ヴィクターが初めて聞く呪文のように、ひやしぽりっじを繰り返してた。

 ……一体、何がそんなに気に入ったんだろうね?

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