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失敗

朝になった。


昨日と同じくらいに起きた俺は、食堂へと向かった。


やっぱり、俺は起きるのが遅いのかな?


そう思いながら、1人で朝食を食べた。



その後、部屋に戻って、装備と道具袋を用意して、宿を出た。


今日の目的は、南門を出た先にある森で、薬草を多く採取することだ。



南門に着くと、


「おはよう。タツヤくん。」


「あれ?ゲートさん?…おはようございます。」


俺は、この街には入るとき、北門を通った。

そのとき居たゲートさんがなぜ南門に?


「ん?……ああ!実は、私はここ南門担当の門番なんだ。この前北門に居たのは、急用で休んだ人の代わりだったんだ。」


「そうだったんですか。…でも、代わったおかげで、俺はゲートさんと知り合えたから、良かったです。」


「ははっ!それは嬉しいねぇ。…と、こほん。それじゃあ、身分証を見せてください。」


俺は、ギルドカードを出して、見せた。


「はい。確認しました。…タツヤくん、これから君は、この先にある森に入っていくんだね。だったら絶対に森の奥には行かないように。……約束だよ。」


「は、はい。分かりました。奥に行かないように気を付けます。」


「うん、それじゃあ頑張ってきてね。ここから応援しているから。」


「ありがとうございます。それじゃあ行ってきます。」


俺は、この先にある森に向かって歩き始めた。





森に入って、1時間くらい経った頃、ようやく5つ目の薬草を採取した。


「う〜〜ん」


思ってた以上に見つからないなぁ。

その場に立ち止まって、スマホの地図を見た。


地図に表示されている反応から、近くにいる他の冒険者と、魔物の位置を確認する。


「お!」


俺の近くに魔物の反応がある。しかも、1匹だけのようだ。


よし、行ってみよう。


幸い?場所は森の奥深くではないので、約束を破ることはない。

危険があるけど、今後のために、実際に魔物を見る必要があるはず。 (ドラゴンは例外)


………いた。


そこには、ゴブリンが1匹、周辺を警戒していた。


俺は、見つからないように、ゴブリンの後ろ側から様子を見た。


そして、このゴブリンは、武器類 (剣や棍棒等)を持っていないことと、まだ俺の存在に気付いていないことが分かり、俺の中から少し欲が出てしまった。


今なら、こいつを倒すことができるかも!


俺は、ロングソードを鞘から出して、両手で握り、息を整えた。


スーハー、スーハー、よし


俺は、再度ゴブリンを見て、まだ気付いていないことを確認した瞬間に、走り出した。


ギャ!


ゴブリンが俺に気付いて、俺の方を見た。


遅い!!


俺は、当たる!と確信して、剣を思い切り上から下へと振り下ろした。


「ハァアアアア!!」

ザクッ


しかし、ここで、2つの誤算が発生した。


1つは、俺自身が肉を切る感触に不快感が出て、握りが少し弱くなってしまったこと。


もう1つは、ゴブリンを侮っていたこと。本能なのか分からないが、俺が振り下ろし始めた時には、既に後ろに飛び始めていた。


結果、そこまで深いダメージをゴブリンに与えることができなかった。


しかも、俺は失敗したことで、次の行動も考えられずに、その場で固まっていた。


………運が良いのか、その後、ゴブリンは固まっている俺を無視して、森の奥の方へ逃げて行った。


はぁ〜〜〜


逃げて行ったゴブリンを見て、息を吐いた俺はそのまま地面に座った。


そして、よく見ると、両手が…いや、全身が震えていることに気付いた。


危なかった!


俺は、更に両手で体を包むように縮んで震えた。


怖かった!!


ドラゴンの時以上の恐怖を感じた。

実際に命の奪い合い (殺るか殺られるか)を経験したのが理由だろう。



……どれくらい経ったか分からないけど、とりあえず、動けるくらいには、回復した。


そして、俺は、スマホを出し、地図を見て、再び、魔物と遭遇しないように注意しながら、フォレスの街にゆっくりと帰り始めた。


この時、いや正確には、もっと前、それこそ俺が街から出てからずっと俺を監視していた奴がいたことを後になって、俺は知ることになった。



「タツヤくん!!その血は!どこか怪我でもしたのか!」


俺が門の近くまで、辿り着くと、ゲートさんが俺を見つけて大声を出して、こっちに来た。


「だ、大丈夫です。これは、魔物の返り血ですから」


「魔物と遭遇したのか!…まさか!」


「大丈夫です。俺は、約束通り、森の奥には、行っていません。……でも、偶然、魔物と遭遇してしまって、なんとか追い返すことができただけです。」


「そっか。…分かった。それじゃあ、ギルドカードは見せなくていいから、早く宿に帰りなさい。」


「…分かりました。ありがとうございます。」


俺は、その後もゆっくりと移動しながら、宿に戻り、さっさと、自分の部屋に入って、装備等を適当に置いて、ベッドに横になった。


「あ〜あ、ちくしょう!」


自分の不甲斐なさに、思わず声が出てしまった。


ゴブリンと遭遇した時、危険だけど、何だかんだで、成功する、上手くいくと思っていた。


俺は、もっとできると思っていた。


俺は、自分が特別だと思っていたのかもしれない。


だから、簡単に倒せると間違った答えを出したんだ。


本当は、倒すじゃなくて、殺すが正解だった。


そして、当然、俺はそんな覚悟も持っていない。


だから、今日の出来事は、起こって当たり前、もしかしたら、死んでいた可能性も十分にある。


「はぁ〜、明日からどうしよう?」


俺は、結局、答えを見つけられずにそのまま寝てしまった。

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