騒動
いや〜売れた、売れた。予想以上だ!
俺は喜びながら、商人ギルドから外へ出ようとした。
受付で待っていた俺のところに、行商人の…パサーさんがいきなり来たのは、驚いたけど、その後、受付から個室に移って交渉をした。
その結果、銀貨10枚ゲットした。
そういえば、銀貨を貰う時、パサーさんが、何か言ってたけど、忘れた。
というか、交渉で俺が何を言ったのかもあまり覚えていない。
俺も予想以上に高く売れて、少し混乱していたようだ。
外に出ると、すでに夕方と言っていい時間になっていた。
さて、あとは宿だけだな。
確か、ゲートさんオススメは、眠りの森亭だったっけ?
場所は……
俺はその場で、固まった。
場所、どこか、聞き忘れた。
……はぁ〜、しょうがない、周りの誰かに聞いてみようかな。
俺は、周りに宿のことを知ってそうな人がいないか探そうとした時、
「タツヤくん?」
急に名前を呼ばれて、目を向けると、そこには、今の俺の救世主ゲートさんがいた。
「ゲートさん!」
俺は急いで、ゲートさんに近づき、頭を下げて、お願いした。
「宿まで俺を案内してください。」
「え!」
ゲートさんは、俺の急なお願いに驚いていた。
がすぐに気付いてくれた。
「そういえば、宿の特徴は言ったけど、場所については言ってなかったね。これは、私のミスだな。ごめんね。」
「あ、いえ、今こうしてお願いしていますので。大丈夫です。」
「そう言って貰えると助かるよ。宿の案内については、私も今日の仕事が終わって、向かうところだから、一緒に行こう。」
「よろしくお願いします。」
俺は、ゲートさんと一緒に宿へと向かった。
「結構、大きい宿ですね。」
眠りの森亭の前に、たどり着いた俺は、見た感想を言った。
「まぁ、大きいだけで、従業員が少ないから、空いてる部屋が多いのが現状かな?」
「何で、ゲートさんがそんなことを知っているんですか?」
「中に入ればすぐに分かるよ。」
その言葉を聞いて、俺は中に入っていった。
「いらっしゃいませ。…あら、お帰りなさい。あなた。」
あなた?俺は後から入ってきたゲートさんを見た。
「ただいま。…タツヤくん、紹介しよう。私の妻ターナだ。」
妻?…えっ!ゲートさん結婚していたの!まじで?
俺が失礼な事を思っている間に、
「初めまして。ゲートの妻で、ここ眠りの森亭の女将をつとめています。ターナと言います。」
「あ!初めまして。俺はタツヤと言います。ゲートさんから紹介されて来ました。」
「と言うことは、タツヤくんは、ご宿泊を希望するお客様ね。期間は、どれくらいを予定しているの?」
「とりあえずは、長期での宿泊を希望しています。」
「長期ですか?分かりました。ここは、1泊銅貨5枚しますけど、代金の方は……」
「銀貨で大丈夫ですか?」
俺が、ポケットから銀貨を何枚か出すと、二人がすごく驚いていた。
「タツヤくん、銀貨なんて、どこで手に入れたんだい?」
「?ゲートさんには、言ったじゃん。売りたい物があるって。それを売って、手に入れました。」
「売りたい物って、確か、塩だったよね?」
「はい。商人ギルドで塩を売って、手に入れたお金です。」
………少しの間、沈黙が続いたが、
パンパンッ!
ターナさんが手を叩いて、
「はい。この話しは、とりあえず、ここで終わりにしましょう。それじゃあ、タツヤくんは、長期の宿泊で、費用は、銀貨1枚を先払いとして、足りなくなったら追加で、払う。これでいいかしら?」
「はい。それでいいです。今日から、よろしくお願いします。」
俺は、銀貨を1枚、ターナさんに渡した。
ターナさんは、銀貨を受け取ると、受付のところに行って、何かをこっちに持ってきた。
「はい。これが、部屋の番号と鍵よ。部屋は、そこの階段を上がった二階にあるから。一応、タツヤくん以外にも宿泊している人がいるから、部屋は、間違えないように!」
「分かりました。間違えないように気をつけます。」
俺は、階段に向かって、歩き始めた。
二階に到着した俺は、番号を確認しながら、部屋を探した。
「番号は、4か。しかし……」
俺は、一つ気になることがあった。
それは、ターナさんが、俺に部屋を間違えないよう注意をした後で、何かを忘れているような表情をしていた。
その場では、何も思わなかったけど、今になって、少し不安になっていた。
幸い?俺の部屋はすぐに見つかった。
「トビラにある数字は4、鍵の数字も4。間違えない。」
俺はトビラを開けた。
そして、部屋の中を見た。
なぜか、
下着姿のサラが部屋の中心に立っていた。
「は?」
「え!」
ヤバい!
