準備
「ふぁ〜あ、……よく寝た。」
朝になり、ベッドから出た俺は、とりあえず、部屋を出て、一階の食堂に向かった。
「あら、ようやく起きたみたいね。おはよう、タツヤくん。少し待ってて、今、朝食を用意するから。」
ターナさんが俺を見つけて、挨拶と朝食の用意を始めたので、俺は、席に座って、待っていた。
「お待たせ。」
「ありがとうございます。そういえば、他の人達は……」
俺は、待っている間に気になったことを、聞いてみた。
「みんな、タツヤくんが食堂に来る少し前に、出て行ったわよ。夫は、門番の仕事で、サラさんとスーさんは、冒険者ギルドに依頼の確認をするために。」
「依頼の確認……」
よく思い出してみれば、俺は、サラとスーさんのことをまったく知らないことに気付いた。
冒険者ギルドに行ったことから、たぶん、二人とも俺と同じ冒険者なのかな?
「それで、タツヤくんはこの後、どうするの?」
「とりあえず、俺も冒険者ギルドに行って、どんな依頼があるのか見に行こうと思っています。」
昨日は依頼の内容を確認できなかったから、どんな依頼があるのか楽しみだ。
「そうなの…分かったわ。十分気を付けて、行くように。」
ターナさんは、そう言って、その場を離れた。
俺も、朝食を食べ終わると、一旦、自分の部屋に戻っていき、机の上に置いたスマホをポケットに入れてから、宿を出た。
冒険者ギルドに到着して、中に入った俺は、そのまま受付に向かった。
「おはようございます。ミリーさん。」
「おはようございます。……そういえば、タツヤくんには、どのような依頼を受けることができるのか、まだ、説明していませんでしたね。…丁度、他の冒険者さんはいませんから、今から説明しても大丈夫ですか?」
「はい。お願いします。」
俺が、ミリーさんにお願いすると、ミリーさんは、3枚の紙を俺に渡した。
「今、タツヤくんが受けられる依頼は、どのランクの冒険者でも、いつでも、受けることができるこの3枚の依頼書だけです。」
そう言って、ミリーさんは、1つずつ依頼の内容を教えてくれた。
1つ目は、街の清掃の依頼だ。これは、街の中での作業なので、危険はほとんどないが、報酬も低い。
2つ目、採集依頼、これは、街の外に生えている薬草を一定数集めて、ギルドに提出すればいい。多く持ち帰ればその分、報酬も増える。でも、街の外に出るので、魔物と遭遇する危険がある。
3つ目、討伐依頼、これは、ゴブリンを討伐して、その証として魔石か右耳を剥ぎ取って、ギルドに報告すると報酬が貰える。他の2つより、多く貰えるが、必ず討伐する必要があるため、危険度は高い。
説明を聞いた俺は、3つの中から採集依頼を中心にこれから行動することを決めた。
理由?
まず、討伐依頼×←戦闘経験なし、危険度大だから
そして、採集依頼>清掃依頼←清掃より採集をやってみたいから
その後、ミリーさんから、採集依頼に必要な道具や、身を守るための武器などを売っているお店の場所を聞いて、冒険者ギルドを出た。
最初に、武器屋に行き、そこでショートソードと剥ぎ取り用ナイフを合計銀貨1枚と銅貨10枚で買った。
次に行った道具屋では、道具袋や、剥ぎ取り用袋、回復ポーション等、合計銀貨2枚分の物を買った。
最後に、服屋に行って、中古で良さそうな物をいくつか銀貨1枚で買って、宿に帰った。
昼過ぎに、宿に着いた俺は、さっさと自分の部屋に入って、買ってきた服をタンスに入れて、ベッドに腰を置いた。
服以外の武器、道具類は使っていないもう1つのベッドの上に置いた。
今日はこのまま、部屋でのんびり過ごそうかなと、考えながらスマホを操作していると、DPが増えていることに気付いた。
538DP
そして、俺は、500DPで何が交換できるか調べてみた。
戦闘系、補助系スキル→下級クラスを1つ
魔物→Eクラス(ボア系、ウルフ系等)1匹
道具→ポーション系2、3個
異世界の物→お菓子数品
スマホの機能強化
交換できそうなものの中から、俺は、採集依頼と今後に役立つだろうスマホの機能強化を選んだ。
具体的には、地図の強化だ。
これで、地図内に建物、街の名称と、生物 (人、魔物等)が表示されるようになった。
それと、今回は交換しなかったが、他にも戦闘で役立つ剣術 (小)や、移動スピードを上げる速度アップ (小)、遠くを見ることができる遠見等があった。
他にも、DPを考えなかったら、今すぐ欲しいスキル、物がいくつかあった。
1つ目は、アイテムボックス (10万DP)
今日、買い物して改めて欲しいと思った。異空間に収納、まじで便利そうだ。
2つ目、属性魔法 (各種1000DP)
異世界来たら、魔法を使ってみたいと当然思うだろう。でも、これは、入手しても練習しないとできないらしい。
3つ目、武器類 (刀や銃等)
どれくらいの切れ味、威力か分からないけど、使ってみたい。
4つ目、蘇生薬エリクシール (1億DP)
緊急時用に欲しい。
最後に、状態異常完全無効付きネックレス (500万DP)
身に着けるだけで良い。かなり安全になる。
これらを手に入れることを今後の目標としていこう。
おっ!
さっき交換した強化版地図を見ると、俺の部屋に1人近づいて来る反応があった。
コンコン
「は〜い。…あ、ターナさん」
「こんばんは。タツヤくん。夕食の用意が終わっているけど、どうしますか?」
こんばんは?振り返って窓の外を見ると、暗くなり始めていた。
どうやら、交換するものを決めるだけで、結構時間が経っていたことに気付いた。
「それじゃあ、今から食堂に行きます。」
「はい。分かりました。では、用意をしていますので。」
そう言って、ターナさんは1階に下りて行った。
俺も、特に用意するものがないから、ターナさんに続くように食堂へ行った。
その後、夕食を食べ終わって、自分の部屋に戻り、明日のために道具袋を整理して、スマホを少し操作して寝た。
いよいよ、明日から、冒険者として街の外で活動するんだ。
不安と期待を胸に抱いて明日を迎えた。