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青い山の中での出会い

今回、主人公のキャラが軽く崩れます。

注意して下さい。(※元々ぶれまくってるなんてことは言ってはいけません)

 ーー分け入っても 分け入っても 青い山ーー


 確かにこんな俳句があったはず。

 初めて知った時にはなんだこれ、と思ったのを覚えているのだけれど。

 俳句なのになんで七・七・五?字余りとかそういうレベルじゃないじゃん!

 と、まあこんなツッコミも入れた様な気がする。

 でも今なら。

 そう今ならこれを詠んだ気持ちが分かる。

 とどのつまり。

 ボクは今、山の中で迷っているのだ。

 …どうしてこうなった?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あれは数時間前のこと。

 白蛇に魅入られたあの日から、それなりに時間が経ったある日のこと。

 ボクはまた違う山に入っていた。

 まあ、特に予定を作らずに、その場その場でのノリで動くのが常のボク。

 今の大まかな現在地すら分からないけれど、少なくとも海が見えないので内陸なんだとは思う。


 相変わらずふらりふらふらと、風の向くまま気の向くままと歩いていたら。

 前方に青々とした結構大きな山があったのだ。

 そこに山があるから登るのだ、そんなどこぞの登山家を気取りながら、軽いノリで山に分け入ったのだ。

 …今となっては、あの時のボクにシャイニングウィザードを叩き込みたい限りだけれど。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 この状況になってから、何度目か分からない回想を終える。

 後の祭り、後悔先に立たず、自業自得。

 結局のところ、ボクの悪癖が出ちゃっただけなのであって、ボク以外の誰の責任でもないのだけれど。

 こう、どこまで行っても同じ様な景色ばかりが続くと、流石のボクでも気が滅入るというものだ。


 いや、流石に下へ下へ向かえば何時かは出れるとは思うけれど、なんかこう…負けた気がするのでしていない。

 ボク自身も、何と勝負してるかは分からないけれど、強いて言うなら自分自身と勝負なのかもしれない。

 いつも心に克己心!

 …まあ、そんなことで打ち克ってどうするんだとは思う。

 でも、今更ただ降りるのはやはり気が進まない。

 引っ込みがつかなくなった、とも言える。


 …はぁ。

 気を取り直してとにかく茂みを分け入って分け入って、分け入る。


 ーーガサガサガサリゴソゴソリーー


 ひたすら前に進んでいたら小さな、本当に小さな獣道(?)を発見。

 いや、本当に小さいな。

 山だから狸とかハクビシンとかかな?

 まあ、何が通ってできた道なのかはどうでもいい。

 これ幸いと、ボクはその道を辿ることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その道を辿って数十分。

 小動物程度の大きさの獣道だからか、人間サイズ(というか人間)のボクには少々通りづらい。

 ぶっちゃけ此方に行けばいいよ、程度にしかならないから労力は見付ける前と変わらない。

 今のところ草木で肌を切ることは無いけど、そのうち切るんじゃないかとひやひやする。


 ーー…ゃーーー


 うん?今、何かの鳴き声が聞こえた。

 ということは、この獣道も終わりに近いのかな?

 この先に何があるのか、それがもうすぐ分かるから、否応なしにテンションが上がる。

 さてさて、鬼が出るか蛇が出るか、全ては神のみぞ知るってね。

 んじゃ、突撃ー!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 茂みから抜け出したボクが見たのは、一軒の家と大量のもふもふであった。

 そのもふもふ達は思い思いに散歩したり、日向ぼっこしたり、昼寝したり、じゃれあっていた。

 そのもふもふ達は色とりどりだった。

 白、黒、灰色、茶色に三毛。

 獣道の主であるもふもふの正体は、猫だった。


 …か、可愛いっ!

 縁側に居る丸まって、纏まって寝ている子達が可愛い!

 庭先(流石に雑草が生い茂っているが、所々に空き地がある)で兄弟姉妹でじゃれあう子猫達に癒される!

 嗚呼、こんなところに楽園はあったのか…。

 ボクは誘われるままに、夢遊病患者のようにふらふらと猫の家に近付いていった。


 もふもふなでなでもふなでり。


 ボクは今、至福の時間を過ごしている。

 この子達は全員暢気な性格なのか、ボクを見ても警戒しなかった。

 …君達は自然の中に生きる動物としてそれでいいの?

 そんな心配をしてしまうくらいには、警戒心が薄かった。

 まあ、この世界で大型の肉食動物(熊とか)を見ていないから、もしかしたら居ないのかもしれない。

 たまに、空を鳶が飛んでいたり、夜の森の中で梟が鳴いていたりはするけど…。

 この世界がどうしてこうなったのか、それに少しばかり興味を抱く。

 抱くけど、ボクは今もふもふを…もとい、猫達を愛でるので忙しくて、そんな思考はすぐに忘却の海に流れていった。


 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 しばらくしてボクは正気を取り戻した。

 いや、堪能しました。

 これであと十年…は、無理だな、一年くらいは戦えたらいいな。

 さてさて、とりあえずこの家について考えようかな。

 とはいっても、なんとなく見当は付いてるのだけれど。

 これは所謂、迷い家、というものなんじゃなかろうか。

 迷い家、マヨイガ、マヨヒガなんて名前もあるけれど。

 確か東北とか関東の伝説…伝説?じゃなかったかな。

 すっごい大雑把だけれど、道に迷った旅人がたどり着く家で、何かと不思議なことがあるみたいなやつだったような…?

 大雑把すぎて、何一つ分からないね、うん。

 その中にいつの間にかにお茶が入ってる…みたいなのがあった…気がする…?

 ま、まあ、それが他のものにも適用されるなら、この子達が元気に生きてるのかもしれない。

 そんなことを、果物をあげたらすごくなついてくれた黒い子猫を、頭の上に乗せながら考える。

 …この子、ついてきてくれないかなぁ?

 もうちょっとコミュニケーション取っとこうかな。

 結局、真面目な思考はもふもふの前には無力だった。

 そんな風にアホなことを考えながら猫を愛でる。

 ああ、もう今日はずっと愛でていよう、そうしよう。

 ボクは考えるのを止めた。

猫可愛い。

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