とりあえず、俺は、無言でトビラを閉めて、耳を塞いだ。
キャアーーー!!
それでも、やっぱり悲鳴が耳に聞こえてきた。
「お嬢様!どうしま……あれ?タツヤさん?どうしてここに?」
隣の部屋から、スーさんが出てきた。
「スーさん、…また、会いましたね。どうしてって、この宿に俺も今日から泊まるからです。」
「タツヤさんも、ここに…それでお部屋は?」
俺は、無言で目の前のトビラを見た。
「え?……まさか!」
どうやら、スーさんは、何が起きたのか理解したらしい。
「さっきの悲鳴は何だ!一体何があった。」
今度は、下の階から、ゲートさんとターナさんが来た。
ターナさんは、部屋の前に立っている俺を見て、何があったのか気付いたみたいで、
「も、もしかして?」
俺は、無言で頷いた。
ターナさんも何が起きたか分かったようだ。
「えっ?えっ?」
ただ1人、ゲートさんだけが何があったか分からず慌てていた。
あの後、ターナさんから一階の食堂に行くように言われた。
俺とゲートさんは先に一階に降りていき、その後、スーさん、ターナさんは、サラを連れて食堂に来た。
サラは、食堂のイスに座っている俺を見つけると、今すぐ殺すと俺に思わせる程のすごいオーラを出した。
まともに話ができるか不安になる俺だった。
全員がイスに座ると、今回の事故?がなぜ起こったのか、原因を一番よく知っているだろう、ターナさんが、説明を始めた。
どうやら、昨日から泊っているらしいサラとスーさんは、節約?無駄遣いを抑えるために、一部屋だけ借りて宿泊していた。
(一部屋ごとに二つのベッドが置いてある。)
↓
夕方になる前に、部屋に戻ってきた二人は、暗くなる前に、明日のための準備をしていた。先に終わったサラは、着替えと汗を拭きたかったが、まだ、準備が終わってないスーさんの邪魔をしたくなかった。
↓
結果、ターナさんに空いてる部屋を使って良いか聞いてみた。
ターナさんも、汚さなければ良いと、OKを出した。
↓
サラは、桶に水を入れて、二階へ戻る。
↓
俺が眠りの森亭に来る
↓
銀貨騒動?で、ターナさんは、空き部屋の使用許可をサラに出したことを一時的に忘れていた。
↓
そして、運悪く?、サラが使っている部屋と、ターナさんが俺に渡した鍵の部屋が一致した結果
↓
事故?が起こった。
サラとスーさんは、途中に出てきた銀貨騒動について、ターナさんに聞いた。
俺が、銀貨を複数枚持っていると知ったら、二人とも驚いていた。
そんなに俺が、銀貨を何枚も持っているのが、異常なのか?
その後、話し合いの結果、今回の事故?は、一応、宿側の失態として、今後も、事故が起こらないように、サラとスーさんにもう一部屋を無料で提供する形で終わった。
今回のこれは、不幸な事故で、誰が悪かったとかはない…はず。
だから、まだ俺を睨むなサラ。
お前が、夜になって、俺を襲ってくる可能性があると考えると、安心して眠れないぞ。
…別に眠らなくていい体になったけど、俺も、今日は、いろんなことがあって、疲れているから、寝たいんだ。
だから、来るなよ!と心の中で祈りながら、席を立ち、自分の部屋へ向かった。
時刻は、夜になっていた。
俺は、部屋の中に入ると、ポケットからスマホを出して、机の上に置いて、ベッドに入って寝た。
明日は、平穏であるようにと、願いながら。