王子の秘密
王子sideです。
ついに来てしまった。なぜ女性を娶らなくてはならないのだろう。私は王子という身分ではあるが、その前に女だ。
同性の人を妻にするのには抵抗がある。
しかし、世間帯を考えると、やはり女性を娶るしかないのだろう。
ああ、どこかに女性のような男性はいないだろうか。
「王子のお出ましよ!」「ああ、かっこいいわ!」
女性たちはがやがやしていて、男性たちの憧れや嫉妬の眼差しが突き刺さる。
あまりこの空間が好きではない。しかし、そのことを顔に出してはいけない。それはわかっているのだが、こうも女性にまとわりつかれると嫌気がさしてくるものだ。
私はつい、逃げ出してしまった。我慢の限界だったのだ。さいわいなことに、中庭は寒いため人がいなかった。
新鮮な空気を吸い、落ち着いてきたところで、女性が現れた。
場所がもうばれてしまったのかと思い警戒したが、一向にこちらを見ない。
「わぁ、きれいな庭。」
とても透き通った声だった。だが、少し違和感がある。女性にしては少し低い気がするのだ。
「あれ?こんばんわ。」
「あ、ああ。こんばんわ、お嬢さん。」
「…あ、そっか。」
最後に何て言ったのかが聞き取れなかった。それにしても、気付いてないのだろうか。
「えっと、こんな寒いところで何をしていたんだい?」
「ああ、庭を見ていたんです。とても素敵なところだなと思って。あなたは?」
「ああ、私は少し休憩をしていたんだ。そうだ!少し付き合ってくれないか?」
「ええ、いいですよ。僕なんかでよければ。」
僕?女性にも『僕』を使う人がいるのか。
………
それからたくさんのことを話した。いつの間にか意気投合していて、本当のことまで話してしまっていた。
そうしたら、
「そうだったんだぁ、僕も実は男なんだ。はは、なんか僕たちって似てるね。」
と言ってくれた。
こんなにかわいらしい人が男だというのに驚いたが、この人とならうまくいきそうだと思えてきていた。
「そうだ。そろそろ中に戻りません?そして一緒に踊ろうよ。」
「そうだね。僕も一応女の踊りはわかるし、一度くらいならいいよ。」
そうして中に戻ると、
「王子!どちらにいっていらしたの?」「もう曲は始まっていますわ。」
あっという間に女性に囲まれてしまった。
「王子?」
一人混乱しているのは彼だ。
「え?王子?え?え??」
少し可愛いかもしれない。
彼の手を取って、ホールの真ん中に行く。
そして…
「私と一緒に踊りませんか?」
と聞いた。
「あ、えっと、ぼ、私でよければ、喜んで。」
ちゃんと私といってることに驚きながらも踊りだす。
それにしても、彼はとても踊りが上手だ。
一曲踊り終えたところで、
「あ!もうこんな時間!僕もう帰るね。さようなら。」
と言って走り出してしまった。また女性たちに囲まれてしまったけど、それらを振り切って走り出す。
だって、まだ彼の名前を聞いていない。もう少しで追いつく、というところで転んでしまった。
しかし、そこにはガラスの靴が落ちていた。彼の足下を見ると、片方はいていない。そして、彼はそのまま馬車で走り去ってしまった。
「このガラスの靴があれば、彼を探し出せるかもしれない。」
それからガラスの靴を使用人に預けてホールに戻り、最後まで女性たちと踊り明かすのだった。
その翌日、王子は彼を探しに出かけるのだった。